09/10/20 17:10:07
住宅ローンが、銀行の収益を圧迫する“爆弾”と化す可能性が高まっている。
企業向けの貸し出しが伸び悩むなか、銀行界では地方銀行を中心に住宅ローンに
力を入れてきたが、不況でボーナスが激減するなど借り手の家計は一変。
本来、貸し倒れリスクが低いはずの住宅ローンが不良債権化し、銀行経営を
直撃する恐れが出てきた。
サラリーマンらの返済条件の変更はここにきて急増している。全国の信用金庫や
地銀を対象に保証業務を行っている「しんきん保証基金」によると、返済条件変更の
実施件数はこの夏以降、前年同期の3倍超のペースで推移。延滞予備軍は確実に
増えている。
こうした状況に、金融庁も各金融機関に対し、返済期間の延長など条件変更に柔軟に
応じるよう要請している。
ある地銀関係者は「住宅ローンの返済条件変更への対応が不十分じゃないかと、
金融庁がつっついてくる」とこぼす。この地銀では返済相談用の専用窓口を設ける
などして対応しているものの、条件変更した件数が不十分だと金融庁から指摘を
受けたという。
条件変更増加の背景にあるのは、雇用や所得環境の悪化だ。8月の失業率は5.5%と、
過去最悪だった7月から0.2ポイント改善したものの、依然として高い水準にある。
冬のボーナスも減るとみられており、返済に困る人がさらに大量に出てくる可能性がある。
ボーナスの激減などで収入が減るなか、借入金の家計への負担は増えるばかりだ。
不動産競売流通協会によると、平均年収額に対する住宅ローン残高の倍率は2005年度
までは3.5倍前後だったが、06年度以降は4倍超に跳ね上がっている。ローン残高
にはほとんど変化がなく、借り手の収入がいかに減っているかが分かる。
さらにここにきて、新たな不安要因も。亀井静香金融・郵政改革担当相(72)が
打ち出した借入金の返済猶予(モラトリアム)制度の対象に住宅ローンも含まれる
ことから、金融機関にとって一段の収益圧迫要因となる。
制度の具体的な内容は検討中だが、モラトリアムが借り手にとって不利になるケースも
考えられる。元本の返済が一定期間猶予されたとしても、返済期間の延長が認められ
ない場合、モラトリアム終了後の実質的な返済期間が短縮されるため、月々の返済額が
増える。返済期間の延長と組み合わせた場合でも、その分の金利支払いで返済総額が
膨らむことになる。
定年退職などで期間延長が難しいケースも考えられ、実効性あるものにするには
慎重な制度設計が必要となりそうだ。
住宅ローンの変調を受け、リスク削減に動き出したところもある。大手銀などは、
物件価格の2割以上を頭金として準備すれば金利を優遇するサービスを始めた。
貸倒リスクの小さい優良顧客の囲い込みが狙い。「頭金2割を用意できる世帯は
家計管理ができている可能性が高く、延滞リスクも小さい」(大手銀関係者)という
わけだ。
ただ、「住宅ローンに力を入れてきた金融機関のなかには、デフォルトの恐れが
小さいとの思い込みから、リスク管理が甘くなっていたところもある」(銀行関係者)
とされる。
銀行経営を直撃する爆弾と化した住宅ローン。果たしていつ起爆するのだろうか。
◎ソース
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