09/03/17 01:11:05
つくばと秋葉原を四十五分で結ぶつくばエクスプレス(TX)。沿線で県などが進める開発事業は、未売却地の
地価下落などにより、県の将来損失は現時点で約八百六十億円に上ると試算されている。地権者との契約など
から事業規模を「縮小」することはできず、土地の安売りといった「攻勢」もかけられない苦境に陥っている。
県や都市再生機構、守谷市などは、同市とつくば市、つくばみらい市にわたるTX沿線八地区の計約千七百
ヘクタールを住居系、商業系などの街区に整備する土地区画整理事業を進めている。事業費は計四千百八十億円。
このうち一九八八年度に着工した守谷東地区は既に事業が完了したが、全事業の完了は二〇二二年度の
予定で、残り七地区の平均整備率は現時点でわずか約二割。八地区の人口十万二千人の計画に対し、まだ
約一万人しか居住していない。
事業は道半ばだが、県が区画整理をして、これから販売する未売却地二百七十ヘクタールだけをみても、
地価下落などで販売額が二千二百九十四億円しか見込めない。これに対し、TX開業が五年遅れたことによる
金利増大などで土地の借入金返済額は二千百七十五億円とほぼ同額に達する。
県の試算では、今後膨らむ借入金の利息や区画整理工事費九百七十九億円を差し引くと、八百六十億円の
将来損失が見込まれる。
沿線開発完了に必要な残りの事業費は二千五百億円。野党系県議からは、傷口を広げないよう事業縮小を
求める声が出ている。
しかし、地権者から一定の土地提供を受ける代わりに区画整理を約束しており、簡単に計画を変更できない。
また、事業区域を狭めれば、既に開発された社会資本への負担が限られた地権者に大きくのしかかることに
なり、県は「事業縮小はできない」との立場だ。
県としては未売却地を電線地中化や街路樹整備などで付加価値を高めたり、土地を値下げしたりして“攻め”
の販売に打って出たいが、巨額の将来損失が見込まれる状況では積極策も取れない。
県沿線整備調整室の渡辺紀之室長補佐は、「区画整理事業をやったからこそ鉄道用地が生まれ、TXが開通
できた。国の補助金活用や、セールス促進で未売却地を早期処分するなど将来損失の抑制に努める」と話す。
だが、県は出資団体の住宅供給公社や土地開発公社、開発公社の保有土地の損失処理などに各十億円
以上を既に支出する予定で、TX沿線開発によるさらなる損失発生には、保守系県議からも「負の遺産が増える
と思うとゾッとする」と悲嘆の声が上がっている。
▽ソース:東京新聞 (2009/03/16)
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