09/11/15 07:19:40
(>>1の続きです)
─ 地域ごとにお客様のニーズに合った商品を開発することの重要性は理解できます。
しかし商品の種類が増えると開発に手間もかかり、コストも膨らむ可能性があります。
吉川 「立ち食いそば」のお店をイメージしてください。
素うどんで食べる人は少ない。てんぷらや山菜のそばやうどんは、
注文すれば2~3分で出てきます。なぜそれができるのかというと、麺は同じものを使って、
具を変えるだけで違うメニューにしている。
■70%共通化、30%で各市場に合わせる
吉川 つまり韓国勢は立ち食いそばのお店のようなスタイルで、商品開発をしている。
共通化できる部分は徹底的に共通化し、具材の部分で商品を違う形にする。
おおざっぱにいうと70%は既存のものを使って、30%の部分で各市場に合うように変化させています。
日本のモノ作りは、商品開発という意味では、今でも日本が中心です。
確かに海外にたくさんの工場はあります。最近は現地の販売会社などを経由して
情報を吸い上げて、現地市場を重視するようになったと言っています。
しかし真の意味でのグローバル化には程遠い。
サムスンやLGは、しっかりした研究開発の拠点を現地に作っています。
多くの地域で工場長から社長まで現地の人を起用している。日本企業は今でも、
日本人を現地に派遣して販売や工場のトップにするケースが大半を占めています。
LGでは韓国人の社員が全く関与しないで商品を開発するケースも珍しくありません。
だからBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)などの新興国では、
日本の電機メーカーが韓国勢に圧倒されている分野が多くなっているのです。
─ グローバル市場を見据えたモノ作りで、日本の電機に弱点が多いのは
市場シェアの下落に見られるように明らかです。しかしトヨタ自動車の
「トヨタ生産方式」など、これまで国内外で礼賛されてきた
日本流のモノ作りはどう分析していますか。
■トヨタ生産方式を礼賛してはいけない
吉川 「世界一の生産性で進んでいるはずのトヨタが、なぜあれだけの営業赤字になったのか。
信じられない。なぜですか」。最近、国内外の様々なメーカーの幹部と話していると
よくこんな質問を投げかけられます。
答えは簡単です。トヨタはいわゆる財務会計でグローバルに比較される経営指標を
あまり重視してこなかった。財務会計よりも、管理会計の手法を一生懸命やったのが、
トヨタ生産方式です。
これまでは、トヨタが利益をたくさん出していたことが、
トヨタ生産方式の成功と結びつけられて説明されるケースが多かった。
しかし利益とトヨタ生産方式は厳密に結びついているわけではありません。
サムスンはトヨタ式を導入しませんでしたし、いったん導入したLGも
いまや「ムダだ」と言っている。
例えば、作りすぎのムダ、歩行のムダの排除などがトヨタ式では有名です。
5歩歩いていたものを2歩にして、作業を2分間節約できるなら
これまでより60円儲かるといったイメージです。こうした取り組みで、
毎年1000億円レベルの原価を低減できたといわれていますが、
バランスシート上はほとんど関係ありません。
(まだ続くです)