08/11/23 02:26:34
世界的な金融危機のなかで、日本経済の悪化も顕著になっている。選挙が近いと考えられるなかで、
日本の経済運営にも大きな関心が集まるようになった。残念ながらいま、経済運営は方向を誤りつつある。
政治は当面の選挙での集票を意識して、政府の支出をやたらと拡大させたがる。定額減税、住宅投資減税
など、政府の財布の紐を緩める話が連日新聞の紙面を飾っている。一方では官僚の主導で、社会保障国民
会議が消費税引き上げ(4%)の必要性を報告するなど、気が付けば大きな政府への道が開かれつつある。
考えてみれば、このような経済情勢下で消費税引き上げを論じるというのは、なかなかの“センス”である。
確認しておくべき重要な点がある。それは、近年の日本の株価がサブプライムの震源地であるアメリカよりも
一貫して悪いパフォーマンスを示していることだ。昨年の日本の株価はマイナス11%。アメリカは6%の上昇
だった。今年に入って、日米ともに大幅な株価下落を経験しているが、下落幅は明らかに日本のほうが大きい。
サブプライムによる金融機関への直接的な打撃が小さいにもかかわらず、である。
このようななかで、選挙を控えた現政権にはどのような選択肢があるであろうか。麻生政権は、当初早期の
解散・総選挙を想定していたが、支持率が予想より低く、選挙で勝てる状況とは判断されなかったことから先送り
された。しかし時間がたつとともに、支持率はさらに低下すると考えるのが普通である。したがって現状では解散
できないが、かといって今後ますます解散できない状況になるのではないか、と懸念されるのである。そうした
なか経済悪化にどのように対処するか、その選択肢として頭の体操のレベルでは、以下の3つのシナリオが
考えられよう。
第1は、経済悪化の理由と正面から向き合い、必要な改革を行なうことだ。経済の悪化は、基本的に改革の
モメンタム(勢い)が低下し期待成長率が下がったことに起因している。だから規制改革や財政改革など、
グローバル競争に勝てるような思い切った政策が求められる。また、官僚主体の政策決定によって、ここ数年
行きすぎた規制強化が行なわれた。こうした規制は、コンプライアンスや安心・安全といった“美名”の下に行なわ
れる。いわゆる「コンプライアンス不況」に対応することが必要だ。とりあえずこれを、「改革シナリオ」と呼ぼう。
第2のシナリオは、以上のような抜本的な改革を避けて、目の前の財政拡大でしのぐことである。とりわけ、
選挙の投票行動で与党に有利になるような「バラマキ」を行なうことだ。どうやら現実の道は、これに近いもの
になりつつある。補正予算の中身には、支持母体に配慮して予算配分した傾向が読み取れる。いずれにしても、
これは「バラマキ・シナリオ」である。
▽著者
竹中平蔵(慶應義塾大学教授)
▽ソース:VOICE(Yahooニュース) (2008/11/21 14:44)
URLリンク(zasshi.news.yahoo.co.jp)
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