09/11/16 13:23:48
(続き)
さらに、保育園経営が“利権化”している面もある。
私立認可保育園の多くは社会福祉法人によって運営されている。
社会福祉法人は地域の篤志家などが自らの財を提供して設立し、保育園運営を始めたケースが多い。
しかし、補助金事業で公的側面が強いにもかかわらず、後任の理事長も自ら決めることができる。
現在では、二代目、三代目と、後を継いでいる保育園も多い。
また法人税を支払う必要がなく、一族を職員として雇うことも多い。
儲けの裏技もある。私立認可保育園の職員の給与の支払いにも補助金が投入されているが、
その額は、およそ世間一般での“大卒で30歳程度”に設定されている。
ところが、一部の私立認可保育園では、女性職員は30歳までに辞めるように仕向けつつ、
なるべく若い職員を中心にして人件費を抑えている。実際の賃金と補助金との差額が、利得になるからだ。
さらに、社会福祉法人の理事長は給与額を自分で決めることができる。
こうして「合法的に私腹を肥やす」(認可保育園関係者)のだ。
一方、公立認可保育園に目を向ければ、園長、職員、双方が待遇面で恵まれている。
保育園の問題に詳しい、鈴木亘・学習院大学教授は、「東京23区の保育士の平均年収は
800万円を超え、園長の給与は約1200万円。園長は都庁の局長レベルだ」と明かす。
他の地域でも、地域の公務員に準じているという。
もちろんすべての認可保育園が、利権ばかりを気にしているわけではなく、熱意を持って
保育にかかわっている良質な園もある。
しかし、制度全体の設計が、放漫経営や利権目当てを生みやすい構造になっていることは否めない。
そして、これだけの利権や特権をやすやすと手放すわけがない。保育園業界は、団結して新規参入を阻止してきた。
認可保育園の新設は地方自治体が判断し、株式会社の参入など規制緩和は政府が決定する。
つまり、あらゆるレベルで政治がかかわってくる。そこで、保育園業界は強い政治力を備えるようになった。
その代表格が保育3団体だ。日本保育協会、全国私立保育園連盟、全国保育園協議会連盟は
強い政治力を持ち、厚生労働省の部会などにも参加している。
加えて、23区の公立認可保育園は共産党系の労働組合の影響が強い。
また、全国の他の公立認可保育園は自治労(全日本自治団体労働組合)の影響が強い。
現在、全国の自治体で公立認可保育園を民間に委託する動きが相次いでいるが、
これらの団体を背景に、組織的に委託反対運動を起こしているのだ。
猛反発の成果は上々だ。2000年に、国は株式会社などによる保育園設置を形式上認めたが、
その中身は骨抜きだ。特殊な会計基準を強要され、補助金は既存の認可保育園に比べたら利用できないものも多かった。
なにより、政治力を気にしてか、株式会社による申請があっても、自治体が認可しないことも多い。
株式会社などによる認可保育園は、全体の2%以下にとどまっている。
(以下略)