09/12/27 19:49:32
「ソ連軍兵士が捕虜になった場合を尋ねた.だが,皆は口を噤む.ハジが口を開く.
『取り調べの後はよく知らない……』
やっとハジが一例を語る.
『肉用の斧で両足首を切り落とし,さあ帰れ,さあ帰れ,と言うと,泣き喚きながら立とうとし,そして這いずって遠ざかろうとするよ.
そこへ皆で石を打つ.
ある村で女を犯したソ連兵が捕らえられた.このときは,石打ちの後で小石の山ができてたな.その山がちょっとでも動いたように見えると,石を取り払って,改めて投げつけた』」
わたしはその場から動けなかった。目を向けまいとしたが、同時に自分のわずか五メートル前
で起こっていることの恐怖に金縛りにされていた。ソ連兵の足はぶらぶらしていた。ムジャヒ
ディーンたちは無言のまま、自分たちのやっていることに没頭している。アラゴルンが何事か
叫んだ。捕虜に傷を負わせた四人の男たちが、もう一人のひどい火傷を負ったソ連兵のほうに
歩いていった。グループの残りの者たちは、その兵士を岩に寄りかかるようにして立たせていた。
彼はすでに完全なショック状態だった。その表情から、まわりでなにが起きているのかほとんど
わかっていないことが読み取れた。
彼にとっては幸運だった。
スメアゴルが近づいてくるのを見た彼は、身もがいてあとじさりしようとしたが、彼らに捕
まえられ、今度は頭と首のまわりをしっかりと押さえられてしまった。スメアゴルは少年の前
に立ち、顔の前でナイフをちらつかせて、彼を嘲笑った。まるで、襲いかかろうとする蛇のよう
だった。突然、彼が突進し、ナイフの切っ先を捕虜の目のまわりの皮膚に繰り返し突きたてた。
深い切傷が額と頬の皮膚に現われた。そのあとスメアゴルは、ナイフを腕と胸のほうに下ろして
いき、刃を皮膚の上でゆっくりと滑らせて、切り口から血をあふれださせた。わたしはふたたび
顔をそむけ、彼らに背を向けて、平気なふりをしようとした。わたしはAK-47をもてあそびながら、
ビルボに話しかけようとしたが、どういうわけか、声が出てこなかった。そのとき、わたしは
また叫び声を聞いた。彼が足首を切られたときにあげたのと同じ、あの耳をつんざくような絶叫
を。そして、わたしは彼らがもう一方の足にも同じことをしたのを見た。