09/05/25 18:15:17
携帯電話のコスト削減のために、東芝はついに国内生産撤退を決めた。シャープも
輸出を大幅に減らし、海外で販売する液晶テレビは海外に生産委託していくという。
■東芝やシャープが国内生産を縮小
また、5月21日の日経新聞一面トップの見出しは衝撃的だった。
「ソニー、調達先を半減 / 2500社を1200社に」
これまでバラバラだった部品や素材の調達先をグループで一本化したうえで、調達先を
半数に絞り込むという。1社当たりの取引量を拡大することで調達コストを引き下げる
という戦術だ。90年代末、瀕死の日産自動車をV字回復させたカルロス・ゴーン社長も
このやり方で調達コストの大幅カットを実現した。同社は5月14日に国内製造事業所の
再編についても明らかにしている。あのソニーでさえ生き残りに必死なのだ。
好むと好まざるとに関わらず、世界経済はすでに抜き差しならぬところまでグローバル
化が進んでいる。世界同時不況と円高で輸出産業が大打撃を受けているからといっても、
複雑な相互依存関係を前提として動いている世界の現実は変えようがない。
どこの国でも政治屋は人気取りに走りたがるから、不況色が強くなればなるほど保護
主義に傾斜しがちだが、そんなものは負け犬の遠吠えにしかならない。新保守主義だと
か行き過ぎた市場経済だとか、現実離れした抽象的な批判を繰り返すのんきな評論家が
日本では後を絶たないが、それは国際競争にさらされたことのない人びとの戯言でしか
ない。
その象徴が政治家とマスコミだ。日本の村社会のなかでしか仕事をしたことのない人々
が権力の握っているものだから、日本では冗談さながらの景気論議が大賑わいになって
しまう。
■製造業を育てるのが競争力強化につながる
最近はマスコミと政治家は口を開けば「内需」だという。「外需依存体質が大不況の
元凶。だからこれからは内需だ」
内需拡大はごもっとも。農業振興は絶対に進めなければならない国家戦略でもある。
だが外需と内需をさも対立概念として語ること自体が間違っている。
「外需が落ちたら内需拡大で補完する! できれば外需も内需も拡大する!」
これがまともな考え方だ。だが日本ではこんな当たり前の話が通らない。
製造業は日本にとって死守し続けなければならない大切な産業だ。それはただ単に
ものづくりに執着しろということではなく、日本人のDNAはものづくりにおいてこそ、
世界でもまれに見る競争力を発揮しているからだ。
この才能、才覚を自ら否定し、米国への短絡的追従思考で「ものづくり」より
「サービス業」に力をいれるべきであるかのような発言もお粗末千万だ。
世界の厳しい競争に打ち勝って、日本が成長を維持していくためには得意分野を
さらに伸ばすと考えるのが常識というものだ。
その常識を欠いたまま、寄ってたかって、日本のメディアと政治家は一方的に製造業の
派遣切り批判を繰り返した。私は昨年暮れ、本欄において「派遣切り批判を批判する」
「続・派遣切り批判を批判する」というコラムを書いたが、そのなかで心配していた
最悪の事態がついに現実のものになってしまった。
※もう少し続きます。
◎ソース
URLリンク(www.nikkeibp.co.jp)