09/08/01 10:59:03
(>>1のつづき)
あるトヨペット店では、古い「マークⅡ」からの買い替えが後継の「マークX」でなく、
プリウスに向かっている。「マークXになって性能は上がったが、クルマとして目新しさがない。
それが今回、『プリウスってどんなものだろう』と、客を呼び込んでいる」(トヨペット店幹部)。
6月の販売ランキングを見ても、「カローラ」などが前月比で伸びた反面、ウィッシュや
同じくミニバンの「ヴォクシー」は落ち込み、プリウス特需がトヨタ車全体の販売に
寄与していないことは明らかだ。プリウス絶好調の陰で、既存モデルが食われるという皮肉。
だが、売れ筋がプリウスしかない中では、系列販売店もプリウス1点に経営資源を
集中せざるをえない。結果、客の奪い合いはエスカレートし、現場でクルマを売る系列販売店
同士では仁義なき闘いが勃発している。
「新型プリウスは名古屋トヨペットで」―。新型プリウス発表直後の5月20日、
名古屋駅前にある「ナナちゃん人形」の前で、名古屋トヨペットが移動展示会を開いた。
実車2台を並べたうえ、店名の入ったポケットティッシュを配布。続く23・24日には、
名古屋市栄の商業施設「ラシック」で、愛知トヨタ自動車が即席ショールームを設置、
愛知トヨタののぼりを高々と掲げた。
「プリウスなら今や誰でも知っている。われわれが宣伝したいのはお店のほうですよ」。
あるトヨタ店の役員も、ライバル意識むき出しだ。
3代目プリウスになって初めて、4系列全店に販売を“開放”したトヨタ。新型プリウスの
チャネル別内訳は、トヨタ店27%、トヨペット店28%、カローラ店21%、ネッツ店24%と、
きれいに4等分。店舗の多いネッツ店やカローラ店が新たに加わり、トヨタ店とトヨペット店から
シェアの半分弱を奪った計算になる。受注好調で値引きは以前より少ないとはいえ、
全店取り扱いによる競争激化は、半端でない。
トヨタは国内で290社・4800の販売店を抱えるが、ホンダや日産自動車は新車需要の
低迷を受けて、系列ごとにすみ分けていたチャネルをすでに一本化済み。トヨタは販売店
と資本関係がないゆえ、再編に手をつけづらかったとはいえ、人口減が進む中、販売店・
チャンネル数とも多いことは明らかだ。
当然、トヨタでも再編をにらんだ試みは始まっている。国内営業の常務役員には、
従来のチャネル別に加え地域別の担当をも兼務させ、各地の状況に合った営業を強化。
系列を超えるべく、北海道や長野では共同店舗を、横浜など都市部では大型SC内に
オートモールを新設した。今年末にはハイブリッド車第2弾「SAI」がトヨタ系全店で販売される。
こうした動きが加速すれば、チャネルの意義はいや応なく薄れていく。
「秋から年末には方向性を出したい。販売店同士は利害関係があり、われわれが行って、
踏み出せないところは調整しないと」。あるトヨタ役員はそう漏らす。トヨタ車同士の食い合い、
トヨタ系列同士のたたき合い……と相次いだ誤算。1車種のみの突出した成功は全社の
工場稼働率に与える影響も限定的だ。プリウスバブルの陰で、トヨタの“内なる崩壊”が
着々と進行しつつある。
URLリンク(www.toyokeizai.net)
(了)