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イノベーションの実現には、「価値創造(Value Creation)」と「価値獲得(Value Capture)」の両方が欠かせない。
技術経営(MOT)発祥の地、MIT(マサチューセッツ工科大学)で、最初に学んだのがこの概念だ。
ここでいう価値創造とは、素晴らしい新技術や新商品を開発することである。しかし、それだけでは、
社会も企業も豊かにはならない。企業は経済価値(付加価値や利益)として価値を獲得しなくてはならない。
例えば、日本企業では優秀な技術者が一生懸命に働き、優れた技術や商品を開発・製造しているが、
企業の利益にも自分たちの給料にもあまり反映されていない。
つまり、価値創造はできていても、価値獲得ができていないのである。企業が価値獲得をできなければ、
国の税収入は限定され、社会的にも困窮することになる。
価値獲得ができていないのは、企業が商品開発や製造にかけたコストに対して、顧客がそれ以上の対価を
支払ってくれないからである。いくら優れた商品であっても、かけたコストと同等の評価しかされないのであれば、
真の価値を創造したことにはならない。
◆価値づくりが苦手な日本企業
私の最近の研究では、価値創造を「ものづくり」、価値獲得を「価値づくり」と呼び変えている。日本企業は
ものづくりが得意でも、価値づくりは苦手である。
日本社会は、良くも悪くも、企業が大きな利益を上げることをあまり歓迎しない。しかし、利益を上げていないと
いうことは、真の価値を創造できていない場合が多い。創造した価値から税金や給料が支払われ国民の
生活が豊かになる。
国の財政が破綻しているのも、政府の使い方が悪いのが主因だが、一流の技術者を抱えた製造企業が
価値獲得できていないことも大きな要因となっている。日本企業が「良いものを安く売る」ことを目指している
限りは、我々の生活や国の財政は良くならないかもしれない。
▽執筆者
延岡 健太郎:一橋大学イノベーション研究センター教授
▽ソース:JB PRESS (2009/09/08)
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)
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