09/05/05 02:59:32
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「コレ、オオキイ。ダメネ」。中国人実習生の女性、劉紅(リウホン)さん(31)
=仮名=が、30センチ以上に伸びたホウレンソウの葉を取り除いた。大きすぎると
規格外になり、値段が下がる。来日3年目。品質管理に厳しい日本農業にしっかり
適応している。
中国人研修・実習生を4人受け入れる東日本のある農家で4月の8日間、一緒に
農作業を体験した。午前6時に作業開始。4人は私の倍以上の速さで刈り続けた。
午後6時まで収穫し、すぐに袋詰め。差し入れのおにぎりをほおばっただけで、
午後10時まで続けた。計108箱ができた。
4人は、「国際貢献」を目的とする外国人研修・技能実習制度で来日した。1年目は
研修生で、労働者とは見なされない。2、3年目は労働者として扱われる実習生だ。
研修生は手当として月6万円、実習生は最低賃金を守った基本給から社会保険料など
を引いた月7万円を受け取る。最低賃金は地域差はあるが、時給700円前後だ。
問題は残業だ。制度上、残業は禁止の研修生が1時間300円で、時給の1.25倍
払う必要がある実習生も1時間350円で残業する。
だが、劉さんらは「来日前に聞いていた条件だから不満はない。もっと残業したい」
と言う。生活費は月1万円程度に抑え、3年で300万円をためるのが目標だ。
中国での年収の10倍以上になる。
全国で農業に従事する中国人研修・実習生は1万人を超える。「安く、安定した
労働力」は欠かせない存在だ。
それだけではない。この農家は、彼らを活用して規模拡大に打って出た。以前は
果物が中心だったが、年に5、6回収穫できるホウレンソウに転換。この5年で
耕作面積を2倍に広げた。売り上げは3倍、所得は2倍になった。農家から
「農業経営者」に変身しつつある。
研修生受け入れ窓口の組合関係者は「いまは法律を無視した形だが、売り上げが
1億円になれば農業経営として成り立ち、正規の残業代を払えるようになる」と
「攻めの農業」を後押しする。中国人研修生らの存在は、日本の農業のあり様をも
変えようとしている。
その後、自宅近くのスーパーで、形のそろったホウレンソウを見た。1束198円。
劉さんらの顔が浮かんだ。
■逃げ込む―工場にも実習生 雇い主と紛争も
農業研修・実習生が全国一多い茨城県。JA茨城旭村(鉾田市)は09年1月現在、
計248人の中国人を受け入れている。ここも彼らを活用して農業形態が変わった。
以前はメロン栽培が中心だった。今は、人手があれば年5、6回の収穫が可能な水菜
や春菊などに切り替える農家が目立ち、所得が増えた。研修・実習生という労働力を
あてにできるようになったからだ。JA旭村の約500戸の年間売り上げは約80億
円だが、うち約30億円は研修生のいる約100戸が担う。「中国人研修・実習生が
いなければここの農業は成り立たない」と坂田薫組合長は話す。
大規模なレタス農家が多い長野県川上村は人口約4700人。今年は約700人の
中国人研修生が4月から約半年滞在する。かつてはアルバイトに来ていた日本人学生
が集まらない。最近は日本人が来たとしても、仕事がきつくて朝いなくなっている
ことが多いという。
※まだ続きます。