08/11/23 02:26:49
>>1の続きです。
これに対して第3のシナリオがありうる。それは、一般の予想を超えるような、きわめて大規模な財政拡大策を
実施することだ。たとえば、現状では5兆円(GDP約1%)程度の第2次補正が論じられているが、経済非常事態
宣言をしてこの規模を30兆円、40兆円にしたらどうだろうか。大変なサプライズである。じつは、経済を短期間
よくすることは難しくない。政府が大規模な資金をバラまけば、そのぶん当面の景況感は明らかによくなる。
もちろん、これを続けることはできないから、翌年は大幅な財政縮小になり経済は大幅に悪化する。それ以前
に、国債市場で価格暴落、金利上昇が起きるかもしれない。しかし、どっちにしても選挙で勝てそうもないので
あれば、短期間だけ大幅に経済状況をよくしてその時期に選挙を実施するというシナリオも、政権としては悪く
ないかもしれない。もちろん、その後の日本経済はガタガタになるだろうが、選挙を乗り切って政権を維持する
ことはできるかもしれないのである。じつは銀行が破綻する直前に、とんでもない高金利の金融商品を出して
短時間生き延びようとすることがあるが、それと似ているかもしれない。まさに「イチかバチかシナリオ」である。
それぞれのシナリオを評価してみよう。経済がよくなるかどうかという視点で、よくなる2点、あまりよくならない
1点、悪くなる0点、としよう。選挙結果が与党によくなるかどうかで、よくなる2点、わからない1点、よくならない
0点、と考えよう。まず「改革シナリオ」の場合、経済はよくなる(2点)が、選挙結果への影響はわからない(2点)。
「バラマキ」は経済はあまりよくならない(1点)し、選挙結果も与党によくなることはない(0点)と考えられる。最後
に「イチかバチかシナリオ」を考えると、経済は悪くなる(0点)が、選挙結果はよくなる(2点)と考えていいだろう。
さて、双方の結果を単純に足し合わせると、改革3点、バラマキ1点、イチかバチか2点、となる。これを見ると、
現状のような安易な財政拡大、つまりバラマキは日本にとっても現政権にとっても、よい政策ではないことになる。
にもかかわらずこれを進めようとしているところに、政権としての戦略性の欠如が窺われる。もっとも、日本経済
をガタガタにしてでも自分は生き残るという第3のシナリオにならないことは、国民にとってはせめてもの救いと
いえる。
今回の金融危機で、欧米諸国は大きなダメージを負った。いまやグローバル都市間競争の時代であるが、
これまで世界をリードしてきたニューヨークやロンドンのダメージは大きい。こうしたなか、東京が飛躍する大きな
チャンスを迎えているのだ。最近、森記念財団から公表された「グローバル・パワー・シティ・ランキング」という
都市ランキングで、東京はニューヨーク、ロンドン、パリに次いで第4位に位置づけられている。かつ東京は、
総じて高い評価を受けながら、部分的に弱点をもっていることが示されている。いわばボトルネックである。
それを解消することによって、先の三都市に並ぶ可能性が示唆されているのだ。ボトルネックは、強い政府
規制、高い税率、空港アクセスの非効率である。これを改革することこそが、まさしく本当の経済対策である。
近視眼的な景気対策を重ね、失われた10年をつくってしまった日本の政治……。残念ながら、いままた同じ
ような道を歩み始めることが懸念される。
-終わりです-