09/04/08 02:20:29
海外からの旅行者に、正しい日本を理解してもらうための「通訳ガイド」。
国や自治体は資格制度を設けているものの、外国人を中心に無資格ガイドが
横行している実態が、国土交通省などの調査で分かった。報酬の安さから
積極的に雇われている事情もあり、観光庁は頭を悩ませている。
東京・浅草。浅草寺に近い駐車場には連日、外国のツアー客を乗せたバスが
やってくる。2月下旬、国交省関東運輸局の職員らは、ガイド資格の周知のため、
外国客を引き連れている「ガイド役」への聞き取りを行った。
2時間で10人以上に資格の有無などを聞いたが、通訳ガイドの資格があると
確認できたのはゼロ。無資格を認めたうえで「もうしません」と言う台湾人や、
「ガイドではなく通訳」と言い逃れようとする中国人、「時間がない」と回答を
拒否する人もいた。
有資格者でつくる全日本通訳案内士連盟(JFG)が今年1月まで1年間かけて、
京都で6回実施した調査でも、資格が確認できたのは1割に満たなかった。
連盟によると、日本の旅行社の多くは有資格者を雇っているが、アジア各国で
企画された日本行きツアーの大半は無資格のガイドに案内させているという。
無資格ガイドを禁じている通訳案内士法は約60年前からあり、06年には
罰金が3万円から50万円に引き上げられた。しかし観光庁によると、罰金が
科されたケースはこれまで1件もない。単なる通訳や添乗員ではなく歴史を
説明するなどの業務をしている確証や、ガイドの対価として報酬を得ている
との立証が難しいためだ。
無資格がはびこる背景に、「報酬の安さ」がある。有資格者の報酬は1日2万
~3万円だが、都内で中国人向けのツアーを仲介している男性は、無資格者を
「1万円程度で雇っている」と打ち明ける。
また外国人にとって、通訳ガイドの試験は「難しすぎる」という。日本に20年
暮らし、関西で10年間ガイドをしている韓国人男性(45)は「資格はほしいが、
試験で問われる知識は細かすぎる」と指摘する。
過去の歴史の出題例をみると、「天正遣欧使節を派遣したキリシタン大名で、
マードレ・デ・デウス号事件後に切腹を命じられた人物」(答え・有馬晴信)や、
「前原一誠に率いられた不平士族の反乱事件」(同・萩の乱)を四択から選ぶ
問題などがある。08年度の合格率は約17%。10年以上日本でガイドをして
いるタイ人の男性(38)は「試験用の予備校もあるが、費用が何十万円もかかる
のであきらめた」と話す。
観光庁は10年に1千万人、20年に2千万人の訪日客を目指しており、「旅の
満足度を高めるためガイド制度は重要」と位置づける。試験のあり方やガイドの
技量向上などについて議論していく方針だが、無資格者の抜本的な対策は打ち出せ
ていない。
観光庁の昨年の調査では、ガイドを専業とする有資格者の約4割が、年収100万円
未満という厳しいデータもある。JFGの山田澄子理事長は「まじめに勉強して
資格を取り、研修もして技量を磨いているガイドの職域が侵されるのは問題。
不十分な知識で日本を案内することは、国にとってもマイナスだ」と訴えている。
◎日本政府観光局(JNTO)|通訳案内士試験概要
URLリンク(www.jnto.go.jp)
◎ソース URLリンク(www.asahi.com)