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(つづき)
品目と細目との関係を「精米」を例に取ると、次のようになる。細目では「国家貿易で輸入
するもの」と「国家貿易以外で輸入するもの」に分かれるが、いずれも同省が発表したTPP合
意内容では品目名は同じ「精米」になる。TPP合意では、前者の国家貿易「精米」で売買同時
入札(SBS)方式の国別枠を新たに設け、米国とオーストラリアに譲歩することになった。
しかし、細目では、後者は関税を引き下げたり新たに枠を設けたりしなかったので、手付かず
で守った重要品目の一つというのが政府の言い分だ。
どちらも仕様は全く同じなので、「精米」のくくりで政府は市場開放をしたことになるが、
細目で発表することで精米の一部を手付かずで守ったような印象を与えている。
同省資料によると、米で手付かずの細目数は17で、全てが国家貿易の枠外。枠内では、
低関税枠の数量を設けるなど、全ての細目で市場開放している。いわば、同じコインの裏側
だけを手付かずで残したものの、表側は譲歩した形だ。その他の品目では関税割当枠内の細目
を手付かずにして、反対に枠外を市場開放したものもあり、さまざまなパターンがある。
同省の発表資料では全ての情報を網羅していないため、156の手付かず細目がいずれも同一品目
に複数あるものという確認はできないものの、今回の計算で約126が「市場開放できる品目は全て
譲っている」ことになる。
農業交渉に詳しい作山巧明治大学准教授は「米のケースと同じように、全ての品目で何らかの
市場開放をした疑いが濃厚だ」と言う。 農水省は「細目ごとに合意をしたもので、品目という
概念で開放したかどうか整理していない。同じバターでも国家貿易の枠で輸入するものと枠外
で輸入されるものは全く商品が異なり、同一のものといえない」(国際経済課)と説明して、
品目ごとの事実確認を拒否している。
国会はTPP交渉に日本政府が参加する前、重要5品目について「交渉からの除外または再協議」
を決議した。しかし作山准教授は「日本政府は重要5品目を含む全ての農産物の品目で譲歩を
したとみられ、TPP合意は明らかに国会決議に違反している」と指摘する。 (特別編集委員・山田優)