【バーチャルBilibiler】湊あくあアンチスレ#363【ホロライブ】at STREAMING
【バーチャルBilibiler】湊あくあアンチスレ#363【ホロライブ】 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:08:27.50 .net
今のうちにユークリッドを囲うぞ!
URLリンク(i.imgur.com)

151:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:08:37.09 .net
ここか

152:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:08:47.47 .net
>>145
割とあるでしょ

153:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:09:03.39 .net
おほほい!おほほい!

154:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:09:04.68 .net
>>150
にじレジに囲われてるから無理

155:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:09:18.85 .net
福山死ね

156:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:09:55.75 .net
タムガイジこっちくんなよ

157:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:12.41 .net
DJ同盟よろしくおねがいします

158:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:16.56 .net
くこ?

159:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:34.13 .net
ほちょ?

160:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:35.86 .net
>>156
何でタムって分かったの?
あっ…(察し)

161:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:49.19 .net
ほちょちょい!ほちょちょい!

162:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:50.92 .net
フブひいてぇてぇから許す

163:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:10:51.48 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

164:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:05.11 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

165:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:10.84 .net
タムガイジホロ乱立やめーや

166:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:18.51 .net
ホロタムあにスト連合でドル豚倒すぞ

167:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:21.37 .net
ホロライブは、ピンサロだ

168:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:26.11 .net
なんだDJ同盟って

169:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:30.33 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

170:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:36.37 .net
パコ余さん今レーザーのマウス使ってるとか言ってたけどみれあもレーザーのマウスだしマジで付き合ってるわんちゃん?

171:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:11:47.48 .net
ゲップランドほんときらい
A子とB子の未来返せよ

172:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:01.37 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

173:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:20.46 .net
>>168
アカリとロボがオフコラボしただろ

174:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:26.80 .net
>>168
ディスクジョッキーの略だよ
知らないの?

175:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:27.83 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

176:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:29.80 .net
>>171
そいつらは自分で人生捨てたんだ😋

177:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:31.59 .net
アカロボてぇてぇから

178:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:33.48 .net
ゲップランドマジでクソだよな

179:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:37.81 .net
ホロは、風俗だ

180:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:39.92 .net
ユードリックとシオンのコラボまで見えたな

181:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:49.45 .net
アカリとロボ子の共演しらないってもぐりかよ

182:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:50.67 .net
>>179
それは否定しない

183:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:12:52.93 .net
>>168
おまえほんとにホロアンか?

184:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:06.43 .net
>>173
そういえばそんなんやってたな・・・

185:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:14.14 .net
ゲップなんて潰れちまえ

186:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:27.47 .net
DJイベントなんてこのスレでもほとんど話題にならなかったぞw

187:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:27.64 .net
ホロアンの迷子ガイジ貼っとくぞ🙆
0563 名無しさん@お腹いっぱい。 2019/01/12 15:01:01
なんでアンチスレが湊あくあスレになってんの探しにくいわボケ
0573 名無しさん@お腹いっぱい。 2019/01/12 15:03:20
>>568
スレタイのこと言ってんだよ
日本語理解できないガイジかよ
0596 名無しさん@お腹いっぱい。 2019/01/12 15:14:24
>>580
ホロライブアンチスレってスレタイから
あくあアンチスレってスレタイになって探しにくいって言ってんだよ
小さな子供でもわかるように説明したがわかったか?

188:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:30.98 .net
ホロ信者は、バカと童貞だ

189:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:39.04 .net
>>170
よくみれあのこと調べれるな...
あの青マニキュアで吐いて以降もう無理だわ

190:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:43.44 .net
ニュース0でもドル部いなくてタムホロで同盟組んでたからな

191:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:45.54 .net
ゲップランドのスレ乗っ取れよ

192:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:52.64 .net
風俗は、ミライアカリだ

193:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:56.75 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

194:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:13:57.92 .net
馬鹿tuber
はねる、YuNi、フブキ、めあ、ミコ、豆他
vs
ごんごんソロ
勝てるか…?

195:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:07.54 .net
ミライアカリは、灯台だ

196:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:07.56 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

197:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:19.18 .net
>>192
スパチャランキング下位の方じゃん

198:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:20.80 .net
くこタムのコロニー

199:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:34.94 .net
ニコ生Vtuber顔バレ
URLリンク(i.imgur.com)
左上 日南
右上 かなた
左下 まこじき
右下 くるる

200:名無しさん@お腹いっぱい。



201:e
あくあは、チャイニーズだ



202:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:45.28 .net
灯台は、大学だ

203:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:46.10 .net
>>194
前回のバカチューバー12000くらいいってたから余裕だぞ

204:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:14:57.52 .net
【悲報】モルちーマイクラに狙いすましたかのように叶ログイン

205:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:02.08 .net
タムスレ見てみたらキモイドル豚の巣になって草
閉じコンらしいっちゃらしいけど

206:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:08.60 .net
あのイベント行ってるって書いたやつが一人いて
その後ロボ子がお持ち帰りされそうって話したくらいだな

207:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:19.76 .net
まつりがあくあと共演したり
フブキがめあと共演したり
ホロライブで革命おきてるわ

208:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:36.71 .net
>>194
ビリビリと合算すれば余裕・

209:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:48.17 .net
ホロライブは、チャイコンだ

210:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:48.41 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

211:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:15:56.14 .net
閉じコンドル豚(ブサイクなバカ貧乏)
世界に羽ばたくホロライブ(ファンは高学歴イケメン社長)

212:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:06.97 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

213:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:24.31 .net
>>206
敵の敵は味方なんだなぁ

214:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:25.91 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

215:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:30.97 .net
ほそぼそと生きてるホロアンスレに大量の親方ガチ恋勢がいるぞ
誰だよフブキにガチ恋勢はいないとか言ってたやつ

216:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:34.47 .net
【速報】じぇむかん鎖国解除
火曜日20時upd8から大物ゲスト参戦

217:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:37.14 .net
ドル部はピーマン君とかいうガイジ作った黒歴史忘れるなよ

218:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:38.20 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

219:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:43.17 .net
すま人…
配信しとるぞ
すま人…

220:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:47.89 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

221:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:50.64 .net
ホロ信ってイケメン多いよな
なんかあんまオタクっぽくない
女性にモテそう

222:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:16:53.90 .net
すまん弟、シロアンを引き取ってくれ

223:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:04.27 .net
>>214
どこに?

224:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:05.52 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

225:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:12.63 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

226:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:21.75 .net
>>215
マジ?
あそこドル部より鎖国してたやんけ

227:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:21.90 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

228:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:31.16 .net
>>216
ピーマンはB子が原因なんだ😋
結局あいつらが全部悪いんだ😋

229:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:33.58 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

230:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:45.37 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

231:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:49.71 .net
タム兄怪物連れてくるとか許さんぞ

232:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:17:51.57 .net
>>214
それ数字ガチ恋勢だから・

233:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:00.32 .net
ここってこんなに酷かったっけ
クソみたいなスレになったな

234:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:11.79 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

235:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:17.00 .net
>>222
くこ
スレリンク(streaming板)

236:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:21.13 .net
お前らのせいだろwwwwwwwwww

237:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:30.91 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

238:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:31.88 .net
あくあ最強!いやゴミ

239:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:40.31 .net
湊あくあ最強!湊あくあ最強!

240:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:44.22 .net
ホロとゲップデートの繋がりは?

241:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:47.93 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

242:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:52.61 .net
あくあ最強!いやゴミ

243:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:54.59 .net
タム兄さぁ・・・
しっかり隔離しといてくれよ

244:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:55.89 .net
あくあ最強!いやゴミ

245:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:59.05 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

246:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:18:59.47 .net
>>232
タム兄さんがすべて悪い

247:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:05.38 .net
>>234
なんだこのスレ!?

248:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:21.32 .net
あくあ最強!いやゴミ

249:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:26.48 .net
>>232
割れ窓理論やぞ

250:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:30.40 .net
>>230
何が兄だ
気色悪いんだよ死ね

251:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:36.27 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

252:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:42.80 .net
シロアンの介護頼むわ
ほな…

253:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:43.81 .net
タムアンはこんなの飼ってたのか…

254:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:51.21 .net
シロアン大活躍で草

255:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:53.82 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

256:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:58.64 .net
くこタムのコロニー

257:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:19:59.57 .net
>>239
パトフブコラボ5600

258:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:20:14.79 .net
くこタムのコロニー

259:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:20:15.44 .net
シロアン本スレはこっちだぞ
スレリンク(streaming板)

260:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:20:23.38 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

261:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:20:36.11 .net
くこタムのコロニー

262:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:20:38.78 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

263:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:20:56.75 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

264:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:10.36 .net
フブキッズ「フブキガチ恋勢はいない、いるのは数字ガチ恋勢だけ」
普通にいるじゃねーかw

265:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:15.14 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

266:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:31.73 .net
じぇむかんて何かと思ったらうーたま族か
どうでもいい

267:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:39.60 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

268:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:42.02 .net
シロアンそろそろ帰るぞ
迷惑かけんな
スレリンク(streaming板)

269:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:48.98 .net
ドルアンには行かない、いや行けない敗北者が

270:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:54.78 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

271:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:58.19 .net
避難先
スレリンク(streaming板)

272:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:21:58.21 .net
シロアンへ
本スレ
スレリンク(streaming板)

273:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:22:21.55 .net
>>268
>>268
悔しいか?

274:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:22:32.07 .net
はゆゆってエロゲーに出てたよな

275:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:22:39.12 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

276:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:07.97 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

277:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:14.24 .net
df0fb

278:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:16.07 .net
>>272
悔し過ぎて安価二つ付けてて草

279:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:24.52 .net
なんだこのスレ

280:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:27.14 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

281:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:31.34 .net
あくあの配信見て思ったけどアイワナってずいぶん演出が寒くなったな

282:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:31.33 .net
>>607
て咲いているのも今更に目につく。時雄はさる画家の描いた朝顔の幅を選んで床に懸け、懸花瓶には後れ咲の
薔薇の花を※(「插」のつくりの縦棒が下に突き抜ける、第4水準2-13-28)した。午頃に荷物が着い
て、大きな支那鞄、柳行李、信玄袋、本箱、机、夜具、これを二階に運ぶのには中々骨が折れる。時雄はこの
手伝いに一日社を休むべく余儀なくされたのである。 机を南の窓の下、本箱をその左に、上に鏡やら紅皿や
ら罎やらを順序よく並べた。押入の一方には支那鞄、柳行李、更紗の蒲団夜具の一組を他の一方に入れようと
した時、女の移香が鼻を撲ったので、時雄は変な気になった。 午後二時頃には一室が一先ず整頓した。「ど
うです、此処も居心は悪くないでしょう」時雄は得意そうに笑って、「此処に居て、まア緩くり勉強するです
。本当に実際問題に触れてつまらなく苦労したって為方がないですからねえ」「え……」と芳子は頭を垂れた
。「後で詳しく聞きましょうが、今の中は二人共じっとして勉強していなくては、為方がないですからね」「
え……」と言って、芳子は顔を挙げて、「それで先生、私達もそう思って、今はお互に勉強して、将来に希望
を持って、親の許諾をも得たいと存じておりますの!」「それが好いです。今、余り騒ぐと、人にも親にも誤
解されて了って、折角の真面目な希望も遂げられなくなりますから」「ですから、ね、先生、私は一心になっ
て勉強しようと思いますの。田中もそう申しておりました。それから、先生に是非お目にかかってお礼を申上
げなければ済まないと申しておりましたけれど……よく申上げてくれッて……」「いや……」 時雄は芳子の
言葉の中に、「私共」と複数を遣うのと、もう公然許嫁の約束でもしたかのように言うのとを不快に思った。
まだ、十九か二十の妙齢の処女が、こうした言葉を口にするのを怪しんだ。時雄は時代の推移ったのを今更の
ように感じた。当世の女学生気質のいかに自分等の恋した時代の処女気質と異っているかを思った。勿論、こ
の女学生気質を時雄は主義の上、趣味の上から喜んで見ていたのは事実である。昔のような教育を受けては、
到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬ
cc77f15fbe
、海老茶袴、男と並んで歩くのをはにかむようなものは一人も無くなった。この世の中に、旧式の丸髷、泥鴨
のような歩き振、温順と貞節とより他に何物をも有せぬ細君に甘んじていることは時雄には何よりも情けなか
った。路を行けば、美しい今様の細君を連れての睦じい散歩、友を訪えば夫の席に出て流暢に会話を賑かす若
い細君、ましてその身が骨を折って書いた小説を読もうでもなく、夫の苦悶煩悶には全く風馬牛で、子供さえ
満足に育てれば好いという自分の細君に対すると、どうしても孤独を叫ばざるを得なかった。「寂しき人々」
のヨハンネスと共に、家妻というものの無意味を感ぜずにはいられなかった。これが―この孤独が芳子に由
って破られた。ハイカラな新式な美しい女門下生が、先生! 先生! と世にも豪い人のように渇仰して来る
のに胸を動かさずに誰がおられようか。 最初の一月ほどは時雄の家に仮寓していた。華やかな声、艶やかな
姿、今までの孤独な淋しいかれの生活に、何等の対照! 産褥から出たばかりの細君を助けて、靴下を編む、
襟巻を編む、着物を縫う、子供を遊ばせるという生々した態度、時雄は新婚当座に再び帰ったような気がして
、家門近く来るとそそるように胸が動いた。門をあけると、玄関にはその美しい笑顔、色彩に富んだ姿、夜も
今までは子供と共に細君がいぎたなく眠って了って、六畳の室に徒に明らかな洋燈も、却って侘しさを増すの
種であったが、今は如何に夜更けて帰って来ても、洋燈の下には白い手が巧に編物の針を動かして、膝の上に
色ある毛糸の丸い玉! 賑かな笑声が牛込の奥の小柴垣の中に充ちた。 けれど一月ならずして時雄はこの愛
すべき女弟子をその家に置く事の不可能なのを覚った。従順なる家妻は敢てその事に不服をも唱えず、それら
しい様子も見せなかったが、しかもその気色は次第に悪くなった。限りなき笑声の中に限りなき不安の情が充
ち渡った。妻の里方の親戚間などには現に一問題として講究されつつあることを知った。 時雄は種々に煩悶
した後、細君の姉の家―軍人の未亡人で恩給と裁縫とで暮している姉の家に寄寓させて、其処から麹町の某
女塾に通学させることにした。 それから今回の事件まで一年半の年月が経過した。 その間二度芳子は故郷
を省した。短篇小説を五種、長篇小説を一種、その他美文、新体詩を数十篇作った。某女塾では英語は優等の

283:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:42.90 .net
おゲ 信者の
ップ 皆さーん!
おゲ
ップ のお時間ですよー!

284:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:23:47.74 .net
>>927
にその恋の神聖なるを神懸けて誓った。故郷の親達は、学生の身で、ひそかに男と嵯峨に遊んだのは、既にそ
の精神の堕落であると云ったが、決してそんな汚れた行為はない。互に恋を自覚したのは、寧ろ京都で別れて
からで、東京に帰って来てみると、男から熱烈なる手紙が来ていた。それで始めて将来の約束をしたような次
第で、決して罪を犯したようなことは無いと女は涙を流して言った。時雄は胸に至大の犠牲を感じながらも、
その二人の所謂神聖なる恋の為めに力を尽すべく余儀なくされた。 時雄は悶えざるを得なかった。わが愛す
るものを奪われたということは甚だしくその心を暗くした。元より進んでその女弟子を自分の恋人にする考は
無い。そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会を攫むに於て敢て躊躇すると
ころは無い筈だ。けれどその愛する女弟子、淋しい生活に美しい色彩を添え、限りなき力を添えてくれた芳子
を、突然人の奪い去るに任すに忍びようか。機会を二度まで攫むことは躊躇したが、三度来る機会、四度来る
機会を待って、新なる運命と新なる生活を作りたいとはかれの心の底の底の微かなる願であった。時雄は悶え
た、思い乱れた。妬みと惜しみと悔恨との念が一緒になって旋風のように頭脳の中を回転した。師としての道
義の念もこれに交って、益※(二の字点、1-2-22)炎を熾んにした。わが愛する女の幸福の為めという
犠牲の念も加わった。で、夕暮の膳の上の酒は夥しく量を加えて、泥鴨の如く酔って寝た。 あくる日は日曜
日の雨、裏の森にざんざん降って、時雄の為めには一倍に侘しい。欅の古樹に降りかかる雨の脚、それが実に
長く、限りない空から限りなく降っているとしか思われない。時雄は読書する勇気も無い、筆を執る勇気もな
い。もう秋で冷々と背中の冷たい籐椅子に身を横えつつ、雨の長い脚を見ながら、今回の事件からその身の半
生のことを考えた。かれの経験にはこういう経験が幾度もあった。一歩の相違で運命の唯中に入ることが出来
ずに、いつも圏外に立たせられた淋しい苦悶、その苦しい味をかれは常に味った。文学の側でもそうだ、社会
の側でもそうだ。恋、恋、恋、今になってもこんな消極的な運命に漂わされているかと思うと、その身の意気
5cb0870087
桃割に結って、このすぐ下の家に娘で居た時、渠はその微かな琴の音の髣髴をだに得たいと思ってよくこの八
幡の高台に登った。かの女を得なければ寧そ南洋の植民地に漂泊しようというほどの熱烈な心を抱いて、華表
、長い石階、社殿、俳句の懸行燈、この常夜燈の三字にはよく見入って物を思ったものだ。その下には依然た
る家屋、電車の轟こそおりおり寂寞を破って通るが、その妻の実家の窓には昔と同じように、明かに燈の光が
輝いていた。何たる節操なき心ぞ、僅かに八年の年月を閲したばかりであるのに、こうも変ろうとは誰が思お
う。その桃割姿を丸髷姿にして、楽しく暮したその生活がどうしてこういう荒涼たる生活に変って、どうして
こういう新しい恋を感ずるようになったか。時雄は我ながら時の力の恐ろしいのを痛切に胸に覚えた。けれど
その胸にある現在の事実は不思議にも何等の動揺をも受けなかった。「矛盾でもなんでも為方がない、その矛
盾、その無節操、これが事実だから為方がない、事実! 事実!」 と時雄は胸の中に繰返した。 時雄は堪
え難い自然の力の圧迫に圧せられたもののように、再び傍のロハ台に長い身を横えた。ふと見ると、赤銅のよ
うな色をした光芒の無い大きな月が、お濠の松の上に音も無く昇っていた。その色、その状、その姿がいかに
も侘しい。その侘しさが


285:その身の今の侘しさによく適っていると時雄は思って、また堪え難い哀愁がその胸に 漲り渡った。 酔は既に醒めた。夜露は置始めた。 土手三番町の家の前に来た。 覗いてみたが、芳子の室 に燈火の光が見えぬ。まだ帰って来ぬとみえる。時雄の胸はまた燃えた。この夜、この暗い夜に恋しい男と二 人! 何をしているか解らぬ。こういう常識を欠いた行為を敢てして、神聖なる恋とは何事? 汚れたる行為 の無いのを弁明するとは何事? すぐ家に入ろうとしたが、まだ当人が帰っておらぬのに上っても為方が無い と思って、その前を真直に通り抜けた。女と摩違う度に、芳子ではないかと顔を覗きつつ歩いた。土手の上、 松の木蔭、街道の曲り角、往来の人に怪まるるまで彼方此方を徘徊した。もう九時、十時に近い。いかに夏の 夜であるからと言って、そう遅くまで出歩いている筈が無い。もう帰ったに相違ないと思って、引返して姉の 家に行ったが、矢張りまだ帰っていない。 時雄は家に入った。 奥の六畳に通るや否、「芳さんはどうしま



286:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:24:02.65 .net
>>273
dlsiteの囁きボイスの方がお勧めだぞ
確か100円くらいだから買え

287:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:24:04.33 .net
>>60
語気が烈しいので、細君は口を噤んで了った。少時経ってから、「だから、本当に厭さ、若い娘の身で、小説
家になるなんぞッて、望む本人も本人なら、よこす親達も親達ですからね」「でも、お前は安心したろう」と
言おうとしたが、それは止して、「まア、そんなことはどうでも好いさ、どうせお前達には解らんのだから…
…それよりも酌でもしたらどうだ」 温順な細君は徳利を取上げて、京焼の盃に波々と注ぐ。 時雄は頻りに
酒を呷った。酒でなければこの鬱を遣るに堪えぬといわぬばかりに。三本目に、妻は心配して、「この頃はど
うか為ましたね」「何故?」「酔ってばかりいるじゃありませんか」「酔うということがどうかしたのか」「
そうでしょう、何か気に懸ることがあるからでしょう。芳子さんのことなどはどうでも好いじゃありませんか
」「馬鹿!」 と時雄は一喝した。 細君はそれにも懲りずに、「だって、余り飲んでは毒ですよ、もう好い
加減になさい、また手水場にでも入って寝ると、貴郎は大きいから、私と、お鶴(下女)の手ぐらいではどう
にもなりやしませんからさ」「まア、好いからもう一本」 で、もう一本を半分位飲んだ。もう酔は余程廻っ
たらしい。顔の色は赤銅色に染って眼が少しく据っていた。急に立上って、「おい、帯を出せ!」「何処へい
らっしゃる」「三番町まで行って来る」「姉の処?」「うむ」「およしなさいよ、危ないから」「何アに大丈
夫だ、人の娘を預って監督せずに投遣にしてはおかれん。男がこの東京に来て一緒に歩いたり何かしているの
を見ぬ振をしてはおかれん。田川(姉の家の姓)に預けておいても不安心だから、今日、行って、早かったら
、芳子を家に連れて来る。二階を掃除しておけ」「家に置くんですか、また……」「勿論」 細君は容易に帯
と着物とを出そうともせぬので、「よし、よし、着物を出さんのなら、これで好い」と、白地の単衣に唐縮緬
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
5a16f87a76
手伝いに一日社を休むべく余儀なくされたのである。 机を南の窓の下、本箱をその左に、上に鏡やら紅皿や
ら罎やらを順序よく並べた。押入の一方には支那鞄、柳行李、更紗の蒲団夜具の一組を他の一方に入れようと
した時、女の移香が鼻を撲ったので、時雄は変な気になった。 午後二時頃には一室が一先ず整頓した。「ど
うです、此処も居心は悪くないでしょう」時雄は得意そうに笑って、「此処に居て、まア緩くり勉強するです
。本当に実際問題に触れてつまらなく苦労したって為方がないですからねえ」「え……」と芳子は頭を垂れた
。「後で詳しく聞きましょうが、今の中は二人共じっとして勉強していなくては、為方がないですからね」「
え……」と言って、芳子は顔を挙げて、「それで先生、私達もそう思って、今はお互に勉強して、将来に希望
を持って、親の許諾をも得たいと存じておりますの!」「それが好いです。今、余り騒ぐと、人にも親にも誤
解されて了って、折角の真面目な希望も遂げられなくなりますから」「ですから、ね、先生、私は一心になっ
て勉強しようと思いますの。田中もそう申しておりました。それから、先生に是非お目にかかってお礼を申上
げなければ済まないと申しておりましたけれど……よく申上げてくれッて……」「いや……」 時雄は芳子の
言葉の中に、「私共」と複数を遣うのと、もう公然許嫁の約束でもしたかのように言うのとを不快に思った。
まだ、十九か二十の妙齢の処女が、こうした言葉を口にするのを怪しんだ。時雄は時代の推移ったのを今更の
ように感じた。当世の女学生気質のいかに自分等の恋した時代の処女気質と異っているかを思った。勿論、こ
の女学生気質を時雄は主義の上、趣味の上から喜んで見ていたのは事実である。昔のような教育を受けては、
到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬ
とはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実
行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。 男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着
いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食
事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編ん

288:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:24:20.85 .net
>>435
らっしゃる」「三番町まで行って来る」「姉の処?」「うむ」「およしなさいよ、危ないから」「何アに大丈
夫だ、人の娘を預って監督せずに投遣にしてはおかれん。男がこの東京に来て一緒に歩いたり何かしているの
を見ぬ振をしてはおかれん。田川(姉の家の姓)に預けておいても不安心だから、今日、行って、早かったら
、芳子を家に連れて来る。二階を掃除しておけ」「家に置くんですか、また……」「勿論」 細君は容易に帯
と着物とを出そうともせぬので、「よし、よし、着物を出さんのなら、これで好い」と、白地の単衣に唐縮緬
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
の紳士が庇髪の若い細君を伴れて、神楽坂に散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅した。時雄は激昂した心と泥酔
した身体とに烈しく漂わされて、四辺に見ゆるものが皆な別の世界のもののように思われた。両側の家も動く
よう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に蔽い冠さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、無闇
にぐいぐいと呷ったので、一時に酔が発したのであろう。ふと露西亜の賤民の酒に酔って路傍に倒れて寝てい
るのを思い出した。そしてある友人と露西亜の人間はこれだから豪い、惑溺するなら飽まで惑溺せんければ駄
目だと言ったことを思いだした。馬鹿な! 恋に師弟の別があって堪るものかと口へ出して言った。 中根坂
を上って、士官学校の裏門から佐内坂の上まで来た頃は、日はもうとっぷりと暮れた。白地の浴衣がぞろぞろ
と通る。煙草屋の前に若い細君が出ている。氷屋の暖簾が涼しそうに夕風に靡く。時雄はこの夏の夜景を朧げ
に眼には見ながら、電信柱に突当って倒れそうにしたり、浅い溝に落ちて膝頭をついたり、職工体の男に、「
酔漢奴! しっかり歩け!」と罵られたりした。急に自ら思いついたらしく、坂の上から右に折れて、市ヶ谷
八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞としていた。大きい古い欅の樹と松の樹とが蔽い冠さって
eb773e2b21
言葉の中に、「私共」と複数を遣うのと、もう公然許嫁の約束でもしたかのように言うのとを不快に思った。
まだ、十九か二十の妙齢の処女が、こうした言葉を口にするのを怪しんだ。時雄は時代の推移ったのを今更の
ように感じた。当世の女学生気質のいかに自分等の恋した時代の処女気質と異っているかを思った。勿論、こ
の女学生気質を時雄は主義の上、趣味の上から喜んで見ていたのは事実である。昔のような教育を受けては、
到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬ
とはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実
行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。 男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着
いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食
事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編ん
でくれる。美しい笑顔を絶えず見せる。時雄は芳子を全く占領して、とにかく安心もし満足もした。細君も芳
子に恋人があるのを知ってから、危険の念、不安の念を全く去った。 芳子は恋人に別れるのが辛かった。成
ろうことなら一緒に東京に居て、時々顔をも見、言葉をも交えたかった。けれど今の際それは出来難いことを
知っていた。二年、三年、男が同志社を卒業するまでは、たまさかの雁の音信をたよりに、一心不乱に勉強し
なければならぬと思った。で、午後からは、以前の如く麹町の某英学塾に通い、時雄も小石川の社に通った。
 時雄は夜などおりおり芳子を自分の書斎に呼んで、文学の話、小説の話、それから恋の話をすることがある
。そして芳子の為めにその将来の注意を与えた。その時の態度は公平で、率直で、同情に富んでいて、決して
泥酔して厠に寝たり、地上に横たわったりした人とは思われない。さればと言って、時雄はわざとそういう態
度にするのではない、女に対っている刹那―その愛した女の歓心を得るには、いかなる犠牲も甚だ高価に過
ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する
ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ

289:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:24:38.92 .net
>>244
が来てから時雄さんの様子はまるで変りましたよ。二人で話しているところを見ると、魂は二人ともあくがれ
渡っているようで、それは本当に油断がなりませんよ」と言った。他から見れば、無論そう見えたに相違なか
った。けれど二人は果してそう親密であったか、どうか。 若い女のうかれ勝な心、うかれるかと思えばすぐ
沈む。些細なことにも胸を動かし、つまらぬことにも心を痛める。恋でもない、恋でなくも無いというような
やさしい態度、時雄は絶えず思い惑った。道義の力、習俗の力、機会一度至ればこれを破るのは帛を裂くより
も容易だ。唯、容易に来らぬはこれを破るに至る機会である。 この機会がこの一年の間に尠くとも二度近寄
ったと時雄は自分だけで思った。一度は芳子が厚い封書を寄せて、自分の不束なこと、先生の高恩に報ゆるこ
とが出来ぬから自分は故郷に帰って農夫の妻になって田舎に埋れて了おうということを涙交りに書いた時、一
度は或る夜芳子が一人で留守番をしているところへゆくりなく時雄が行って訪問した時、この二度だ。初めの
時は時雄はその手紙の意味を明かに了解した。その返事をいかに書くべきかに就いて一夜眠らずに懊悩した。
穏かに眠れる妻の顔、それを幾度か窺って自己の良心のいかに麻痺せるかを自ら責めた。そしてあくる朝贈っ
た手紙は、厳乎たる師としての態度であった。二度目はそれから二月ほど経った春の夜、ゆくりなく時雄が訪
問すると、芳子は白粉をつけて、美しい顔をして、火鉢の前にぽつねんとしていた。「どうしたの」と訊くと
、「お留守番ですの」「姉は何処へ行った?」「四谷へ買物に」 と言って、じっと時雄の顔を見る。いかに
も艶かしい。時雄はこの力ある一瞥に意気地なく胸を躍らした。二語三語、普通のことを語り合ったが、その
平凡なる物語が更に平凡でないことを互に思い知ったらしかった。この時、今十五分も一緒に話し合ったなら
ば、どうなったであろうか。女の表情の眼は輝き、言葉は艶めき、態度がいかにも尋常でなかった。「今夜は
大変綺麗にしてますね?」 男は態と軽く出た。「え、先程、湯に入りましたのよ」「大変に白粉が白いから
」「あらまア先生!」と言って、笑って体を斜に嬌態を呈した。 時雄はすぐ帰った。まア好いでしょうと芳
d93105620c
を見ぬ振をしてはおかれん。田川(姉の家の姓)に預けておいても不安心だから、今日、行って、早かったら
、芳子を家に連れて来る。二階を掃除しておけ」「家に置くんですか、また……」「勿論」 細君は容易に帯
と着物とを出そうともせぬので、「よし、よし、着物を出さんのなら、これで好い」と、白地の単衣に唐縮緬
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
の紳士が庇髪の若い細君を伴れて、神楽坂に散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅した。時雄は激昂した心と泥酔
した身体とに烈しく漂わされて、四辺に見ゆるものが皆な別の世界のもののように思われた。両側の家も動く
よう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に蔽い冠さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、無闇
にぐいぐいと呷ったので、一時に酔が発したのであろう。ふと露西亜の賤民の酒に酔って路傍に倒れて寝てい
るのを思い出した。そしてある友人と露西亜の人間はこれだから豪い、惑溺するなら飽まで惑溺せんければ駄
目だと言ったことを思いだした。馬鹿な! 恋に師弟の別があって堪るものかと口へ出して言った。 中根坂
を上って、士官学校の裏門から佐内坂の上まで来た頃は、日はもうとっぷりと暮れた。白地の浴衣がぞろぞろ
と通る。煙草屋の前に若い細君が出ている。氷屋の暖簾が涼しそうに夕風に靡く。時雄はこの夏の夜景を朧げ
に眼には見ながら、電信柱に突当って倒れそうにしたり、浅い溝に落ちて膝頭をついたり、職工体の男に、「
酔漢奴! しっかり歩け!」と罵られたりした。急に自ら思いついたらしく、坂の上から右に折れて、市ヶ谷
八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞としていた。大きい古い欅の樹と松の樹とが蔽い冠さって
、左の隅に珊瑚樹の大きいのが繁っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。時雄はいかにしても苦
しいので、突如その珊瑚樹の蔭に身を躱して、その根本の地上に身を横えた。興奮した心の状態、奔放な情と
悲哀の快感とは、極端までその力を発展して、一方痛切に嫉妬の念に駆られながら、一方冷淡に自己の状態を

290:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:24:55.12 .net
>>72
半身を照して、一巻の書籍に顔を近く寄せると、言うに言われぬ香水のかおり、肉のかおり、女のかおり―
書中の主人公が昔の恋人に「ファースト」を読んで聞かせる段を講釈する時には男の声も烈しく戦えた。「け
れど、もう駄目だ!」 と、渠は再び頭髪をむしった。 渠は名を竹中時雄と謂った。 今より三年前、三人
目の子が細君の腹に出来て、新婚の快楽などはとうに覚め尽した頃であった。世の中の忙しい事業も意味がな
く、一生作に力を尽す勇気もなく、日常の生活―朝起きて、出勤して、午後四時に帰って来て、同じように
細君の顔を見て、飯を食って眠るという単調なる生活につくづく倦き果てて了った。家を引越歩いても面白く
ない、友人と語り合っても面白くない、外国小説を読み渉猟っても満足が出来ぬ。いや、庭樹の繁り、雨の点
滴、花の開落などいう自然の状態さえ、平凡なる生活をして更に平凡ならしめるような気がして、身を置くに
処は無いほど淋しかった。道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った
。 三十四五、実際この頃には誰にでもある煩悶で、この年頃に賤しい女に戯るるものの多いのも、畢竟その
淋しさを医す為めである。世間に妻を離縁するものもこの年頃に多い。 出勤する途上に、毎朝邂逅う美しい
女教師があった。渠はその頃この女に逢うのをその日その日の唯一の楽みとして、その女に就いていろいろな
空想を逞うした。恋が成立って、神楽坂あたりの小待合に連れて行って、人目を忍んで楽しんだらどう……。
細君に知れずに、二人近郊を散歩したらどう……。いや、それどころではない、その時、細君が懐妊しておっ
たから、不図難産して死ぬ、その後にその女を入れるとしてどうであろう。……平気で後妻に入れることが出
来るだろうかどうかなどと考えて歩いた。 神戸の女学院の生徒で、生れは備中の新見町で、渠の著作の崇拝
者で、名を横山芳子という女から崇拝の情を以て充された一通の手紙を受取ったのはその頃であった。竹中古
城と謂えば、美文的小説を書いて、多少世間に聞えておったので、地方から来る崇拝者渇仰者の手紙はこれま
でにも随分多かった。やれ文章を直してくれの、弟子にしてくれのと一々取合ってはいられなかった。だから
23358607dc
平凡なる物語が更に平凡でないことを互に思い知ったらしかった。この時、今十五分も一緒に話し合ったなら
ば、どうなったであろうか。女の表情の眼は輝き、言葉は艶めき、態度がいかにも尋常でなかった。「今夜は
大変綺麗にしてますね?」 男は態と軽く出た。「え、先程、湯に入りましたのよ」「大変に白粉が白いから
」「あらまア先生!」と言って、笑って体を斜に嬌態を呈した。 時雄はすぐ帰った。まア好いでしょうと芳
子はたって留めたが、どうしても帰ると言うので、名残惜しげに月の夜を其処まで送って来た。その白い顔に
は確かにある深い神秘が籠められてあった。 四月に入ってから、芳子は多病で蒼白い顔をして神経過敏に陥
っていた。シュウソカリを余程多量に服してもどうも眠られぬとて困っていた。絶えざる欲望と生殖の力とは
年頃の女を誘うのに躊躇しない。芳子は多く薬に親しんでいた。 四月末に帰国、九月に上京、そして今回の
事件が起った。 今回の事件とは他でも無い。芳子は恋人を得た。そして上京の途次、恋人と相携えて京都嵯
峨に遊んだ。その遊んだ二日の日数が出発と着京との時日に符合せぬので、東京と備中との間に手紙の往復が
あって、詰問した結果は恋愛、神聖なる恋愛、二人は決して罪を犯してはおらぬが、将来は如何にしてもこの
恋を遂げたいとの切なる願望。時雄は芳子の師として、この恋の証人として一面月下氷人の役目を余儀なくさ
せられたのであった。 芳子の恋人は同志社の学生、神戸教会の秀才、田中秀夫、年二十一。 芳子は師の前
にその恋の神聖なるを神懸けて誓った。故郷の親達は、学生の身で、ひそかに男と嵯峨に遊んだのは、既にそ
の精神の堕落であると云ったが、決してそんな汚れた行為はない。互に恋を自覚したのは、寧ろ京都で別れて
からで、東京に帰って来てみると、男から熱烈なる手紙が来ていた。それで始めて将来の約束をしたような次
第で、決して罪を犯したようなことは無いと女は涙を流して言った。時雄は胸に至大の犠牲を感じながらも、
その二人の所謂神聖なる恋の為めに力を尽すべく余儀なくされた。 時雄は悶えざるを得なかった。わが愛す
るものを奪われたということは甚だしくその心を暗くした。元より進んでその女弟子を自分の恋人にする考は
無い。そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会を攫むに於て敢て躊躇すると

291:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:25:12.08 .net
>>256
度は或る夜芳子が一人で留守番をしているところへゆくりなく時雄が行って訪問した時、この二度だ。初めの
時は時雄はその手紙の意味を明かに了解した。その返事をいかに書くべきかに就いて一夜眠らずに懊悩した。
穏かに眠れる妻の顔、それを幾度か窺って自己の良心のいかに麻痺せるかを自ら責めた。そしてあくる朝贈っ
た手紙は、厳乎たる師としての態度であった。二度目はそれから二月ほど経った春の夜、ゆくりなく時雄が訪
問すると、芳子は白粉をつけて、美しい顔をして、火鉢の前にぽつねんとしていた。「どうしたの」と訊くと
、「お留守番ですの」「姉は何処へ行った?」「四谷へ買物に」 と言って、じっと時雄の顔を見る。いかに
も艶かしい。時雄はこの力ある一瞥に意気地なく胸を躍らした。二語三語、普通のことを語り合ったが、その
平凡なる物語が更に平凡でないことを互に思い知ったらしかった。この時、今十五分も一緒に話し合ったなら
ば、どうなったであろうか。女の表情の眼は輝き、言葉は艶めき、態度がいかにも尋常でなかった。「今夜は
大変綺麗にしてますね?」 男は態と軽く出た。「え、先程、湯に入りましたのよ」「大変に白粉が白いから
」「あらまア先生!」と言って、笑って体を斜に嬌態を呈した。 時雄はすぐ帰った。まア好いでしょうと芳
子はたって留めたが、どうしても帰ると言うので、名残惜しげに月の夜を其処まで送って来た。その白い顔に
は確かにある深い神秘が籠められてあった。 四月に入ってから、芳子は多病で蒼白い顔をして神経過敏に陥
っていた。シュウソカリを余程多量に服してもどうも眠られぬとて困っていた。絶えざる欲望と生殖の力とは
年頃の女を誘うのに躊躇しない。芳子は多く薬に親しんでいた。 四月末に帰国、九月に上京、そして今回の
事件が起った。 今回の事件とは他でも無い。芳子は恋人を得た。そして上京の途次、恋人と相携えて京都嵯
峨に遊んだ。その遊んだ二日の日数が出発と着京との時日に符合せぬので、東京と備中との間に手紙の往復が
あって、詰問した結果は恋愛、神聖なる恋愛、二人は決して罪を犯してはおらぬが、将来は如何にしてもこの
恋を遂げたいとの切なる願望。時雄は芳子の師として、この恋の証人として一面月下氷人の役目を余儀なくさ
fc69729e1d
小説を書いて一家を成そうとするのは田中のようなものには出来ぬかも知れねど、同じく将来を進むなら、共
に好む道に携わりたい。どうか暫くこのままにして東京に置いてくれとの頼み。時雄はこの余儀なき頼みをす
げなく却けることは出来なかった。時雄は京都嵯峨に於ける女の行為にその節操を疑ってはいるが、一方には
又その弁解をも信じて、この若い二人の間にはまだそんなことはあるまいと思っていた。自分の青年の経験に
照らしてみても、神聖なる霊の恋は成立っても肉の恋は決してそう容易に実行されるものではない。で、時雄
は惑溺せぬものならば、暫くこのままにしておいて好いと言って、そして縷々として霊の恋愛、肉の恋愛、恋
愛と人生との関係、教育ある新しい女の当に守るべきことなどに就いて、切実にかつ真摯に教訓した。古人が
女子の節操を誡めたのは社会道徳の制裁よりは、寧ろ女子の独立を保護する為であるということ、一度肉を男
子に許せば女子の自由が全く破れるということ、西洋の女子はよくこの間の消息を解しているから、男女交際
をして不都合がないということ、日本の新しい婦人も是非ともそうならなければならぬということなど主なる
教訓の題目であったが、殊に新派の女子ということに就いて痛切に語った。 芳子は低頭いてきいていた。 
時雄は興に乗じて、「そして一体、どうして生活しようというのです?」「少しは準備もして来たんでしょう
、一月位は好いでしょうけれど……」「何か旨い口でもあると好いけれど」と時雄は言った。「実は先生に御
縋り申して、誰も知ってるものがないのに出て参りましたのですから、大層失望しましたのですけれど」「だ
ッて余り突飛だ。一昨日逢ってもそう思ったが、どうもあれでも困るね」 と時雄は笑った。「どうか又御心
配下さるように……この上御心配かけては申訳がありませんけれど」と芳子は縋るようにして顔を赧めた。「
心配せん方が好い、どうかなるよ」 芳子が出て行った後、時雄は急に険しい難かしい顔に成った。「自分に
……自分に、この恋の世話が出来るだろうか」と独りで胸に反問した。「若い鳥は若い鳥でなくては駄目だ。
自分等はもうこの若い鳥を引く美しい羽を持っていない」こう思うと、言うに言われぬ寂しさがひしと胸を襲
った。「妻と子―家庭の快楽だと人は言うが、それに何の意味がある。子供の為めに生存している妻は生存

292:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:25:21.72 .net
シロアンなすりつけられた挙げ句スクリプトまで押し付けられたのか?

293:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:25:28.30 .net
>>439
っていた。シュウソカリを余程多量に服してもどうも眠られぬとて困っていた。絶えざる欲望と生殖の力とは
年頃の女を誘うのに躊躇しない。芳子は多く薬に親しんでいた。 四月末に帰国、九月に上京、そして今回の
事件が起った。 今回の事件とは他でも無い。芳子は恋人を得た。そして上京の途次、恋人と相携えて京都嵯
峨に遊んだ。その遊んだ二日の日数が出発と着京との時日に符合せぬので、東京と備中との間に手紙の往復が
あって、詰問した結果は恋愛、神聖なる恋愛、二人は決して罪を犯してはおらぬが、将来は如何にしてもこの
恋を遂げたいとの切なる願望。時雄は芳子の師として、この恋の証人として一面月下氷人の役目を余儀なくさ
せられたのであった。 芳子の恋人は同志社の学生、神戸教会の秀才、田中秀夫、年二十一。 芳子は師の前
にその恋の神聖なるを神懸けて誓った。故郷の親達は、学生の身で、ひそかに男と嵯峨に遊んだのは、既にそ
の精神の堕落であると云ったが、決してそんな汚れた行為はない。互に恋を自覚したのは、寧ろ京都で別れて
からで、東京に帰って来てみると、男から熱烈なる手紙が来ていた。それで始めて将来の約束をしたような次
第で、決して罪を犯したようなことは無いと女は涙を流して言った。時雄は胸に至大の犠牲を感じながらも、
その二人の所謂神聖なる恋の為めに力を尽すべく余儀なくされた。 時雄は悶えざるを得なかった。わが愛す
るものを奪われたということは甚だしくその心を暗くした。元より進んでその女弟子を自分の恋人にする考は
無い。そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会を攫むに於て敢て躊躇すると
ころは無い筈だ。けれどその愛する女弟子、淋しい生活に美しい色彩を添え、限りなき力を添えてくれた芳子
を、突然人の奪い去るに任すに忍びようか。機会を二度まで攫むことは躊躇したが、三度来る機会、四度来る
機会を待って、新なる運命と新なる生活を作りたいとはかれの心の底の底の微かなる願であった。時雄は悶え
た、思い乱れた。妬みと惜しみと悔恨との念が一緒になって旋風のように頭脳の中を回転した。師としての道
義の念もこれに交って、益※(二の字点、1-2-22)炎を熾んにした。わが愛する女の幸福の為めという
d0bafa4daa
その運命を批判した。熱い主観の情と冷めたい客観の批判とが絡り合せた糸のように固く結び着けられて、一
種異様の心の状態を呈した。 悲しい、実に痛切に悲しい。この悲哀は華やかな青春の悲哀でもなく、単に男
女の恋の上の悲哀でもなく、人生の最奥に秘んでいるある大きな悲哀だ。行く水の流、咲く花の凋落、この自
然の底に蟠れる抵抗すべからざる力に触れては、人間ほど儚い情ないものはない。 汪然として涙は時雄の鬚
面を伝った。 ふとある事が胸に上った。時雄は立上って歩き出した。もう全く夜になった。境内の処々に立
てられた硝子燈は光を放って、その表面の常夜燈という三字がはっきり見える。この常夜燈という三字、これ
を見てかれは胸を衝いた。この三字をかれは曽て深い懊悩を以て見たことは無いだろうか。今の細君が大きい
桃割に結って、このすぐ下の家に娘で居た時、渠はその微かな琴の音の髣髴をだに得たいと思ってよくこの八
幡の高台に登った。かの女を得なければ寧そ南洋の植民地に漂泊しようというほどの熱烈な心を抱いて、華表
、長い石階、社殿、俳句の懸行燈、この常夜燈の三字にはよく見入って物を思ったものだ。その下には依然た
る家屋、電車の轟こそおりおり寂寞を破って通るが、その妻の実家の窓には昔と同じように、明かに燈の光が
輝いていた。何たる節操なき心ぞ、僅かに八年の年月を閲したばかりであるのに、こうも変ろうとは誰が思お
う。その桃割姿を丸髷姿にして、楽しく暮したその生活がどうしてこういう荒涼たる生活に変って、どうして
こういう新しい恋を感ずるようになったか。時雄は我ながら時の力の恐ろしいのを痛切に胸に覚えた。けれど
その胸にある現在の事実は不思議にも何等の動揺をも受けなかった。「矛盾でもなんでも為方がない、その矛
盾、その無節操、これが事実だから為方がない、事実! 事実!」 と時雄は胸の中に繰返した。 時雄は堪
え難い自然の力の圧迫に圧せられたもののように、再び傍のロハ台に長い身を横えた。ふと見ると、赤銅のよ
うな色をした光芒の無い大きな月が、お濠の松の上に音も無く昇っていた。その色、その状、その姿がいかに
も侘しい。その侘しさがその身の今の侘しさによく適っていると時雄は思って、また堪え難い哀愁がその胸に
漲り渡った。 酔は既に醒めた。夜露は置始めた。 土手三番町の家の前に来た。 覗いてみたが、芳子の室

294:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:25:44.59 .net
>>463
八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞としていた。大きい古い欅の樹と松の樹とが蔽い冠さって
、左の隅に珊瑚樹の大きいのが繁っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。時雄はいかにしても苦
しいので、突如その珊瑚樹の蔭に身を躱して、その根本の地上に身を横えた。興奮した心の状態、奔放な情と
悲哀の快感とは、極端までその力を発展して、一方痛切に嫉妬の念に駆られながら、一方冷淡に自己の状態を
客観した。 初めて恋するような熱烈な情は無論なかった。盲目にその運命に従うと謂うよりは、寧ろ冷かに
その運命を批判した。熱い主観の情と冷めたい客観の批判とが絡り合せた糸のように固く結び着けられて、一
種異様の心の状態を呈した。 悲しい、実に痛切に悲しい。この悲哀は華やかな青春の悲哀でもなく、単に男
女の恋の上の悲哀でもなく、人生の最奥に秘んでいるある大きな悲哀だ。行く水の流、咲く花の凋落、この自
然の底に蟠れる抵抗すべからざる力に触れては、人間ほど儚い情ないものはない。 汪然として涙は時雄の鬚
面を伝った。 ふとある事が胸に上った。時雄は立上って歩き出した。もう全く夜になった。境内の処々に立
てられた硝子燈は光を放って、その表面の常夜燈という三字がはっきり見える。この常夜燈という三字、これ
を見てかれは胸を衝いた。この三字をかれは曽て深い懊悩を以て見たことは無いだろうか。今の細君が大きい
桃割に結って、このすぐ下の家に娘で居た時、渠はその微かな琴の音の髣髴をだに得たいと思ってよくこの八
幡の高台に登った。かの女を得なければ寧そ南洋の植民地に漂泊しようというほどの熱烈な心を抱いて、華表
、長い石階、社殿、俳句の懸行燈、この常夜燈の三字にはよく見入って物を思ったものだ。その下には依然た
る家屋、電車の轟こそおりおり寂寞を破って通るが、その妻の実家の窓には昔と同じように、明かに燈の光が
輝いていた。何たる節操なき心ぞ、僅かに八年の年月を閲したばかりであるのに、こうも変ろうとは誰が思お
う。その桃割姿を丸髷姿にして、楽しく暮したその生活がどうしてこういう荒涼たる生活に変って、どうして
こういう新しい恋を感ずるようになったか。時雄は我ながら時の力の恐ろしいのを痛切に胸に覚えた。けれど
47326cc75f
ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する
ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ
た。さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く碧く、日の光は透通った空気に射渡って、夕の影が濃くあ
たりを隈どるようになった。取り残した芋の葉に雨は終日降頻って、八百屋の店には松茸が並べられた。垣の
虫の声は露に衰えて、庭の桐の葉も脆くも落ちた。午前の中の一時間、九時より十時までを、ツルゲネーフの
小説の解釈、芳子は師のかがやく眼の下に、机に斜に坐って、「オン、ゼ、イブ」の長い長い物語に耳を傾け
た。エレネの感情に烈しく意志の強い性格と、その悲しい悲壮なる末路とは如何にかの女を動かしたか。芳子
はエレネの恋物語を自分に引くらべて、その身を小説の中に置いた。恋の運命、恋すべき人に恋する機会がな
く、思いも懸けぬ人にその一生を任した運命、実際芳子の当時の心情そのままであった。須磨の浜で、ゆくり
なく受取った百合の花の一葉の端書、それがこうした運命になろうとは夢にも思い知らなかったのである。 
雨の森、闇の森、月の森に向って、芳子はさまざまにその事を思った。京都の夜汽車、嵯峨の月、膳所に遊ん
だ時には湖水に夕日が美しく射渡って、旅館の中庭に、萩が絵のように咲乱れていた。その二日の遊は実に夢
のようであったと思った。続いてまだその人を恋せぬ前のこと、須磨の海水浴、故郷の山の中の月、病気にな
らぬ以前、殊にその時の煩悶を考えると、頬がおのずから赧くなった。 空想から空想、その空想はいつか長
い手紙となって京都に行った。京都からも殆ど隔日のように厚い厚い封書が届いた。書いても書いても尽くさ
れぬ二人の情―余りその文通の頻繁なのに時雄は芳子の不在を窺って、監督という口実の下にその良心を抑
えて、こっそり机の抽出やら文箱やらをさがした。捜し出した二三通の男の手紙を走り読みに読んだ。 恋人
のするような甘ったるい言葉は到る処に満ちていた。けれど時雄はそれ以上にある秘密を捜し出そうと苦心し
た。接吻の痕、性慾の痕が何処かに顕われておりはせぬか。神聖なる恋以上に二人の間は進歩しておりはせぬ
か、けれど手紙にも解らぬのは恋のまことの消息であった。 一カ月は過ぎた。 ところが、ある日、時雄は

295:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:26:00.00 .net
ゲェップラァ…

296:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:26:00.95 .net
>>399
め、今度も恋しさに堪え兼ねて女の後を追って上京したのかも知れん。手を握ったろう。胸と胸とが相触れた
ろう。人が見ていぬ旅籠屋の二階、何を為ているか解らぬ。汚れる汚れぬのも刹那の間だ。こう思うと時雄は
堪らなくなった。「監督者の責任にも関する!」と腹の中で絶叫した。こうしてはおかれぬ、こういう自由を
精神の定まらぬ女に与えておくことは出来ん。監督せんければならん、保護せんけりゃならん。私共は熱情も
あるが理性がある! 私共とは何だ! 何故私とは書かぬ、何故複数を用いた? 時雄の胸は嵐のように乱れ
た。着いたのは昨日の六時、姉の家に行って聞き糺せば昨夜何時頃に帰ったか解るが、今日はどうした、今は
どうしている? 細君の心を尽した晩餐の膳には、鮪の新鮮な刺身に、青紫蘇の薬味を添えた冷豆腐、それを
味う余裕もないが、一盃は一盃と盞を重ねた。 細君は末の児を寝かして、火鉢の前に来て坐ったが、芳子の
手紙の夫の傍にあるのに眼を附けて、「芳子さん、何て言って来たのです?」 時雄は黙って手紙を投げて遣
った、細君はそれを受取りながら、夫の顔をじろりと見て、暴風の前に来る雲行の甚だ急なのを知った。 細
君は手紙を読終って巻きかえしながら、「出て来たのですね」「うむ」「ずっと東京に居るんでしょうか」「
手紙に書いてあるじゃないか、すぐ帰すッて……」「帰るでしょうか」「そんなこと誰が知るものか」 夫の
語気が烈しいので、細君は口を噤んで了った。少時経っ�


297:トから、「だから、本当に厭さ、若い娘の身で、小説 家になるなんぞッて、望む本人も本人なら、よこす親達も親達ですからね」「でも、お前は安心したろう」と 言おうとしたが、それは止して、「まア、そんなことはどうでも好いさ、どうせお前達には解らんのだから… …それよりも酌でもしたらどうだ」 温順な細君は徳利を取上げて、京焼の盃に波々と注ぐ。 時雄は頻りに 酒を呷った。酒でなければこの鬱を遣るに堪えぬといわぬばかりに。三本目に、妻は心配して、「この頃はど うか為ましたね」「何故?」「酔ってばかりいるじゃありませんか」「酔うということがどうかしたのか」「 そうでしょう、何か気に懸ることがあるからでしょう。芳子さんのことなどはどうでも好いじゃありませんか d7e197c03e 路傍の人目を惹くに十分であった。美しい顔と云うよりは表情のある顔、非常に美しい時もあれば何だか醜い 時もあった。眼に光りがあってそれが非常によく働いた。四五年前までの女は感情を顕わすのに極めて単純で 、怒った容とか笑った容とか、三種、四種位しかその感情を表わすことが出来なかったが、今では情を巧に顔 に表わす女が多くなった。芳子もその一人であると時雄は常に思った。 芳子と時雄との関係は単に師弟の間 柄としては余りに親密であった。この二人の様子を観察したある第三者の女の一人が妻に向って、「芳子さん が来てから時雄さんの様子はまるで変りましたよ。二人で話しているところを見ると、魂は二人ともあくがれ 渡っているようで、それは本当に油断がなりませんよ」と言った。他から見れば、無論そう見えたに相違なか った。けれど二人は果してそう親密であったか、どうか。 若い女のうかれ勝な心、うかれるかと思えばすぐ 沈む。些細なことにも胸を動かし、つまらぬことにも心を痛める。恋でもない、恋でなくも無いというような やさしい態度、時雄は絶えず思い惑った。道義の力、習俗の力、機会一度至ればこれを破るのは帛を裂くより も容易だ。唯、容易に来らぬはこれを破るに至る機会である。 この機会がこの一年の間に尠くとも二度近寄 ったと時雄は自分だけで思った。一度は芳子が厚い封書を寄せて、自分の不束なこと、先生の高恩に報ゆるこ とが出来ぬから自分は故郷に帰って農夫の妻になって田舎に埋れて了おうということを涙交りに書いた時、一 度は或る夜芳子が一人で留守番をしているところへゆくりなく時雄が行って訪問した時、この二度だ。初めの 時は時雄はその手紙の意味を明かに了解した。その返事をいかに書くべきかに就いて一夜眠らずに懊悩した。 穏かに眠れる妻の顔、それを幾度か窺って自己の良心のいかに麻痺せるかを自ら責めた。そしてあくる朝贈っ た手紙は、厳乎たる師としての態度であった。二度目はそれから二月ほど経った春の夜、ゆくりなく時雄が訪 問すると、芳子は白粉をつけて、美しい顔をして、火鉢の前にぽつねんとしていた。「どうしたの」と訊くと 、「お留守番ですの」「姉は何処へ行った?」「四谷へ買物に」 と言って、じっと時雄の顔を見る。いかに も艶かしい。時雄はこの力ある一瞥に意気地なく胸を躍らした。二語三語、普通のことを語り合ったが、その



298:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:26:17.40 .net
>>725
さ。時雄はその姿と相対して、一種状すべからざる満足を胸に感じ、今までの煩悶と苦痛とを半ば忘れて了っ
た。有力な敵があっても、その恋人をだに占領すれば、それで心の安まるのは恋する者の常態である。「大変
に遅くなって了って……」 いかにも遣瀬ないというように微かに弁解した。「中野へ散歩に行ったッて?」
 時雄は突如として問うた。「ええ……」芳子は時雄の顔色をまたちらりと見た。 姉は茶を淹れる。土産の
包を開くと、姉の好きな好きなシュウクリーム。これはマアお旨しいと姉の声。で、暫く一座はそれに気を取
られた。 少時してから、芳子が、「先生、私の帰るのを待っていて下さったの?」「ええ、ええ、一時間半
位待ったのよ」 と姉が傍から言った。 で、その話が出て、都合さえよくば今夜からでも―荷物は後から
でも好いから―一緒に伴れて行く積りで来たということを話した。芳子は下を向いて、点頭いて聞いていた
。無論、その胸には一種の圧迫を感じたに相違ないけれど、芳子の心にしては、絶対に信頼して―今回の恋
のことにも全心を挙げて同情してくれた師の家に行って住むことは別に甚しい苦痛でも無かった。寧ろ以前か
らこの昔風の家に同居しているのを不快に思って、出来るならば、初めのように先生の家にと願っていたので
あるから、今の場合でなければ、かえって大に喜んだのであろうに…… 時雄は一刻も早くその恋人のことを
聞糺したかった。今、その男は何処にいる? 何時京都に帰るか? これは時雄に取っては実に重大な問題で
あった。けれど何も知らぬ姉の前で、打明けて問う訳にも行かぬので、この夜は露ほどもそのことを口に出さ
なかった。一座は平凡な物語に更けた。 今夜にもと時雄の言出したのを、だって、もう十二時だ、明日にし
た方が宜かろうとの姉の注意。で、時雄は一人で牛込に帰ろうとしたが、どうも不安心で為方がないような気
がしたので、夜の更けたのを口実に、姉の家に泊って、明朝早く一緒に行くことにした。 芳子は八畳に、時
雄は六畳に姉と床を並べて寝た。やがて姉の小さい鼾が聞えた。時計は一時をカンと鳴った。八畳では寝つか
れぬと覚しく、おりおり高い長大息の気勢がする。甲武の貨物列車が凄じい地響を立てて、この深夜を独り通
5e13aaee80
つを選ばんければならん。君は君の愛する女を君の為めに山の中に埋もらせるほどエゴイスチックな人間じゃ
ありますまい。君は宗教に従事することが今度の事件の為めに厭になったと謂うが、それは一種の考えで、君
は忍んで、京都に居りさえすれば、万事円満に、二人の間柄も将来希望があるのですから」「よう解っており
ます……」「けれど出来んですか」「どうも済みませんけど……制服も帽子も売ってしもうたで、今更帰るに
も帰れまえんという次第で……」「それじゃ芳子を国に帰すですか」 かれは黙っている。「国に言って遣り
ましょうか」 矢張黙っていた。「私の東京に参りましたのは、そういうことには寧ろ関係しない積でおます
。別段こちらに居りましても、二人の間にはどうという……」「それは君はそう言うでしょう。けれど、それ
では私は監督は出来ん。恋はいつ惑溺するかも解らん」「私はそないなことは無いつもりですけどナ」「誓い
得るですか」「静かに、勉強して行かれさえすれァナ、そないなことありませんけどナ」「だから困るのです
」 こういう会話―要領を得ない会話を繰返して長く相対した。時雄は将来の希望という点、男子の犠牲と
いう点、事件の進行という点からいろいろさまざまに帰国を勧めた。時雄の眼に映じた田中秀夫は、想像した
ような一箇秀麗な丈夫でもなく天才肌の人とも見えなかった。麹町三番町通の安旅人宿、三方壁でしきられた
暑い室に初めて相対した時、先ずかれの身に迫ったのは、基督教に養われた、いやに取澄ました、年に似合わ
ぬ老成な、厭な不愉快な態度であった。京都訛の言葉、色の白い顔、やさしいところはいくらかはあるが、多
い青年の中からこうした男を特に選んだ芳子の気が知れなかった。殊に時雄が最も厭に感じたのは、天真流露
という率直なところが微塵もなく、自己の罪悪にも弱点にも種々の理由を強いてつけて、これを弁解しようと
する形式的態度であった。とは言え、実を言えば、時雄の激しい頭脳には、それがすぐ直覚的に明かに映った
と云うではなく、座敷の隅に置かれた小さい旅鞄や憐れにもしおたれた白地の浴衣などを見ると、青年空想の
昔が思い出されて、こうした恋の為め、煩悶もし、懊悩もしているかと思って、憐憫の情も起らぬではなかっ
た。 この暑い一室に相対して、趺坐をもかかず、二人は尠くとも一時間以上語った。話は遂に要領を得なか

299:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:26:33.67 .net
>>443
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
の紳士が庇髪の若い細君を伴れて、神楽坂に散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅した。時雄は激昂した心と泥酔
した身体とに烈しく漂わされて、四辺に見ゆるものが皆な別の世界のもののように思われた。両側の家も動く
よう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に蔽い冠さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、無闇
にぐいぐいと呷ったので、一時に酔が発したのであろう。ふと露西亜の賤民の酒に酔って路傍に倒れて寝てい
るのを思い出した。そしてある友人と露西亜の人間はこれだから豪い、惑溺するなら飽まで惑溺せんければ駄
目だと言ったことを思いだした。馬鹿な! 恋に師弟の別があって堪るものかと口へ出して言った。 中根坂
を上って、士官学校の裏門から佐内坂の上まで来た頃は、日はもうとっぷりと暮れた。白地の浴衣がぞろぞろ
と通る。煙草屋の前に若い細君が出ている。氷屋の暖簾が涼しそうに夕風に靡く。時雄はこの夏の夜景を朧げ
に眼には見ながら、電信柱に突当って倒れそうにしたり、浅い溝に落ちて膝頭をついたり、職工体の男に、「
酔漢奴! しっかり歩け!」と罵られたりした。急に自ら思いついたらしく、坂の上から右に折れて、市ヶ谷
八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞としていた。大きい古い欅の樹と松の樹とが蔽い冠さって
、左の隅に珊瑚樹の大きいのが繁っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。時雄はいかにしても苦
しいので、突如その珊瑚樹の蔭に身を躱して、その根本の地上に身を横えた。興奮した心の状態、奔放な情と
悲哀の快感とは、極端までその力を発展して、一方痛切に嫉妬の念に駆られながら、一方冷淡に自己の状態を
客観した。 初めて恋するような熱烈な情は無論なかった。盲目にその運命に従うと謂うよりは、寧ろ冷かに
その運命を批判した。熱い主観の情と冷めたい客観の批判とが絡り合せた糸のように固く結び着けられて、一
376f3029bf
とはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実
行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。 男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着
いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食
事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編ん
でくれる。美しい笑顔を絶えず見せる。時雄は芳子を全く占領して、とにかく安心もし満足もした。細君も芳
子に恋人があるのを知ってから、危険の念、不安の念を全く去った。 芳子は恋人に別れるのが辛かった。成
ろうことなら一緒に東京に居て、時々顔をも見、言葉をも交えたかった。けれど今の際それは出来難いことを
知っていた。二年、三年、男が同志社を卒業するまでは、たまさかの雁の音信をたよりに、一心不乱に勉強し
なければならぬと思った。で、午後からは、以前の如く麹町の某英学塾に通い、時雄も小石川の社に通った。
 時雄は夜などおりおり芳子を自分の書斎に呼んで、文学の話、小説の話、それから恋の話をすることがある
。そして芳子の為めにその将来の注意を与えた。その時の態度は公平で、率直で、同情に富んでいて、決して
泥酔して厠に寝たり、地上に横たわったりした人とは思われない。さればと言って、時雄はわざとそういう態
度にするのではない、女に対っている刹那―その愛した女の歓心を得るには、いかなる犠牲も甚だ高価に過
ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する
ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ
た。さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く碧く、日の光は透通った空気に射渡って、夕の影が濃くあ
たりを隈どるようになった。取り残した芋の葉に雨は終日降頻って、八百屋の店には松茸が並べられた。垣の
虫の声は露に衰えて、庭の桐の葉も脆くも落ちた。午前の中の一時間、九時より十時までを、ツルゲネーフの
小説の解釈、芳子は師のかがやく眼の下に、机に斜に坐って、「オン、ゼ、イブ」の長い長い物語に耳を傾け
た。エレネの感情に烈しく意志の強い性格と、その悲しい悲壮なる末路とは如何にかの女を動かしたか。芳子

300:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:26:50.30 .net
>>518
行ったんです」「今朝、ちょっと中野の方にお友達と散歩に行って来ると行って出たきりですがね、もう帰っ
て来るでしょう。何か用?」「え、少し……」と言って、「昨日は帰りは遅かったですか」「いいえ、お友達
を新橋に迎えに行くんだって、四時過に出かけて、八時頃に帰って来ましたよ」 時雄の顔を見て、「どうか
したのですの?」「何アに……けれどねえ姉さん」と時雄の声は改まった。「実は姉さんにおまかせしておい
ても、この間の京都のようなことが又あると困るですから、芳子を私の家において、十分監督しようと思うん
ですがね」「そう、それは好いですよ。本当に芳子さんはああいうしっかり者だから、私みたいな無教育のも
のでは……」「いや、そういう訳でも無いですがね。余り自由にさせ過ぎても、却って当人の為にならんです
から、一つ家に置いて、十分監督してみようと思うんです」「それが好いですよ。本当に、芳子さんにもね…
…何処と悪いことのない、発明な、利口な、今の世には珍らしい方ですけれど、一つ悪いことがあってね、男
の友達と平気で夜歩いたりなんかするんですからね。それさえ止すと好いんだけれどとよく言うのですの。す
ると芳子さんはまた小母さんの旧弊が始まったって、笑っているんだもの。いつかなぞも余り男と一緒に歩い
たり何かするものだから、角の交番でね、不審にしてね、角袖巡査が家の前に立っていたことがあったと云い
ますよ。それはそんなことは無いんだから、構いはしませんけどもね……」「それはいつのことです?」「昨
年の暮でしたかね」「どうもハイカラ過ぎて困る


301:」と時雄は言ったが、時計の針の既に十時半の処を指すのを 見て、「それにしてもどうしたんだろう。若い身空で、こう遅くまで一人で出て歩くと言うのは?」「もう帰 って来ますよ」「こんなことは幾度もあるんですか」「いいえ、滅多にありはしませんよ。夏の夜だから、ま だ宵の口位に思って歩いているんですよ」 姉は話しながら裁縫の針を止めぬのである。前に鴨脚の大きい裁 物板が据えられて、彩絹の裁片や糸や鋏やが順序なく四面に乱れている。女物の美しい色に、洋燈の光が明か に照り渡った。九月中旬の夜は更けて、稍々肌寒く、裏の土手下を甲武の貨物汽車がすさまじい地響を立てて f3748caf83 半身を照して、一巻の書籍に顔を近く寄せると、言うに言われぬ香水のかおり、肉のかおり、女のかおり―― 書中の主人公が昔の恋人に「ファースト」を読んで聞かせる段を講釈する時には男の声も烈しく戦えた。「け れど、もう駄目だ!」 と、渠は再び頭髪をむしった。 渠は名を竹中時雄と謂った。 今より三年前、三人 目の子が細君の腹に出来て、新婚の快楽などはとうに覚め尽した頃であった。世の中の忙しい事業も意味がな く、一生作に力を尽す勇気もなく、日常の生活――朝起きて、出勤して、午後四時に帰って来て、同じように 細君の顔を見て、飯を食って眠るという単調なる生活につくづく倦き果てて了った。家を引越歩いても面白く ない、友人と語り合っても面白くない、外国小説を読み渉猟っても満足が出来ぬ。いや、庭樹の繁り、雨の点 滴、花の開落などいう自然の状態さえ、平凡なる生活をして更に平凡ならしめるような気がして、身を置くに 処は無いほど淋しかった。道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った 。 三十四五、実際この頃には誰にでもある煩悶で、この年頃に賤しい女に戯るるものの多いのも、畢竟その 淋しさを医す為めである。世間に妻を離縁するものもこの年頃に多い。 出勤する途上に、毎朝邂逅う美しい 女教師があった。渠はその頃この女に逢うのをその日その日の唯一の楽みとして、その女に就いていろいろな 空想を逞うした。恋が成立って、神楽坂あたりの小待合に連れて行って、人目を忍んで楽しんだらどう……。 細君に知れずに、二人近郊を散歩したらどう……。いや、それどころではない、その時、細君が懐妊しておっ たから、不図難産して死ぬ、その後にその女を入れるとしてどうであろう。……平気で後妻に入れることが出 来るだろうかどうかなどと考えて歩いた。 神戸の女学院の生徒で、生れは備中の新見町で、渠の著作の崇拝 者で、名を横山芳子という女から崇拝の情を以て充された一通の手紙を受取ったのはその頃であった。竹中古 城と謂えば、美文的小説を書いて、多少世間に聞えておったので、地方から来る崇拝者渇仰者の手紙はこれま でにも随分多かった。やれ文章を直してくれの、弟子にしてくれのと一々取合ってはいられなかった。だから その女の手紙を受取っても、別に返事を出そうとまでその好奇心は募らなかった。けれど同じ人の熱心なる手



302:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:27:06.75 .net
>>646
ろうことなら一緒に東京に居て、時々顔をも見、言葉をも交えたかった。けれど今の際それは出来難いことを
知っていた。二年、三年、男が同志社を卒業するまでは、たまさかの雁の音信をたよりに、一心不乱に勉強し
なければならぬと思った。で、午後からは、以前の如く麹町の某英学塾に通い、時雄も小石川の社に通った。
 時雄は夜などおりおり芳子を自分の書斎に呼んで、文学の話、小説の話、それから恋の話をすることがある
。そして芳子の為めにその将来の注意を与えた。その時の態度は公平で、率直で、同情に富んでいて、決して
泥酔して厠に寝たり、地上に横たわったりした人とは思われない。さればと言って、時雄はわざとそういう態
度にするのではない、女に対っている刹那―その愛した女の歓心を得るには、いかなる犠牲も甚だ高価に過
ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する
ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ
た。さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く碧く、日の光は透通った空気に射渡って、夕の影が濃くあ
たりを隈どるようになった。取り残した芋の葉に雨は終日降頻って、八百屋の店には松茸が並べられた。垣の
虫の声は露に衰えて、庭の桐の葉も脆くも落ちた。午前の中の一時間、九時より十時までを、ツルゲネーフの
小説の解釈、芳子は師のかがやく眼の下に、机に斜に坐って、「オン、ゼ、イブ」の長い長い物語に耳を傾け
た。エレネの感情に烈しく意志の強い性格と、その悲しい悲壮なる末路とは如何にかの女を動かしたか。芳子
はエレネの恋物語を自分に引くらべて、その身を小説の中に置いた。恋の運命、恋すべき人に恋する機会がな
く、思いも懸けぬ人にその一生を任した運命、実際芳子の当時の心情そのままであった。須磨の浜で、ゆくり
なく受取った百合の花の一葉の端書、それがこうした運命になろうとは夢にも思い知らなかったのである。 
雨の森、闇の森、月の森に向って、芳子はさまざまにその事を思った。京都の夜汽車、嵯峨の月、膳所に遊ん
だ時には湖水に夕日が美しく射渡って、旅館の中庭に、萩が絵のように咲乱れていた。その二日の遊は実に夢
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燈を見た。 机の上にはモウパッサンの「死よりも強し」が開かれてあった。 二三日経って後、時雄は例刻
に社から帰って火鉢の前に坐ると、細君が小声で、「今日来てよ」「誰が」「二階の……そら芳子さんの好い
人」 細君は笑った。「そうか……」「今日一時頃、御免なさいと玄関に来た人があるですから、私が出て見
ると、顔の丸い、絣の羽織を着た、白縞の袴を穿いた書生さんが居るじゃありませんか。また、原稿でも持っ
て来た書生さんかと思ったら、横山さんは此方においでですかと言うじゃありませんか。はて、不思議だと思
ったけれど、名を聞きますと、田中……。はア、それでその人だナと思ったんですよ。厭な人ねえ、あんな人
を、あんな書生さんを恋人にしないたッて、いくらも好いのがあるでしょうに。芳子さんは余程物好きね。あ
れじゃとても望みはありませんよ」「それでどうした?」「芳子さんは嬉しいんでしょうけど、何だか極りが
悪そうでしたよ。私がお茶を持って行って上げると、芳子さんは机の前に坐っている。その前にその人が居て
、今まで何か話していたのを急に止して黙ってしまった。私は変だからすぐ下りて来たですがね、……何だか
変ね、……今の若い人はよくああいうことが出来てね、私のその頃には男に見られるのすら恥かしくって恥か
しくって為方がなかったものですのに……」「時代が違うからナ」「いくら時代が違っても、余り新派過ぎる
と思いましたよ。堕落書生と同じですからね。それゃうわべが似ているだけで、心はそんなことはないでしょ
うけれど、何だか変ですよ」「そんなことはどうでも好い。それでどうした?」「お鶴(下女)が行って上げ
ると言うのに、好いと言って、御自分で出かけて、餅菓子と焼芋を買って来て、御馳走してよ。……お鶴も笑
っていましたよ。お湯をさしに上ると、二人でお旨しそうにおさつを食べているところでしたッて……」 時
雄も笑わざるを得なかった。 細君は猶語り続いだ。「そして随分長く高い声で話していましたよ。議論みた
いなことも言って、芳子さんもなかなか負けない様子でした」「そしていつ帰った?」「もう少し以前」「芳
子は居るか」「いいえ、路が分からないから、一緒に其処まで送って行って来るッて出懸けて行ったんですよ
」 時雄は顔を曇らせた。 夕飯を食っていると、裏口から芳子が帰って来た。急いで走って来たと覚しく、

303:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:27:23.31 .net
>>280
iwara!?

304:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:27:23.93 .net
>>82
ない、友人と語り合っても面白くない、外国小説を読み渉猟っても満足が出来ぬ。いや、庭樹の繁り、雨の点
滴、花の開落などいう自然の状態さえ、平凡なる生活をして更に平凡ならしめるような気がして、身を置くに
処は無いほど淋しかった。道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った
。 三十四五、実際この頃には誰にでもある煩悶で、この年頃に賤しい女に戯るるものの多いのも、畢竟その
淋しさを医す為めである。世間に妻を離縁するものもこの年頃に多い。 出勤する途上に、毎朝邂逅う美しい
女教師があった。渠はその頃この女に逢うのをその日その日の唯一の楽みとして、その女に就いていろいろな
空想を逞うした。恋が成立って、神楽坂あたりの小待合に連れて行って、人目を忍んで楽しんだらどう……。
細君に知れずに、二人近郊を散歩したらどう……。いや、それどころではない、その時、細君が懐妊しておっ
たから、不図難産して死ぬ、その後にその女を入れるとしてどうであろう。……平気で後妻に入れることが出
来るだろうかどうかなどと考えて歩いた。 神戸の女学院の生徒で、生れは備中の新見町で、渠の著作の崇拝
者で、名を横山芳子という女から崇拝の情を以て充された一通の手紙を受取ったのはその頃であった。竹中古
城と謂えば、美文的小説を書いて、多少世間に聞えておったので、地方から来る崇拝者渇仰者の手紙はこれま
でにも随分多かった。やれ文章を直してくれの、弟子にしてくれのと一々取合ってはいられなかった。だから
その女の手紙を受取っても、別に返事を出そうとまでその好奇心は募らなかった。けれど同じ人の熱心なる手
紙を三通まで貰っては、さすがの時雄も注意をせずにはいられなかった。年は十九だそうだが、手紙の文句か
ら推して、その表情の巧みなのは驚くべきほどで、いかなることがあっても先生の門下生になって、一生文学
に従事したいとの切なる願望。文字は走り書のすらすらした字で、余程ハイカラの女らしい。返事を書いたの
は、例の工場の二階の室で、その日は毎日の課業の地理を二枚書いて止して、長い数尺に余る手紙を芳子に送
った。その手紙には女の身として文学に携わることの不心得、女は生理的に母たるの義務を尽さなければなら
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到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬ
とはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実
行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。 男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着
いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食
事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編ん
でくれる。美しい笑顔を絶えず見せる。時雄は芳子を全く占領して、とにかく安心もし満足もした。細君も芳
子に恋人があるのを知ってから、危険の念、不安の念を全く去った。 芳子は恋人に別れるのが辛かった。成
ろうことなら一緒に東京に居て、時々顔をも見、言葉をも交えたかった。けれど今の際それは出来難いことを
知っていた。二年、三年、男が同志社を卒業するまでは、たまさかの雁の音信をたよりに、一心不乱に勉強し
なければならぬと思った。で、午後からは、以前の如く麹町の某英学塾に通い、時雄も小石川の社に通った。
 時雄は夜などおりおり芳子を自分の書斎に呼んで、文学の話、小説の話、それから恋の話をすることがある
。そして芳子の為めにその将来の注意を与えた。その時の態度は公平で、率直で、同情に富んでいて、決して
泥酔して厠に寝たり、地上に横たわったりした人とは思われない。さればと言って、時雄はわざとそういう態
度にするのではない、女に対っている刹那―その愛した女の歓心を得るには、いかなる犠牲も甚だ高価に過
ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する
ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ
た。さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く碧く、日の光は透通った空気に射渡って、夕の影が濃くあ
たりを隈どるようになった。取り残した芋の葉に雨は終日降頻って、八百屋の店には松茸が並べられた。垣の
虫の声は露に衰えて、庭の桐の葉も脆くも落ちた。午前の中の一時間、九時より十時までを、ツルゲネーフの
小説の解釈、芳子は師のかがやく眼の下に、机に斜に坐って、「オン、ゼ、イブ」の長い長い物語に耳を傾け

305:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:27:40.54 .net
>>259
穏かに眠れる妻の顔、それを幾度か窺って自己の良心のいかに麻痺せるかを自ら責めた。そしてあくる朝贈っ
た手紙は、厳乎たる師としての態度であった。二度目はそれから二月ほど経った春の夜、ゆくりなく時雄が訪
問すると、芳子は白粉をつけて、美しい顔をして、火鉢の前にぽつねんとしていた。「どうしたの」と訊くと
、「お留守番ですの」「姉は何処へ行った?」「四谷へ買物に」 と言って、じっと時雄の顔を見る。いかに
も艶かしい。時雄はこの力ある一瞥に意気地なく胸を躍らした。二語三語、普通のことを語り合ったが、その
平凡なる物語が更に平凡でないことを互に思い知ったらしかった。この時、今十五分も一緒に話し合ったなら
ば、どうなったであろうか。女の表情の眼は輝き、言葉は艶めき、態度がいかにも尋常でなかった。「今夜は
大変綺麗にしてますね?」 男は態と軽く出た。「え、先程、湯に入りましたのよ」「大変に白粉が白いから
」「あらまア先生!」と言って、笑って体を斜に嬌態を呈した。 時雄はすぐ帰った。まア好いでしょうと芳
子はたって留めたが、どうしても帰ると言うので、名残惜しげに月の夜を其処まで送って来た。その白い顔に
は確かにある深い神秘が籠められてあった。 四月に入ってから、芳子は多病で蒼白い顔をして神経過敏に陥
っていた。シュウソカリを余程多量に服してもどうも眠られぬとて困っていた。絶えざる欲望と生殖の力とは
年頃の女を誘うのに躊躇しない。芳子は多く薬に親しんでいた。 四月末に帰国、九月に上京、そして今回の
事件が起った。 今回の事件とは他でも無い。芳子は恋人を得た。そして上京の途次、恋人と相携えて京都嵯
峨に遊んだ。その遊んだ二日の日数が出発と着京との時日に符合せぬので、東京と備中との間に手紙の往復が
あって、詰問した結果は恋愛、神聖なる恋愛、二人は決して罪を犯してはおらぬが、将来は如何にしてもこの
恋を遂げたいとの切なる願望。時雄は芳子の師として、この恋の証人として一面月下氷人の役目を余儀なくさ
せられたのであった。 芳子の恋人は同志社の学生、神戸教会の秀才、田中秀夫、年二十一。 芳子は師の前
にその恋の神聖なるを神懸けて誓った。故郷の親達は、学生の身で、ひそかに男と嵯峨に遊んだのは、既にそ
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からで、東京に帰って来てみると、男から熱烈なる手紙が来ていた。それで始めて将来の約束をしたような次
第で、決して罪を犯したようなことは無いと女は涙を流して言った。時雄は胸に至大の犠牲を感じながらも、
その二人の所謂神聖なる恋の為めに力を尽すべく余儀なくされた。 時雄は悶えざるを得なかった。わが愛す
るものを奪われたということは甚だしくその心を暗くした。元より進んでその女弟子を自分の恋人にする考は
無い。そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会を攫むに於て敢て躊躇すると
ころは無い筈だ。けれどその愛する女弟子、淋しい生活に美しい色彩を添え、限りなき力を添えてくれた芳子
を、突然人の奪い去るに任すに忍びようか。機会を二度まで攫むことは躊躇したが、三度来る機会、四度来る
機会を待って、新なる運命と新なる生活を作りたいとはかれの心の底の底の微かなる願であった。時雄は悶え
た、思い乱れた。妬みと惜しみと悔恨との念が一緒になって旋風のように頭脳の中を回転した。師としての道
義の念もこれに交って、益※(二の字点、1-2-22)炎を熾んにした。わが愛する女の幸福の為めという
犠牲の念も加わった。で、夕暮の膳の上の酒は夥しく量を加えて、泥鴨の如く酔って寝た。 あくる日は日曜
日の雨、裏の森にざんざん降って、時雄の為めには一倍に侘しい。欅の古樹に降りかかる雨の脚、それが実に
長く、限りない空から限りなく降っているとしか思われない。時雄は読書する勇気も無い、筆を執る勇気もな
い。もう秋で冷々と背中の冷たい籐椅子に身を横えつつ、雨の長い脚を見ながら、今回の事件からその身の半
生のことを考えた。かれの経験にはこういう経験が幾度もあった。一歩の相違で運命の唯中に入ることが出来
ずに、いつも圏外に立たせられた淋しい苦悶、その苦しい味をかれは常に味った。文学の側でもそうだ、社会
の側でもそうだ。恋、恋、恋、今になってもこんな消極的な運命に漂わされているかと思うと、その身の意気
地なしと運命のつたないことがひしひしと胸に迫った。ツルゲネーフのいわゆる Superfluous
man ! だと思って、その主人公の儚い一生を胸に繰返した。 寂寥に堪えず、午から酒を飲むと言出し
た。細君の支度の為ようが遅いのでぶつぶつ言っていたが、膳に載せられた肴がまずいので、遂に癇癪を起し

306:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:27:57.96 .net
>>520
行ったんです」「今朝、ちょっと中野の方にお友達と散歩に行って来ると行って出たきりですがね、もう帰っ
て来るでしょう。何か用?」「え、少し……」と言って、「昨日は帰りは遅かったですか」「いいえ、お友達
を新橋に迎えに行くんだって、四時過に出かけて、八時頃に帰って来ましたよ」 時雄の顔を見て、「どうか
したのですの?」「何アに……けれどねえ姉さん」と時雄の声は改まった。「実は姉さんにおまかせしておい
ても、この間の京都のようなことが又あると困るですから、芳子を私の家において、十分監督しようと思うん
ですがね」「そう、それは好いですよ。本当に芳子さんはああいうしっかり者だから、私みたいな無教育のも
のでは……」「いや、そういう訳でも無いですがね。余り自由にさせ過ぎても、却って当人の為にならんです
から、一つ家に置いて、十分監督してみようと思うんです」「それが好いですよ。本当に、芳子さんにもね…
…何処と悪いことのない、発明な、利口な、今の世には珍らしい方ですけれど、一つ悪いことがあってね、男
の友達と平気で夜歩いたりなんかするんですからね。それさえ止すと好いんだけれどとよく言うのですの。す
ると芳子さんはまた小母さんの旧弊が始まったって、笑っているんだもの。いつかなぞも余り男と一緒に歩い
たり何かするものだから、角の交番でね、不審にしてね、角袖巡査が家の前に立っていたことがあったと云い
ますよ。それはそんなことは無いんだから、構いはしませんけどもね……」「それはいつのことです?」「昨
年の暮でしたかね」「どうもハイカラ過ぎて困る」と時雄は言ったが、時計の針の既に十時半の処を指すのを
見て、「それにしてもどうしたんだろう。若い身空で、こう遅くまで一人で出て歩くと言うのは?」「もう帰
って来ますよ」「こんなことは幾度もあるんですか」「いいえ、滅多にありはしませんよ。夏の夜だから、ま
だ宵の口位に思って歩いているんですよ」 姉は話しながら裁縫の針を止めぬのである。前に鴨脚の大きい裁
物板が据えられて、彩絹の裁片や糸や鋏やが順序なく四面に乱れている。女物の美しい色に、洋燈の光が明か
に照り渡った。九月中旬の夜は更けて、稍々肌寒く、裏の土手下を甲武の貨物汽車がすさまじい地響を立てて
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書中の主人公が昔の恋人に「ファースト」を読んで聞かせる段を講釈する時には男の声も烈しく戦えた。「け
れど、もう駄目だ!」 と、渠は再び頭髪をむしった。 渠は名を竹中時雄と謂った。 今より三年前、三人
目の子が細君の腹に出来て、新婚の快楽などはとうに覚め尽した頃であった。世の中の忙しい事業も意味がな
く、一生作に力を尽す勇気もなく、日常の生活―朝起きて、出勤して、午後四時に帰って来て、同じように
細君の顔を見て、飯を食って眠るという単調なる生活につくづく倦き果てて了った。家を引越歩いても面白く
ない、友人と語り合っても面白くない、外国小説を読み渉猟っても満足が出来ぬ。いや、庭樹の繁り、雨の点
滴、花の開落などいう自然の状態さえ、平凡なる生活をして更に平凡ならしめるような気がして、身を置くに
処は無いほど淋しかった。道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った
。 三十四五、実際この頃には誰にでもある煩悶で、この年頃に賤しい女に戯るるものの多いのも、畢竟その
淋しさを医す為めである。世間に妻を離縁するものもこの年頃に多い。 出勤する途上に、毎朝邂逅う美しい
女教師があった。渠はその頃この女に逢うのをその日その日の唯一の楽みとして、その女に就いていろいろな
空想を逞うした。恋が成立って、神楽坂あたりの小待合に連れて行って、人目を忍んで楽しんだらどう……。
細君に知れずに、二人近郊を散歩したらどう……。いや、それどころではない、その時、細君が懐妊しておっ
たから、不図難産して死ぬ、その後にその女を入れるとしてどうであろう。……平気で後妻に入れることが出
来るだろうかどうかなどと考えて歩いた。 神戸の女学院の生徒で、生れは備中の新見町で、渠の著作の崇拝
者で、名を横山芳子という女から崇拝の情を以て充された一通の手紙を受取ったのはその頃であった。竹中古
城と謂えば、美文的小説を書いて、多少世間に聞えておったので、地方から来る崇拝者渇仰者の手紙はこれま
でにも随分多かった。やれ文章を直してくれの、弟子にしてくれのと一々取合ってはいられなかった。だから
その女の手紙を受取っても、別に返事を出そうとまでその好奇心は募らなかった。けれど同じ人の熱心なる手
紙を三通まで貰っては、さすがの時雄も注意をせずにはいられなかった。年は十九だそうだが、手紙の文句か

307:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:28:14.72 .net
>>400
ろう。人が見ていぬ旅籠屋の二階、何を為ているか解らぬ。汚れる汚れぬのも刹那の間だ。こう思うと時雄は
堪らなくなった。「監督者の責任にも関する!」と腹の中で絶叫した。こうしてはおかれぬ、こういう自由を
精神の定まらぬ女に与えておくことは出来ん。監督せんければならん、保護せんけりゃならん。私共は熱情も
あるが理性がある! 私共とは何だ! 何故私とは書かぬ、何故複数を用いた? 時雄の胸は嵐のように乱れ
た。着いたのは昨日の六時、姉の家に行って聞き糺せば昨夜何時頃に帰ったか解るが、今日はどうした、今は
どうしている? 細君の心を尽した晩餐の膳には、鮪の新鮮な刺身に、青紫蘇の薬味を添えた冷豆腐、それを
味う余裕もないが、一盃は一盃と盞を重ねた。 細君は末の児を寝かして、火鉢の前に来て坐ったが、芳子の
手紙の夫の傍にあるのに眼を附けて、「芳子さん、何て言って来たのです?」 時雄は黙って手紙を投げて遣
った、細君はそれを受取りながら、夫の顔をじろりと見て、暴風の前に来る雲行の甚だ急なのを知った。 細
君は手紙を読終って巻きかえしながら、「出て来たのですね」「うむ」「ずっと東京に居るんでしょうか」「
手紙に書いてあるじゃないか、すぐ帰すッて……」「帰るでしょうか」「そんなこと誰が知るものか」 夫の
語気が烈しいので、細君は口を噤んで了った。少時経ってから、「だから、本当に厭さ、若い娘の身で、小説
家になるなんぞッて、望む本人も本人なら、よこす親達も親達ですからね」「でも、お前は安心したろう」と
言おうとしたが、それは止して、「まア、そんなことはどうでも好いさ、どうせお前達には解らんのだから…
…それよりも酌でもしたらどうだ」 温順な細君は徳利を取上げて、京焼の盃に波々と注ぐ。 時雄は頻りに
酒を呷った。酒でなければこの鬱を遣るに堪えぬといわぬばかりに。三本目に、妻は心配して、「この頃はど
うか為ましたね」「何故?」「酔ってばかりいるじゃありませんか」「酔うということがどうかしたのか」「
そうでしょう、何か気に懸ることがあるからでしょう。芳子さんのことなどはどうでも好いじゃありませんか
」「馬鹿!」 と時雄は一喝した。 細君はそれにも懲りずに、「だって、余り飲んでは毒ですよ、もう好い
a62a3bf10a
て、胸に苛々する思を畳みながら、黙して歩いた。 佐内坂を登り了ると、人通りが少くなった。時雄はふと
振返って、「それでどうしたの?」と突如として訊ねた。「え?」 反問した芳子は顔を曇らせた。「昨日の
話さ、まだ居るのかね」「今夜の六時の急行で帰ります」「それじゃ送って行かなくってはいけないじゃない
か」「いいえ、もう好いんですの」 これで話は途絶えて、二人は黙って歩いた。 矢来町の時雄の宅、今ま
で物置にしておいた二階の三畳と六畳、これを綺麗に掃除して、芳子の住居とした。久しく物置―子供の遊
び場にしておいたので、塵埃が山のように積っていたが、箒をかけ雑巾をかけ、雨のしみの附いた破れた障子
を貼り更えると、こうも変るものかと思われるほど明るくなって、裏の酒井の墓塋の大樹の繁茂が心地よき空
翠をその一室に漲らした。隣家の葡萄棚、打捨てて手を入れようともせぬ庭の雑草の中に美人草の美しく交っ
て咲いているのも今更に目につく。時雄はさる画家の描いた朝顔の幅を選んで床に懸け、懸花瓶には後れ咲の
薔薇の花を※(「插」のつくりの縦棒が下に突き抜ける、第4水準2-13-28)した。午頃に荷物が着い
て、大きな支那鞄、柳行李、信玄袋、本箱、机、夜具、これを二階に運ぶのには中々骨が折れる。時雄はこの
手伝いに一日社を休むべく余儀なくされたのである。 机を南の窓の下、本箱をその左に、上に鏡やら紅皿や
ら罎やらを順序よく並べた。押入の一方には支那鞄、柳行李、更紗の蒲団夜具の一組を他の一方に入れようと
した時、女の移香が鼻を撲ったので、時雄は変な気になった。 午後二時頃には一室が一先ず整頓した。「ど
うです、此処も居心は悪くないでしょう」時雄は得意そうに笑って、「此処に居て、まア緩くり勉強するです
。本当に実際問題に触れてつまらなく苦労したって為方がないですからねえ」「え……」と芳子は頭を垂れた
。「後で詳しく聞きましょうが、今の中は二人共じっとして勉強していなくては、為方がないですからね」「
え……」と言って、芳子は顔を挙げて、「それで先生、私達もそう思って、今はお互に勉強して、将来に希望
を持って、親の許諾をも得たいと存じておりますの!」「それが好いです。今、余り騒ぐと、人にも親にも誤
解されて了って、折角の真面目な希望も遂げられなくなりますから」「ですから、ね、先生、私は一心になっ

308:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:28:22.97 .net
ロボ子はやくiwaraデビューしろ

309:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 17:28:31.28 .net
>>330
思議なだらだらした節で、十年も前にはやった幼稚な新体詩を歌い出した。君が門辺をさまよふは巷の塵を吹
き立つる嵐のみとやおぼすらん。その嵐よりいやあれにその塵よりも乱れたる恋のかばねを暁の 歌を半ばに
して



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