09/05/12 23:50:45
「英国民は社会主義に見切りをつけた。30年にわたる実験は明らかに失敗に終わったのだ。国民は
別の手法を試したいと考えている」
総選挙での初勝利を目前にした1979年5月3日、マーガレット・サッチャー氏はこう考えた。だが5月初旬で
“鉄の女”のダウニング街入りから 30周年を迎えようとする中、英国民の多くは再び“30年にわたる実験は
明らかに失敗に終わった”という結論に達しつつある。今回見切られようとしているのはサッチャー主義だ。
サッチャー時代の終焉は国際的にも重要な出来事だ。民営化、規制緩和、減税、為替管理の廃止、
労働組合の弱体化、富の再配分より創出の重視といった、サッチャー政権が先鞭をつけた政策の多くは
世界中が見習った。
サッチャー首相の就任は米国でのロナルド・レーガン政権発足の18カ月前で、両首脳は瞬く間にイデオロギー
的蜜月関係を結んだ。だが本当の勝利を収めたのは、サッチャー氏の理念がソビエト連邦、フランスといった
思いがけない国々で受け入れられた時だ。
◆在任中は理念的勝利を謳歌
80年代初頭、サッチャー氏が民営化の先陣を切る中、フランソワ・ミッテラン大統領率いるフランスは銀行や
産業コングロマリットの大規模な国有化を進めた。だがサッチャー氏が「女は後戻りしない!*1」という有名な
発言の下、断固として自由市場主義政策を貫く一方、ミッテラン氏は82年にUターンを余儀なくされた。そして
政権末期にはミッテラン氏自身も民営化論者となっていた。
サッチャー政権が終わる頃には、中国、東欧、インド、ソ連でも市場主義に基づく改革が進んでいた。
首相として最後にミハイル・ゴルバチョフ体制下のソ連を訪問した際には、モスクワの新市長は自分と同じ
経済学の大家、故ミルトン・フリードマン氏の信奉者のようだと皮肉交じりに指摘した。サッチャー氏に最も近い
アドバイザー2人は『世界を民営化する*2』という大げさなタイトルを冠した本を出版。自身も「もはや英国病を
恐れる人はいない。誰もが新たな英国流の治療法を求めて列をなしている」と胸を張った。
▽ソース:FINANCIAL TIMES (日経ビジネス) (2009/05/12)
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