09/06/29 15:35:17
昨年7月の最低賃金法改正で、最低賃金を生活保護水準以上の額とすることが
国に義務づけられたが、生活保護水準を下回る「逆転現象」が解消されていない
ケースが多い。厚生労働省の昨年秋の調査では、9都道府県で逆転状況となっており、
「食べていけない」という家庭の悲鳴も。引き上げ額の目安を決める中央最低賃金
審議会が30日に始まるが、不況の影響で経営側の抵抗が予想され、事態改善への
道は険しい。
■9都道府県で「生活保護」以下
最低賃金は物価や賃金事情をもとに都道府県ごとに決められ、これを下回る賃金を
支払った使用者には50万円以下の罰金が科せられる。全国平均は時給703円。
一方、生活保護費は市町村ごとに厚労相が定める。
同省が昨年夏、生活保護費を都道府県ごとの平均値に換算した額と、最低賃金とを
比較したところ、逆転状況だったのは12都道府県。このうち、青森、秋田、千葉の
3県が秋までに最低賃金を引き上げた。現在の状況は同省が調査中。
■手取り月8万
青森県弘前市。縫製工場のパートとして働く赤石景子さん(49)は、10年前から
最低賃金と同額程度の給料で生活している。同県の最低賃金は昨年10月、11円
上がって630円に。赤石さんの時給も10円アップして630円になった。残業代
を含めて月の手取りは約8万円。生活保護と同水準だ。
3年前に夫を亡くし、家賃が月1万5700円の県営住宅で息子3人と生活。
息子たちは病気などで定期収入が望めなかったり、高校生だったりで、
「男3人を食べさせられる状況ではない」と赤石さんは語る。洗濯は4日に1度。
風呂の湯は3日間使い、入浴剤で水の汚れをごまかす。「高校生の三男が大学進学を
望んでも、あきらめてもらう」と言葉少なだ。
■気づかぬ例も
「自分の給料の水準が最低賃金を下回っていても、気づかない例も多い」と、
東北地方の労働組合幹部は指摘する。最低賃金は時給で定められており、
日給や月給で支払われると、実態が分かりにくくなるためだ。
東北地方のトラック運転手の男性の場合、日給9000円で1日15時間働いた。
時給換算だと600円で、最低賃金よりも約30円低く、生活保護の水準以下。
過労で体調を崩し、労組に相談したことで最低賃金以下だったことがわかったという。
労組幹部は「労働者の法律の無知につけ込んだやり方は許せない」と憤る。
同様のケースは首都圏でも。介護施設で働いていた40歳代の女性の時給は800円で
最低賃金を超えていたが、施設は人手不足からサービス残業が常態化。月給を実際の
労働時間で割ったところ700円以下で、最低賃金に届かなかった。
今年度の最低賃金は、労使代表と識者による中央と地方の最低賃金審議会の議論を
経て、都道府県の労働局長が決める。しかし、不況で「引き上げる状況にはない」
(日本商工会議所)と経営側はけん制している。
同志社大の橘木俊詔教授(労働経済学)は「不況であっても、労働者が生活できる
賃金を支払うのが企業の責任だという発想の徹底が必要だ」と話している。
●表/最低賃金が生活保護水準を下回っている都道府県
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