09/07/05 00:43:49
2008年秋の世界金融恐慌以降、一般企業だけでなくテレビや新聞、出版社と巨大メディア企業が相次いで
巨額赤字を計上した。原因については、世界的な不況に伴う広告収入の落ち込み、インターネットの台頭に
よる販売不振が直撃したというのが一般的な論調だが、筆者は声を大にしてこれを否定したい。巨額赤字の
背後には、業界特有の病根があるからだ。大不況による業績悪化は、メディア界が抱える根深い問題を
露呈させるきっかけになったにすぎない。
◆記者や編集者に経営はムリ
いきなり最上段に構えて、業界を袈裟(けさ)切りしたのには理由がある。筆者は通信社の記者として長年
取材を続け、金融や製造業、商社などさまざまな企業のトップと接する機会があった。いずれのトップたちも
社内のみならず、世界中に目を向けて会社の舵(かじ)取りを担う、いわば経営のプロたちだった。現在も
親交のある一部の経営者たちは、不況の中で懸命に陣頭指揮を執り、業績立て直しに向けて奮闘している。
翻ってマスコミ業界はどうか。
新聞やテレビなど報道記者の場合、自身のカバーする業界に細心の注意を払い、同業他社に先んじて
ネタを出す、すなわちスクープを放つことが至上命題だ。スクープのために家庭生活を犠牲にし、1日中同業
他社の動きに神経を尖らす。ネタを取ることが万事であり、それ以外の仕事に関しては全く素人なのだ。
お叱りを承知の上で指摘させてもらうと、こうした人種は記者以外の業務は全くの素人であり、キャップと
呼ばれる幹部職の記者がマネージできるのはせいぜいで10人規模の記者クラブまで。一般事業会社の
ように営業、財務の知識があるわけでもなく、これらの最低限の素養を持ち合わせていなければトップに
就けないというごくごく一般的な社会常識は、マスコミには当てはまらない。これこそが業界全体を覆う
業績不振の真犯人に他ならない。
出版社もテレビも同じ様な仕組みだ。編集者ならばベストセラーを世に送り出すべく、テレビ局の制作
担当者は高視聴率のために働いていると言っても過言ではない。ここに特有の問題が横たわっているのだ。
先に触れたように、ネタを抜いてくることしか知らない人間や、ベストセラーの数が出世に直結する仕組み
だからに他ならない。もちろん、メディア業界内部にも営業や経理畑の優秀なスタッフがたくさんいる。が、
こうした部署出身の人材が経営トップに就任しているケースは、筆者の知る限り大手では1社もない。
▽執筆者:相場英雄
1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、
金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、
『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。
▽ソース:Business Media 誠 (2009/07/02 12:00)
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