09/09/25 15:52:20
(続き)
介護職の男性が、結婚を機に待遇のいい別の職種に転職せざるを得ないことを介護業界では「寿退社」と呼ぶ。
熱意はあっても、介護職だけで暮らしを支えることは容易ではないからだ。
千葉県八千代市のホームヘルパー、坂谷則康さん(32)も、交際中の女性から結婚を望まれながら、踏み出せなかった。
もともと婦人服の買い付けや販売の仕事をしていたが、お世辞を言う「営業トーク」になじめなかった。
ヘルパー2級の資格を取り、25歳で介護業界に。
時給800円のアルバイトから始まり、1年後、正社員になったが、サービス残業や休日出勤を強いられた。
昨年1月に現在の介護事業所に転職。休みは取れるようになったが、年収は1割減の約360万円になった。
「結婚して子供ができたら養っていけるだろうか」。やりがいはあっても不安が残る。
転職から間もなく、5年間交際していた女性は去っていった。
給料が4万円増えれば、将来のために貯金するつもりだが「子ども手当など他の政策もある。本当に上がるのか、
半分あきらめています」。給料アップのために、お年寄りの負担が増すことにでもなれば「本末転倒だ」とも思う。
毎日、お年寄りの家を車で回る。重さ15キロの組み立て式浴槽を運ぶ。
エレベーターがない団地では、5階までかついで階段を上る。
腰を痛めないよう、50分5000円のマッサージ店に時々通っている。
「認知症のおばあさんが、僕の名前を忘れないように自分の腕に書いていてくれたんです」。
坂谷さんの目が輝いた。介護の仕事を長く続けていくつもりだ。
現場の熱意に、新しい政権はいつ応えてくれるのだろうか。
(記事終)