09/11/09 17:00:26
日本にいるはずの友人からメールが届いた。韓国からだった。サムスンに転職したという。
日本の大手エレクトロニクス企業からスタンフォード大学に派遣されて、博士号をとった
優秀な技術者だった。数年前に日本に帰国してからは、ディスプレーの最先端技術の
開発を担っていた。40歳代後半になってからの転職である。サムスンでの報酬は聞いて
いないが、日本の給料をはるかに超える報酬をもらっているのは間違いない。
数年前までは、アメリカの電気製品量販店(例えばBest Buy)に行くと日本メーカーの
カラーテレビが競うように陳列されていた。ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、
日立、三菱といった日本メーカーの独壇場だった。サムスン、LGといった韓国メーカー
はマイナーだった。
だが今は様変わりした。サムスン、LGがダントツのトップ・ブランドで、その次に
ソニー、パナソニック、シャープ、東芝と続く。日本勢の存在感はあっという間に薄れた。
Vizio、Insignia、Dynexといったノー・ブランド製品も出てきている。
量販店の携帯用音楽プレーヤー売り場では、アップルのiPodの独壇場である。かつては
ソニーのWalkmanの独壇場だった。筆者は必死になってWalkmanを探した。大きなアップル
・コーナーの裏側にWalkmanがたった一機種寂しく陳列されていた。iPod、iPhone(携帯
電話機)の圧倒的な攻勢を受けてWalkmanはもはや「死語」になりつつあるように見える。
なぜ日本メーカーはこんなに勢いを落としているのだろうか。いや、むしろ韓国メーカー
やアップルはどうしてこのような競争力をつけたのであろうか。
■韓国もアップルも死の瀬戸際から復活した
2000年ごろシリコンバレーにおられる韓国人の元教授から次のような話を聞いた。
同教授は50年代にソウル大学を卒業し、その後スタンフォード大学で博士号をとり、
サムスンの顧問を長く勤めてこられた方だった。
「日本メーカーは恵まれている。日本の家電市場が大きいから、国内だけで食っていける。
だが、人口5000万人足らずの韓国ではそうはいかない。だから韓国メーカーは海外に
打って出て、海外市場で勝負するしかないのだ」
元教授は次の事情もあると付け加えた。「1997年のアジア通貨危機で韓国経済は破綻寸前
の状況に追い込まれた。IMFが介入してきて財閥解体を行い、主要各国の緊急融資を得て、
かろうじてデフォルト(国として借金を返済できなくなること)を免れた。あのような
恥ずかしいことを二度と起こしたくないと誓ったのだ」
そういえばアップルも倒産寸前の事態を経験している。筆者がシリコンバレーに渡った
13年前にはアップルは「死に体」だった。創業者社長のスティーブ・ジョブズが内紛で
追い出され、後任社長が次々に失敗を繰り返し、いくらレイオフしても黒字にならなかった。
MACのOS(オペレーティング・システム)はマイクロソフトのWindowsに追い上げられ
シェアは5%未満に落ち込んでいた。
この窮地を救ったのはマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツだった。スティーブ・ジョブズ
が暫定社長として復帰し、かつての盟友で今は手ごわい競争相手となっていたビル・ゲイツ
に緊急支援を頼んだのだ。ビル・ゲイツはMACのOSにマイクロソフト・オフィス製品を
提供し、アップル社に150億円(1 ドル=100円)の出資を行った。
※続く
◎ソース URLリンク(diamond.jp)