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◆監督の不思議
もう1つの不思議。監督はしばしば、すぐに働き始めることができることを理由に
採用される。なぜ突然、自由の身になったのかといえば、前のチームを首になっている
場合が多いのだという。
では、プレミアリーグの名門チーム、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)を含め、
サッカーチームはなぜ、米証券会社リーマン・ブラザーズの運命(破綻(はたん))を回避
できるのだろう。その答えは、サッカーチーム運営は他の大半の事業と同じレベルの
競争にはさらされないからだと著者らは結論付ける。
もちろん、チームは競争するために存在する。しかし、それはサッカー場でのこと。
チームにはファンの忠誠心や地域とのつながりという、ほとんどの企業が持たない
優位点がある。技術が時代遅れになることもないし、海外勢が市場に参入することも
できない。債務負担は通常、チームを買い取った新オーナーが吸収する。
数年間に2段階も降格され、最良の選手を失ったリーズ・ユナイテッドのような危機に
直面してすら、チームは生き残っていく。
「自動車メーカーのフォード・モーターが熟練した従業員を解雇し、技術のない人材を
雇用して質の悪い車を造ったら、あるいは航空会社のブリティッシュ・エアウェイズが
パイロットを全員、操縦士免許のない人間に入れ替えたらどうなるだろうか」と著者らは
問い掛ける。
サッカーチームは世界的金融危機すら恐れる必要がない。「決して見捨てない顧客が
いるため、サッカーチームは危機の中でも生き残れる」と著者らは分析する。
◆給料をチェック
経済分析と逸話を組み合わせた本著は、面白く、ちょっと考えさせられる読み物だ。
野球と経済理論を組み合わせたマイケル・ルイス氏の「マネーボール」に匹敵する本が
やっと英国でも登場したといえる。
テロリストのウサマ・ビンラーディン容疑者がアーセナルのファンであることから、
ペナルティーキックにおけるゲーム理論に至るまで、本書にはサッカーファンたちが
試合のハーフタイム中に互いに披露し合うのに適した話題と数字がちりばめられている。
なぜノルウェー人が世界で一番サッカー好きなのか、とか、スカウトは時に目立つ
というだけの理由で金髪の選手を推奨するとか、面白いデータも載っている。
サッカーと経済学を合体させた「サッカーノミクス」の本著は、オイルマネーが英国の
サッカー界に流入したり、クリスティアーノ・ロナウド選手が史上最高の8000万ポンドで
スペインに移籍した今、時宜を得た一冊だ。
選手を雇おうとしているチームへ著者らから最後のアドバイスは次の通り。
「選手の能力を判断するには、所属チームが要求する移籍金の額ではなく、
選手が今受け取っている給料の額をチェックしよう」(Simon Kennedy)