【コラム】100年に1度の危機に、ケインズはよみがえるのか? (DIAMONDonline 野口悠紀雄 “未曾有の経済危機を読む”)[08/12/16]at BIZPLUS
【コラム】100年に1度の危機に、ケインズはよみがえるのか? (DIAMONDonline 野口悠紀雄 “未曾有の経済危機を読む”)[08/12/16] - 暇つぶし2ch1:やるっきゃ騎士φ ★
08/12/17 12:50:48
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いま世界で起きているのは、マクロ経済学の教科書に書いてあるとおりの事態だ。すなわち、
有効需要の激減が、経済活動に大きな影響を与えている。
したがって、それがいかなる影響を持つかを、マクロ経済学のモデルで分析できる。
income-expenditure model(所得・支出モデル)と呼ばれる最も簡単な形のモデル(利子率や
価格の変動を考えないマクロ経済モデル)でも、かなりのことがわかる。

日本の立場から見ると、現在重要な変化は、輸出の落ち込みだ。これを外生的な変化として捉え、
消費支出や輸入は所得に比例して変化すると考えて、生産=支出の関係を立てる。これを解けば、
「乗数効果」を取り入れた分析ができる(設備投資や住宅投資をどう考えるかも重要だが、
とりあえずいくつかの値を想定することでも、かなり意味ある分析ができる)。

もう少し拡張したモデルを考えるなら、開放経済下のマクロモデルである「マンデル=フレミング・
モデル」を用いればよい。これは、経済学を勉強した人でも、あまりはっきりと覚えていないかも
しれない。「そう言えば国際経済学の講義で聞いたことがある」程度の認識しか持っていない人が
多いかと思う。しかし、現下のさまざまな問題に対して、常識では必ずしも得られない答えを
与えてくれる。
たとえば、「変動相場制の下で財政支出を拡大しても、円高になって貿易黒字が減少するから、
経済拡張効果はない」ということなどがわかる。この点は、現下の経済危機に対する対応を
考える際に、大変重要なことだ。仮に10兆円規模の経済対策を考えようが、効果は期待できない
わけだ。ましてや、2兆円の定額給付金など、何の効果もないことがわかる。

■マクロ経済学がはじめて意味を持った
これまで、私は、「マクロ経済学はくだらない」と考えていた。マクロ経済理論では、需要の変動が
経済活動に影響を与えるというのだが、仮にそうしたことがあったとしても、小さな変動しか
ありえないだろう。経済活動の基本を決めるのは、供給側の要因であるに違いない。つまり、
生産能力、労働者の状況、技術などである。

高度成長期の日本経済を見ていた人なら、誰でもそう考えたことだろう。1930年代のイギリスを
対象としたケインズ経済学は、高度成長時代の日本経済の現実とはおよそかかわりのない理論で
あり、「現実の世の中のことはさておき、ケインズはこう言っている」というだけの話でしか
なかった。つまり、経済学説史以外の何物とも思えなかったのである。学生の興味をひきつけ
られなかったのも、当然のことだ。こんな理論を教室でまじめに教えていたというのが、
信じられないことだ。

-続きます-



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