09/11/03 13:30:29
ソフトウエア業界に無償化の波が押し寄せている。パソコン向け基本ソフト(OS)の
最新版「ウィンドウズ7」を先週発売した最大手、米マイクロソフトに対抗する
無償OS「リナックス」に続き、業務用基幹ソフト市場でも新たな無償ビジネスモデルが
台頭。大手の独SAPや米オラクルを脅かしている。
ベルギー中部、グラン・ロジエールの農場にある築150年の住宅で、リセッション
(景気後退)のさなかでも利用者から問い合わせが絶えない無償業務用ソフトの開発を
進めている人物がいる。現地誌『トレンド』が「ベルギーのビル・ゲイツ」と評した
非上場企業タイニーの最高経営責任者(CEO)ファビエン・ピンカーズ氏(30)だ。
同CEOは取材に応じ、「経済危機はビッグチャンスになった」と語った。
リナックスをはじめとする無償ソフトは、個人向けパソコンを動かすOSの分野で、
マイクロソフトに挑戦を続けていた。今では、公的機関や一部の企業は申請書類や
請求書の作成、給与の支払い、物品購入といった重要な業務にも無償ソフトを利用する
ようになった。
これらの業務用ソフト市場は長年、SAPやオラクルの寡占化にあり、利用者1人当たり
数千ドルもの稼ぎを生み出してきた。しかし今や、大手各社にとって、タイニーをはじめ
とする新興メーカーは無視できない存在になってきている。新興メーカーのほとんどの
ソフトは設計者だけでなく、利用者もプログラムを修正でき、無料配布されている。
ソフトの売り上げではなく、保守や関連サービスなどを収入の柱とする新たなビジネス
モデルだ。
米調査会社ガートナーによれば、無償ソフトとそれに関連するサービスの経済規模は、
現在の70億ドル(約6300億円)から2012年には190億ドルへと急拡大する
見通しだ。
タイニーの09年1~6月期の売り上げは60万ユーロ(約7960万円)だったが、
ピンカーズ氏は11年には1050万ユーロに増加すると自信を見せる。ソフトの引き
合いは、今年1月以来、2カ月ごとに約20%ずつ増加しているという。社員75人の
タイニーの無償ソフト「オープンERP」は物品購入や人材に関連した業務を管理でき、
顧客名簿にはフランスの名門大学や郵便事業会社も名を連ねている。同CEOは業容拡大
に向け年末までにベンチャーキャピタルから400万ユーロの資金調達を行う考えだ。
無償ソフトは市場シェアが小さく、伝統的な有料ソフトのようにさまざまな機能を提供
するわけでもない。それでも、SAPはすでにその脅威を感じ始めていると指摘する
アナリストもいる。SAPは10月末、新興国市場や日本などの顧客が予想以上に
支出を抑えたとして、売上高見通しを下方修正した。
英金融サービス会社ウエストLBエクイティ・マーケッツのアナリスト、ジョナサン
・クローザー氏は「ソフトのライセンス料支払いに代わる案があれば利用者は真剣に
検討する。だからSAPが少しずつ追い上げられている」と指摘した。
ピンカーズ氏は将来的に買収提案も受け入れる考えだ。「でも、まだやるべきことが
多く、今はそのタイミングではない。4年後か5年後には、あり得るかもしれない」
と話した。(ブルームバーグ)
◎Open ERP/タイニー社 URLリンク(www.openerp.com)
◎ソース URLリンク(www.business-i.jp)