09/06/05 09:07:44
鳩山総務相が日本郵政の西川善文社長の更迭を求める考えを明言した。
「郵便法違反事件、かんぽの宿。わけの分からんことが多すぎる。お辞めいただくのは当然だ」と言い、
それが麻生首相の意向と食い違った場合でも「そうします。信念に基づいて。だって正義のためだ」と語った。
西川社長の再任案は先月、日本郵政の取締役会で決定された。
今月29日の株主総会で、全株を保有している政府に承認を求める運びだ。
これに対し、鳩山氏は所管大臣としての許認可権限を行使してでも待ったをかける構えだ。
閣僚の地位を懸ける可能性さえちらつかせる。
法律上、株主総会で決定されてもそれを覆す権限が総務相に認められているのはその通りだ。
だが、この段階でそうした「伝家の宝刀」を抜く十分な理由があると言えるのだろうか。
かんぽの宿の売却問題では、一連の入札の経過に適切とはいえない部分は確かにあった。
だが鳩山氏が指示した総務省の調査でも、明確に不正と判断されるような証拠は出てこなかった。
障害者団体向け割引制度の悪用による郵便法違反事件では、実態を把握できなかった日本郵政の責任は大きい。
しかし、この事件が民営化以前に端を発していることも明らかだ。
民間銀行から西川氏を社長に招いて3年半。西川郵政の法令順守や説明責任を果たす努力が足りないことは事実であり、
そこは是正が必要だ。
一方で、郵政という官業に積もり積もった不正や不適切な慣習を取り除くことがいかに大変な仕事か。
西川郵政の3年半は、そのことを雄弁に物語っていると見ることもできよう。
政治がいまなすべきは、トップのクビをすげ替えることではない。
むしろ西川氏に透明で信頼される企業への改革を徹底させることではないか。
今回の鳩山氏の言動に対しては、与党内では冷ややかな受け止めが大勢だが、民主党をはじめ野党からは支持の声が出ている。
解散・総選挙前後の政局の動きを視野に、自らの政治的な存在感を高め、離合集散のかぎを握ることが鳩山氏の狙いとの見方もある。
麻生首相の責任は重大である。
後に言い直したものの、首相自身、「郵政民営化に賛成じゃなかった」と国会答弁で言い切った経緯がある。
民営化推進なのか、反対なのか。肝心の首相の発言が大きく蛇行してきたことが、鳩山氏の突出した言動を
助長していることは否定できまい。
日本郵政はいま、民間会社として独り立ちをめざす助走期間にある。
冷静な議論を抜きに非難を繰り返す担当大臣の振る舞いは、首相としても見過ごせないはずである。
首相は日本郵政の健全な発展を大事にした判断をすみやかに下すべきだ。
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