09/03/17 08:15:17
ソースは
URLリンク(mainichi.jp)
[1/3]
なぜ今、普通に働く勤労者が、かくも多数、いっせいに切り捨ての悲惨にさらされなければならないのか。
昨秋のリーマン・ショック以降、さらに深刻さを増す世界同時不況。そのなかで、非正規雇用労働者が
職・食・住を同時に奪われ、寒空の下に放擲(ほうてき)された。人間の尊厳を足げにする「派遣切り」
「雇い止め」の横行。内橋克人さん(76)はすでに90年代半ばから、労働の分断と階層化が格差を
広げ、このままでは社会統合が崩壊する、と警鐘を鳴らし続けた。
「“多様な働き方の時代”などとうたいながら、実際に企てられたのは、企業の思いのままに
超低コスト労働力を調達し、“多様な働かせ方”ができる労働市場を新たにつくることだった。
戦後、営々と築き上げた労働基本権をご破算にする。プログラムを完成させたのが、製造業への
派遣労働を解禁した小泉構造改革だった。私たちのウオーニング(警鐘)がいまになってようやく
“可視化”される時代がきたということです」
製造業への派遣労働解禁を待ちあぐねたように、中国はじめアジアに出ていた工場の「日本回帰」が
始まった。日本のメディアは「やっぱりモノづくりは日本で」と口をそろえて歓迎し、甘い拍手を
送ったものだ。
「調べてみれば、日本回帰と解禁(製造業への派遣労働の解禁)の時期は見事に符合している。
解禁を見越して大企業の“工場の出戻り”が目立つようになった。政界、財界、そしてこれを理屈づけた
労働経済学者ら3者の呼吸は見事なまでの一致ぶりです。中国に工場を移さなくても、この日本で
アジア並みの解雇自由・低賃金労働の調達が可能になり、併せて技術の流出も防げる。日本での
“労働解体効果”に引かれて回帰してきたそれらの工場から、今回、真っ先に派遣切りが始まった」
規制緩和一辺倒論者、その先頭を走った学者らのうたい文句、「働き方の自由化」とは、その実、
「働かせ方の自由化」であったことを人びとはいま、目の当たりにしている。
トリックとレトリック(修辞)にはめられやすい日本人の弱点が、時の政権、そのもとに蝟集(いしゅう)
した学者らによってあまりに巧みに突かれた、と内橋さんは残念がる。
アメリカ社会を覆った「ワーキングプア」をいち早く「働く貧困層」と日本語で呼び、警鐘を鳴らしたのも
内橋さんだった。いま、言葉は「普通名詞」になっている。
労働にとどまらない。小泉構造改革なるものは構造改革をうたいながら、もっと深刻な「新たな構造問題」
を生み続けた。労働の解体、地方の疲弊、さらに「家計から企業への所得移転の構造」の三つだ。
内橋さんの鋭い警鐘は続く。
「この壮大な“負の遺産”の清算に向けて、私たちの社会はこれから多大なエネルギーと時間、
そして社会的コストの消耗を迫られることになるでしょう。私たちはすでに深刻な矛盾のなかに
連れ込まれています」
-続きます-