08/12/27 18:43:28
「ロシア人かい?悪いけど、今夜は満室だよ」
ハリウッドで宿を求めた俺に、宿屋の親父はこう言った。
どう見ても繁盛してるようには思えない安宿だったが、
米ソ冷戦真っ盛りの50年代、アメリカ上院議会の議員達によって、
社会主義者が追放されていった土地柄だ。
仕方ない。時刻を見るため、袖をめくりタイメックスを取りだした。
その時、親父の表情が変わった。「ロシア人がなぜタイメックスを・・・?」。
「いいものはどこの国だろうと関係ないさ。ポレオットよりタイメックスの方が
よければそれを使うまでさ。ロシア人でもね」。
親父は目に涙をためながら、無礼を謝り、俺を部屋へと案内してくれた。
「私は恥ずかしい。本当は社会主義者なのに・・・それはアメリカ人と
して恥ずべきことだと思い、今まで隠してきた。そして、あなた達ロシア人にも失礼な
態度を取ってしまい・・・。これからは堂々とマルクス・レーニン主義を広めよう
思う。俺の同志カリーニンの銅像を見てくれ!」。そう叫んで、銅像のカバーを外した
親父に、俺はこう言った。
「いや、それトロツキーじゃん」。