08/12/13 20:15:42
労働力人口の2割が海外で就労する「出稼ぎ大国」のフィリピンが、
金融危機に伴う世界的な景気後退の余波に揺れている。
就労先の海外企業から解雇された労働者が相次いで帰国し始めたためで、
外からの送金に国家経済を依存する政府は、対策に頭を抱えている。
◆「仕送り依存経済」ピンチ◆
「政府は、海外労働者を見捨てるのか」。
解雇された海外労働者約100人が帰国した今月5日、マニラ首都圏パサイ市の海外労働者福祉庁前で、
労働団体メンバーら約30人がプラカードを掲げて気勢を上げた。
台湾の半導体メーカーで働いていたベルナデット・コルタスさん(24)は11月末、
雇用契約期間を1年以上残して、100人余りのフィリピン人とともに突然、解雇を告げられ、帰国した。
月給の1万7000台湾ドル(約4万7000円)の大半は家族に送金していたが、
解雇の結果、弟と妹3人は学費が支払えなくなり、休学。
借金をして就職仲介業者に支払った8万5000ペソ(約17万円)も返せる見込みはない。
「国内の安月給では家族を養えない。また海外で働き先があるかどうか……」と不安を募らせる。
世界の景気後退期、真っ先にリストラの矛先が向かうのが外国人労働者だ。
1997~98年のアジア通貨危機当時は、解雇後に帰国費用もままならず、就労先の国で失業した
フィリピン人が多数いたとされるが、今回は、当時を上回る規模になるとの見方が強い。
地元メディアの集計では、金融危機に伴うリストラで、今月上旬までに台湾、豪州などから帰国した
フィリピン人労働者は計約1400人。来年以降、米国、韓国の工場労働者やシンガポール、香港で働くメイドなど、
海外で就労する約900万人のうち、約50万人が職を失う恐れがあるとの予測も出ている。
フィリピンは国内総生産(GDP)の1割を海外労働者からの送金に依存しており、
国内経済への影響も大きいとみられる。
比中央銀行の統計では、海外からの送金額は、今年6月の14億5083万米ドルをピークに減少を続けており、
欧州の金融大手UBSも、09年の送金額は08年比で8億米ドル減少するとの見通しをまとめた。
これに対し、アロヨ大統領は解雇された海外労働者に最低5万ペソ(約10万円)の貸与や
職業訓練を提供するなどの緊急支援を発表。
「厳しい雇用情勢下でも、求人の多い国はいくらでもある」として、大統領自らカタールを訪問して
海外労働者の受け入れ枠拡大に乗り出すなど、対策に躍起だ。
しかし、海外労働者支援団体「ミグランテ」(本部・マニラ)のガリー・マルティネス議長は、
「自国産業の育成を怠り、労働力の輸出に終始してきたツケだ。このままでは、フィリピン人はどこにも
働く場所がなくなる」と訴える。
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