09/06/05 01:41:07
医学は日進月歩の勢いで進歩しているが、まだ完治できない病気が多くあるのも事実。
難病を抱える患者が一縷(いちる)の望みをかけ、先進的な医療を求める。
医師もほかに代わる治療がない場合は新しいものを試したいと考える。それは当然だ。
しかし、こうした先進的な医療技術や、日本で未承認の医薬品(適応外使用含む)を使った場合、
厚生労働省は、通常なら健康保険が効く入院料や検査なども含めて保険適用を認めてこなかった。
保険診療と保険外診療を併用する、いわゆる「混合診療」を原則禁止していたからだ。
そのため、先進医療を求める患者は全額自己負担を強いられ、病院や医師も先進医療による治療を躊躇していた。
病院の中には、保険が効かない技術を使ったときは保険の支払機関に請求するレセプト(診療報酬明細書)に記載せず、
研究費と称して病院側が持ち出し、患者にその分を支払わせていた事例もあった。
「混合診療」禁止は形骸化していたのだ。
そうした中で2005年、規制改革・民間開放推進会議が「新しい医療技術も使えるよう混合診療を解禁せよ」と厚労省に迫った。
同会議主催の公開討論会を傍聴した余命3カ月のがん患者が「健康保険に加入しているのに全額負担はおかしい」と訴え、
厚労省側が言葉に詰まる場面もあった。
小泉純一郎元首相の指示もあり、厚労省は「先進医療制度」「未承認薬使用問題検討会議」を創設。
厚労省がお墨付きを与えた技術や未承認薬に、混合診療を解禁した。
現在、この制度で認めた医療技術は105種類。
未承認薬もリストアップされた44品目のうち半分が承認されて保険適用になり、残りも混合診療で使えるようになりつつある。
それでは、先進医療技術や未承認薬が混合診療として使われるには、具体的にどんな手順が必要なのか。
まず医療技術については、先端的な技術を使っている病院が、
厚労省「先進医療専門家会議」に、混合診療の対象に加えるよう申請。
同会議が有効性や安全性を確認し最終的に了承する。
医療技術にかかわる費用は患者全額負担だが、入院料や検査費は通常の健康保険が適用される。
有効性認められても高額費用がネックに
実際の患者の負担はどうなるか。
厚労省調査によると、07年7月~08年6月に448施設、9579人の患者がこの制度を利用。
費用総額は約100億円で、うち患者がすべて負担する医療技術は約46億円、
入院費など保険が適用される治療費が約54億円だった。
この54億円のうち患者負担3割を除く約38億円が健康保険から給付される。
全額自己負担に比べ、患者負担は3~4割軽くなる。
先進医療技術の内容を見ると、重粒子線・陽子線などの放射線治療や、内視鏡を用いた新しい術式など、がん治療関連が目立つ。
ほかにも家族性アルツハイマー型認知症をはじめ難病の遺伝子診断や、移植手術、血管再生治療など種類はさまざまだ。
技術の内容によって費用もピンキリだ。
厚労省調査から推計すると、悪性脳腫瘍向け抗がん剤治療のために遺伝子を解析する検査は平均3万0300円、
家族性アルツハイマーの遺伝子診断は6万2400円。
一方、固形がんに対する重粒子線治療は308万円、陽子線治療は285万円と、簡単には手が出せない。
>>2に続く
ソース:東洋経済オンライン(図表あり)
URLリンク(www.toyokeizai.net)