08/12/10 13:03:17 BE:91873722-PLT(12021)
軽水炉に比べ、小型だが熱効率が高い次世代原子炉「高温ガス炉」導入を巡る動きが活発化してきた。
高温ガス炉は高熱を利用して水を硫酸などと化学分解させ、二酸化炭素(CO2)を排出することなく水素を
取り出すことも可能だ。世界で初めて水素の連続製造に成功した日本原子力研究開発機構(JAEA)は、
国内鉄鋼メーカーやカザフスタン政府などユーザー開拓を進めている。とくに海外での需要が高まり、
大手商社も参入し、新たな原子力ビジネスとして成長が見込まれそうだ。
高温ガス炉は炉心に黒鉛、燃料被覆材にセラミックスといった耐熱性の高い素材を用いることで高温の
熱を取り出すことができる。効率性と安全性に優れていることから日本を筆頭に米国、中国、韓国、
フランスなどで研究開発が進められている。 なかでもJAEAは950度の高温熱を達成し、
技術的には優位に立つほか、中国は750度、米国も(2013年建設開始後の当初は)約800度を
予定するなど追随する構えだ。日本では20~30年ごろの実用化を目指す。
JAEAは新日本製鉄と高温ガス炉で製造した水素の利用に関する研究を進めている。日産1万トンの高炉で、
コークスに代わる還元剤として水素を利用した場合、年間のCO2排出量を11%削減できるという。
排出量の多い石油コンビナートや環境に熱心な自治体を中心に導入を呼びかけるが、水素社会到来の時期が
不透明ななか、「手を挙げてくれる国内ユーザーはなかなか見つからない」(JAEA)のが現状だ。
そこで、着目しているのが海外ユーザーの開拓だ。
高温ガス炉は大量の水を必要としないほか、軽水炉に比べて設備投資も巨額でないことから、
乾燥地帯が国土の多くを占める中央アジアのカザフスタンで建設計画が持ち上がっている。
JAEAはカザフ北部のクルチャトフ市で、高温ガス炉を生かした発電、水素製造に加え、余熱を活用した
暖房システムを計画している。カザフは原発燃料となるウラン資源が豊富なことから原子力技術協力を
てこに資源外交につなげたい考えで、両政府間で原子力分野の協力関係を強化している。
中国では、13年の運転開始を目指し山東省で、建設計画が進行中。住友商事と東洋炭素(大阪市北区)が11月、
数十億円もの炉心用黒鉛材を受注している。
各国とも国をあげて研究開発費を増額しており、JAEAも「追い上げは激しい」と危機感を募らせる。
技術を継承し、開発競争で先行するには、国内外の導入先獲得がカギを握りそうだ。
Business i.
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