09/06/30 08:55:40
「人はミスを犯すもの」。こんな前提に立ったJR西日本安全研究所の研究成果が注目を集めている。
研究所は平成17年の福知山線脱線事故を機に3年前、立ち上げられた。
信号機の点呼確認はすべて必要か、上司が部下をほめる効果はあるのか。
成果は、従来の「事故は気合で防ぐもの」という鉄道界の体質を変え、自衛隊や病院、航空会社など
畑違いの分野でも職員教育に取り入れられている。(森本充)
福知山線脱線事故後、JR西は、ヒューマンエラー(人為的ミス)への取り組み不足の反省から
研究所を設立し、体質改善に取り組んだ。
運転や保線、事務など各部門から約25人を選び、「何がわが社に欠けているのか」探った。
半年で冊子「事例でわかるヒューマンファクター」を発行した。
疲れるとどうなるか▽なぜマニュアルはあるのか▽多人数の中だと手を抜いていないか─。
冊子は32のテーマを設定し、事例と解説、対策を紹介した。
社内教育向けに作られた冊子だったが、口コミで評判が広まり、建設会社や銀行、医療機関などから
問い合わせが殺到。実費(1冊300円)で配布し、現在までの社外配布は4万6千冊にのぼる。
安全研究所の白取健治所長は「ヒューマンエラーは鉄道に限らず、どこでも起きうる。分かりやすく
分析した本がなく、受け入れられたのでは」と話す。
研究成果はJR西の改革に取り入れられた。
福知山線の事故は運転士の速度超過が直接原因だったが、国土交通省鉄道事故調査委員会
(現・運輸安全委員会)は懲罰的な運転士管理法「日勤教育」の影響もあったと指摘。
このため、研究では上司と部下の関係調査を実施した。
上司役が積極的にコミュニケーションを図り、良好な人間関係を形成したグループと、
上司役が人の話を無視し、悪い関係を形成したグループを作成。簡単な作業をさせ、両グループとも
上司がほめたところ、人間関係が良好なグループは、ほめるとどんどん作業を工夫するのに対し、
悪いグループはほめると工夫度合いが減退した。
白取所長は「事故後、社内にはほめることが最良の策という風潮が生まれたが、人間関係が
できていなければだめだと分かった」と話す。
また、信号機の確認規定にも研究が生かされた。
これまで信号機は、指さし確認の上、声を出してのチェックも必要だった。
ただ都市部では、確認が20秒に1回にのぼり、「疲れる」という声があがった。
研究の結果、「指さしと声出し」を両方行った場合と「声出しだけ」でエラー率はほとんど
変わらなかった。昨年11月、規定は「重要個所以外は声出しだけでいい」と改訂された。
「安全の追求に終わりはない」と白取所長。現在、研究所では運転士の眠気の研究に着手し、
今秋には眠気防止ガイドラインを出す方針だという。
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URLリンク(www.itmedia.co.jp)