09/05/03 07:26:40
企業が工場などの施設内で野菜を効率的に育てる「野菜工場」が、3度目のブームを迎えている。
消費者の「食の安全」に対する関心が高まる一方、不況で操業を停止した遊休設備を有効活用
できる利点があるからだ。新規参入を支援するビジネスも熱を帯びつつある。
埼玉県秩父市の県営工場団地。半導体部品メーカーの倉庫の一室で2月、無農薬のレタス栽培が
始まった。長さ17mの3段の棚には青々としたレタスが並ぶ。太陽の代わりに蛍光灯、土の代役に
栄養分をバランス良く含んだ溶液を使って、年45トンを生産する。
野菜工場を運営するのはキユーピーの元社員らが昨年9月に設立した「野菜工房」。
周藤一之副社長は「室内で管理して育てたレタスは細菌が少なく、3週間は日持ちする」。
4月初めから出荷している地元スーパーへの卸売価格は露地栽培の1.3~3倍だが、
売れ行きは好調だ。
野菜工場は温度や湿度、二酸化炭素排出量などを徹底管理し、1年を通じて野菜を栽培する。
蛍光灯などを使って地下でも栽培できる完全制御型(国内約30カ所)や、ガラスの温室を利用した
太陽光利用型(同約20カ所)がある。
野菜工場はもともと80年代に、大手スーパーなどが人工の光で野菜をつくれるかどうかを
研究するために始まった。第2次ブームの90年代後半には水耕栽培技術の向上で参入企業も増えた。
ただ、工場設置費用の負担は重く、野菜の販路確保も難しいため、なかなか定着しなかった。
転機は、昨年の中国製冷凍ギョーザによる中毒事件。野菜でも、高い品質管理をうたう
国産を選ぶ傾向が強まったのだ。狭い空間で栽培できることから、不況で閉鎖した工場を
活用したいという機運も追い風になっている。
とはいえ、独自のノウハウが必要なため、新規参入組を支援する関連ビジネスが急速に
広がっていることも第3次ブームの特徴だ。
三菱樹脂は民事再生手続き中の農業資材専門商社の水耕栽培事業を近く買収し、11年から、
野菜工場の運営に必要なノウハウや設備をまとめて販売する事業に乗り出す。
先行組も収益拡大の好機とみる。90年代から野菜工場の設置を始めた大成建設は野菜栽培
ベンチャーと連携。工場設置から販路まで総合的に支援する事業を始めた。遊休設備の活用を
狙う精密機械や電子部品会社などから約70件の引き合いがあるという。
三菱総合研究所は今月末、野菜工場の関連ビジネスに参入を目指す企業の研究会を発足させる。
酒井淳子研究員は「野菜工場は初期投資がかさむため、短期間では収益を上げにくい。
だが、中長期的に利益を生みだす事業と位置づければ、国内に定着する可能性は十分ある」と
みている。(寺西和男)
▽News Source asahi.com 2009年5月3日01時30分
URLリンク(www.asahi.com)
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太陽光の代わりに蛍光灯でレタスを栽培する野菜工場=埼玉県秩父市