09/08/26 10:57:32
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「最近のテレビ番組の質の低下には目に余るものがある」という意見をよく聞く。
人によって意味することは異なるだろうが、制作現場の状況を改めて見直してみると、
デジタル化によって負のスパイラルが起きていることもその一因だとわかる。
(江口靖二)
■最初に落とした制作費という「砂袋」
ニワトリが先か卵が先か議論は分かれるだろうが、負のスパイラルで最初に起きたのは視聴率の
低下である。その理由は、すでに語り尽くされているようにゲームやネットの影響、
タイムシフト視聴などいろいろとある。
視聴率が下がると、広告主がCMを減らしたり、広告単価が下がったり、あるいはもっと視聴率を
上げるようにプレッシャーをかけたりすることになる。広告費が下がるとテレビ局の経営陣は
単純思考でコストを抑えようとする。
事業として成功してきたテレビ局には、落とすことができる砂袋がいくらでもある。そのなかで
まず圧縮されたのは、人件費でも豪華な社屋でも最新鋭のデジタル放送機器でもない。番組を制作する
下請け会社に支払う番組制作費である。制作会社側も請負体質が染みついてしまっていて、
2割、3割とカットされても立場的に受け入れざるを得なかった。
■制作現場にも浸透したデジタル化
ここで重要なキーワードが「デジタル」である。テレビ局がデジタル放送を開始し、放送局内はもちろん
家庭のテレビもデジタル化が進んでいる。そしてこのデジタル化は、制作現場にも着実に浸透した。
まず撮影段階ではカメラがデジタル化された。かつてはレンズと合わせて1000万円を超えるような
カメラが主流だったが、ここ何年かで非常に小型で安価なカメラでも放送クオリティーに十分
堪えられる画質になった。実際、手軽で機動性の高い家庭用デジタルビデオカメラが使われる場合も多い。
同時に、かつては1回のロケでディレクター、カメラマン、ビデオエンジニア、音声マン、照明マン、
さらにはロケ車のドライバーと数人のチームを組んでいた撮影が、予算削減によってカメラマンと
ディレクターの2人、あるいはディレクター1人に任されるという状況も出てきた。
■職人技が伝承されず失われていく
デジタル撮影された映像素材は、その後の編集作業でもそのままデジタル処理されるが、マシンスペックが
どんどん上がり一般のパソコン程度の機材でも編集が可能になった。かつては専用のビデオ編集室で
ディレクターと編集マンが作業したが、今ではディレクター自らがパソコンでこなすことも少なくない。
デジタル化によって、映像クオリティー的には誰でも十二分なものを作り出すことが
可能になったからである。
これまで何人もの人間が手間と時間をかけて作業していたものが、1人でこなせるようになった。
もちろんこれは技術の進化による恩恵ではあるが、一方で職人的な専門技術者との共同作業によって
ノウハウを得て伝承していく部分がどんどん失われている。先人たちの経験が生かされにくい環境に
あるのは間違いない。
-続きます-