【バーチャルYoutuber】湊あくあアンチスレ#362【ホロライブ】at STREAMING
【バーチャルYoutuber】湊あくあアンチスレ#362【ホロライブ】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:04:47.54 .net
くこ?

3:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:05:16.56 .net
マスターブチギレ
URLリンク(twitter.com)
(deleted an unsolicited ad)

4:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:06:03.12 .net
ほちょ?

5:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:07:07.84 .net
もうありありスレ立てろよ

6:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:07:54.28 .net
通知、無し!w
あくあ、憤死!w

7:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:08:04.75 .net
あくあ~😭
URLリンク(youtu.be)


8:1M



9:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:08:17.73 .net
はあとんガイジ臭くて嫌い

10:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:08:32.76 .net
>>5
あるぞ
スレリンク(streaming板)

11:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:08:54.74 .net
通知バグ一生もんになりそうだな
チャンネル作り直せ

12:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:08:55.94 .net
新スレ立たない
ここ?ここでいい?

13:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:09:11.48 .net
>>11
くこやで

14:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:09:43.42 .net
偽装止めてて草ァ!w

15:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:10:58.60 .net
あくあ 1500
あくあ~😭

16:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:11:19.02 .net
>>11
URLリンク(i.imgur.com)

17:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:11:32.30 .net
プンレクのlolの視聴回数17000だしようつべに拘る必要なくなってきそうだな

18:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:12:02.69 .net
プラットフォーム変えるならプンレクよりツイキャスに行け

19:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:12:22.54 .net
>>3
年齢制限ってAIが自動でやるやつじゃないの?
つべと裁判するんか?

20:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:12:27.92 .net
ツイッチだったわ

21:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:13:07.03 .net
>>16
あれはプンレクトップにのってたから視聴数のびただけだぞ

22:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:13:15.17 .net
はねるも同じバグなってるな

23:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:13:25.05 .net
オワコンあくあ~

24:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:13:42.66 .net
パトラ 2000
ハニストのトップですら2000だしあくあ3000無理そう

25:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:13:45.14 .net
はねるあくあメアリはつべ放棄しろ!

26:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:13:48.59 .net
>>20
ホロはエール多いから皆トップページに載るぞ

27:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:15:05.15 .net
~本日(1/13)の配信予定~
15:00~湊あくあ you アイワナ
19:00~湊あくあ you ギャルゲ
24:00~湊あくあ you 未定
#ホロジュール

28:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:15:15.08 .net
連投してる奴のIPさえ分かればな

29:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:16:13.70 .net
>>27
前に有り有り連投してたぞ

30:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:16:51.80 .net
魔除け貼っとくぞ
URLリンク(i.imgur.com)

31:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:17:17.95 .net
>>29
ガチグロで吐いた
訴訟

32:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:17:45.06 .net
モルクラ見てるわ

33:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:17:56.52 .net
パトラですら2200だしバグの効果やばすぎだろ

34:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:18:40.58 .net
クルークルー敗北者

35:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:18:59.98 .net
パトラ通知有りでそれだろ?
ざっこ

36:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:19:45.07 .net
あくあ 2000
あくあ~😭

37:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:19:51.12 .net
それほど適当に見てる層が多いんだな
通知は無いものとして動いたほうがよさそう

38:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:20:20.28 .net
>>28
ワッチョイとIDじゃ何も出来んだろ

39:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:20:38.89 .net
まさかパトラを狩れるのか?

40:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:21:23.56 .net
>>32
あの~パトラバグってないんだけど

41:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:21:36.56 .net
>>23
あっちはシリーズものだからあくあの方が伸びるんじゃね

42:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:22:11.78 .net
シリーズ物のデバフってすげぇな

43:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:22:12.55 .net
パトラッ!パトラッ!パトラッ!

44:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:22:28.33 .net
パトラ最強!
パトラ最強!
パトラ最強!

45:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:22:29.91 .net
パトラなにやってんのかと思ったらサイコブレイクか
そりゃ伸びんわ

46:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:22:44.20 .net
途中からなんて入りづらいしな

47:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:23:10.51 .net
ハニ信が予防線貼りに来たな

48:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:24:16.67 .net
クルーはバグが~裏が~っていつも言ってるくせにロリコンとか他のやつが言い訳するとすぐ怒るんだ��

49:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:25:19.33 .net
あくあ 2200
あくあ~😭

50:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:25:28.01 .net
あくあ本当にバグってるのか?この集まり方はいつも通りな気がするが

51:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:25:37.28 .net
>>47
やめたれw

52:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:25:54.44 .net
>>47
たれw

53:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:26:52.07 .net
バグがあるって分かったら流石に学習して通知に頼らず放送見に行くだろ

54:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:27:30.64 .net
なんかどの放送も同接荒ぶってない?つべサーバーぶっ壊れてるだろこれ

55:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:27:35.96 .net
ハニストエースとホロ2期エースの頂上決戦が熱い

56:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:28:54.66 .net
あくあ2365
パトラ2500
あくあ~

57:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:28:55.45 .net
最近YouTubeバグばっかだしやっぱ時代はビリビリなんだよな

58:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:29:46.20 .net
パトラ、ドル部のたまとフブキあくあに負けるとか雑魚すぎだろ

59:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:31:42.69 .net
狐のこんこんカラオケ部屋が
狐のこんこん相撲部屋に見えた

60:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:32:50.07 .net
大会に出たあくあを麻雀からはぶるきーつね

61:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:33:03.25 .net
なとなと最強!
URLリンク(i.imgur.com)

62:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:34:03.61 .net
アイワナずっと同じボス相手に戦ってるのを2400人がみてるとか狂気に近いな
しかもテスト配信から続けている奴もいて草

63:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:34:15.71 .net
あくあもしかして本当に煙たがられてるのですか?

64:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:34:20.41 .net
案外ちょこと皮余に対するクソみたいなマシュマロが親方に飛んできてるのかもしれない
果てしなく迷惑な話だが

65:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:34:47.21 .net
>>60
かわいい😍

66:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:35:29.82 .net
モルルも2500なんだぁが

67:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:35:40.01 .net
>>61
3割以上は中華だぞ
コメントが少なすぎる

68:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:35:52.66 .net
親方がテコ入れはあるな
むしろそうじゃなきゃ面倒なことしないだろ

69:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:36:06.78 .net
ウエンツ時代のなとりってほんと不細工だったよな
3D化すればアキもワンチャンありそう

70:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:36:15.99 .net
なとり5500
なとなと~😍😍😍😍😍😍😍😍😍😍

71:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:36:35.08 .net
ないよ

72:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:36:54.48 .net
登録+8であくあが中国産なのわかっちゃったからな

73:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:36:54.96 .net
>>68
3D化しないぞ

74:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:37:17.41 .net
モデル変わってからなとりなとり言い出す辺り結局見た目なんだろうな

75:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:37:48.26 .net
親方とミオの稽古か

76:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:38:06.37 .net
URLリンク(pbs.twimg.com)
あくあ~😭

77:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:38:09.92 .net
>>73
たまとなとりの2D時代の不細工っぷりはガチだぞ
比べたら美女とブス女

78:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:38:11.45 .net
今見たらあくあ-51で大草原

79:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:38:28.44 .net
あくあ+8棒で他所に喧嘩売りに行ってきていいか?

80:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:38:56.03 .net
>>78
エンタムの半数を殴れるぞ

81:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:39:23.26 .net
ええぞ
最終兵器歪なちょこ棒あるしな

82:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:39:26.66 .net
あくあ修正されたか
-51おめ

83:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:39:34.06 .net
なとり5500人見てるのに赤スパチャないやん
それとも任天堂だからスパチャきってるの?

84:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:39:43.95 .net
中華勢がどんな配信でも見ちゃうとあくあ自信良い配信悪い配信の判断が付かなくなりそう

85:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:40:13.01 .net
棒で殴るならちょこの現状をどうにかしてくれよ...

86:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:40:25.43 .net
あくあ棒で殴りにいった後にカウンターで


87:ちょこ棒で殴れ



88:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:40:52.39 .net
あくあの放送中国人しか見てなかったのか
まぁつまらんしなぁ

89:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:40:54.68 .net
チョコバー同接400!

90:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:41:10.33 .net
>>84
無理難題やめろ

91:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:41:10.54 .net
ちょこは3D化でMMDになってiwara送りしてほしいから
このまま突き進んでほしい

92:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:41:23.77 .net
-51うおおおおおお
あくあ最強!あくあ最強!中国兄謝謝!w

93:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:41:56.50 .net
パトラ最弱のゲーム実況に勝てないとかやめてくれ

94:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:41:59.71 .net
これ消えてないだけであくあの登録5000~10000中華垢だろ

95:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:42:41.77 .net
ちょこは3Dでどうなるかだよな
まぁどうにもならんだろうけど

96:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:43:42.03 .net
3Dもらっても同接は増えないってドル兄さんが教えてくれたろ

97:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:44:04.63 .net
イヴちゃんみたいに手コキ耳舐めやらんとね

98:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:44:17.07 .net
めあが中華を招き入れてV業界を崩壊させた説がツボった

99:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:45:14.19 .net
ちょこ自身が考えを改めないと正直登録だけ増えるだけでどんどんひどくなってくだけだと思う

100:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:45:42.60 .net
ビリビリの人気値9万行ってるのにようつべでもみてるとか
中華勢って2窓してるのか?

101:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:45:59.59 .net
3d化したとこでasmr以外客来ないから変わらん

102:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:46:50.95 .net
ちょこよりやばいのがシオンはあとまつり

103:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:47:15.38 .net
湊アクア最強伝説

104:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:47:18.00 .net
最近シオンのヘラティブ多くて草

105:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:48:37.45 .net
>>100
ヘラティブヘラキャス三銃士を連れてきたよ

106:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:48:42.31 .net
>>101
最強だね
URLリンク(i.imgur.com)

107:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:50:25.18 .net
>>98
ビリビリで見れるのにvpn通した低速回線でわざわざ見ないだろ

108:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:50:33.92 .net
ちょこのASMRも被ってるとアカンのがな

109:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:51:49.15 .net
あくあ最強すぎてマイナスになってるね

110:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:52:35.59 .net
>>106
そりゃasmrうまいやつと被ってたらそっち行くだろ

111:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:53:06.26 .net
ニコニコ見ねぇって奴日本でもいるしビリビリ見ねぇって奴向こうにもいるだろ

112:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:53:07.59 .net
ちょこも被りだとASMR1000くらいしかいかないから本当に2番目の女になってる
だからASMR勢からスパチャがまったく飛ばない

113:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:53:26.90 .net
オーバーフローしているんだ😨

114:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:53:47.89 .net
あん肝 +1
あくあ -51
うおおおおおおおお

115:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:53:57.16 .net
あくあ 2700 bilibili 10万
あくあ~😊

116:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:54:28.81 .net
あん肝最強!あん肝最強!

117:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:54:36.30 .net
バグっても最強

118:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:54:42.89 .net
いうてちょこ今月もう50万超えてるしスパチャはそんなやばくないだろ

119:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:54:57.59 .net
そらのマスコットに敗北した女

120:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:55:02.47 .net
ビリビリはスタートダッシュ中だし
そっち集中するのは有りだと思う

121:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:55:40.37 .net
身体測定とかコラボに頼るのやめて自枠放送の強み作らんと本気でスパチャ死ぬからな
それこそスバルみたいにマシュマロ企画でもやれ

122:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:56:48.19 .net
マジでスパチャが死んでるのはシオン
同接もそんな悪くないのに

123:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:56:48.61 .net
まぁ俺は最後までIP変えながらマシュマロ送りつつ
コメントでは全肯定して
スパチャは...たまにするよ
ちょこが終わったらその時はその時だ
まぁはあとの方が好きなんだけどな

124:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:57:28.80 .net
あくあは制裁日なんだよ!!!!
毎日が?

125:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:57:54.67 .net
あくあ2800



126:くあー😭



127:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:58:07.54 .net
はあとんくっさ

128:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:58:43.14 .net
あくあ最強!あくあ最強!

129:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:58:49.91 .net
>>116
上位数名が投げてるのが半分くらい占めてるのにそいつらを無下にしてる現状がやばいって話

130:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:58:59.28 .net
クソデブ放送被せんなや
3000行かなくなるだろ

131:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:59:05.48 .net
弾幕すげーw

132:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:59:15.76 .net
あくあ 2900
あくあ~😭

133:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:59:18.02 .net
はあとん兼ちょこめいとだから臭いのは当たり前

134:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:59:47.58 .net
今日もスパチャの雨がすごい

135:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 15:59:48.25 .net
12月と1月はご祝儀スパチャあったからいいけど2月からはガクっと減るぞ
投げるきっかけが欲しい奴はそこそこいるけど投げるタイミング無いから投げない奴多いっぽい

136:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:00:09.22 .net
あくあ2900
パトラ2800
あくあ~😍

137:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:00:15.10 .net
親方カラオケ部屋!?

138:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:00:28.43 .net
いくらスパチャしても時給3000円固定のドル部かわいそう

139:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:00:38.61 .net
あくあはこういう風にスパチャ飛ばしやすいわ

140:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:01:13.16 .net
はあとん兼ちょこめいととか層被ってなさそうだし特定できそう

141:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:01:20.29 .net
あくあスパチャの雨もらってて強い

142:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:01:24.87 .net
パトラバグってんの?

143:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:01:31.25 .net
これからは通知無しの時代な
通知ドーピングで戦ってる奴は除外

144:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:01:47.31 .net
スパチャ飛ばしてる人数の絶対数が違うわ
毎回固定で投げてる奴もいるし

145:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:01:50.21 .net
あくあ2600
あくあ~��

146:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:02:00.09 .net
>>139
バグ無しでこれだぞ
バグあくあ>通常パトラ

147:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:02:21.56 .net
>>104
うおおおおおおおおおおおおおおおおお

148:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:02:42.30 .net
フブキ歌ってるじゃん

149:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:03:49.70 .net
ホロライブゲーマーズにいれろ
lolとかスマブラとか大会に出てるのあくあくらいだろ

150:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:03:51.35 .net
今ので今月もう100万超えてそう

151:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:04:31.89 .net
ドン勝つは取るしアイワナクリアするしゲーマーの鏡

152:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:04:44.09 .net
ちょこ先月スパチャ80万だからな
スバルやミオも来月になりゃだいぶ減るわ

153:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:05:13.76 .net
ちょこ今日のライブで燃え尽きて更にちょこがぐーちゃんになって
いい人読んだだけのテンプレクソコラボガンガンしてきそう

154:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:05:27.76 .net
>>146
強すぎてみんなと一緒にできない

155:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:05:47.06 .net
>>146
パコライブになるから駄目です
家ゲーする大関と下手くそな親方だけでいいです

156:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:05:53.32 .net
誕生日月より今月の方がスパチャ貰ってるあくあやばいんだが

157:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:06:09.85 .net
記念枠無くても稼げるのは親方とあくあくらいだろ

158:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:06:46.28 .net
通知なしとかまじでレジスタンスじゃん

159:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:07:42.63 .net
あくあ最強だろ?
URLリンク(i.imgur.com)

160:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:07:56.29 .net
1月はお年玉と収益化記念スパチャで+20~40万あったからな
投げさせる理由作るのは大切だな
それこそあくあみたいに短編ゲームクリアでもおめでとうで投げてくれるだろ

161:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:08:11.28 .net
いやぁ、最後までやってくれるのはいいね
こういうとこだぞ、たま

162:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:08:21.85 .net
-51~��

163:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:08:53.39 .net
>>156
あん肝最強!!!!!!!!

164:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:08:55.86 .net
ゲーム枠は魅せ場作ってくれないと投げれるものも投げれないからな

165:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:09:22.07 .net
あくアン悔しそうで草

166:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:09:23.35 .net
いやスマブラVIP行かないで諦めたろあの下手くそ

167:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:09:39.13 .net
よくあんなクソゲークリアできたな

168:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:09:43.63 .net
ホロスレ面白くなくなったな

169:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:09.46 .net
あくあのさっきの配信どこいった?

170:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:21.08 .net
げんなりすることがあまりにも多すぎた

171:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:21.61 .net
アイワナくりあできる女ゲーマーそんないないだろ

172:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:22.97 .net
自分より年上のおばさんにお年玉を投げる悲しみ

173:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:27.76 .net
よかったな~あくあ
お前完全にめあルートだわ

174:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:40.95 .net
あくあと親方でホロは引っ張っていくからよろしくな

175:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:54.89 .net
マイクラクリエイティブとかそれこそ投げる理由無くね
投げたくて仕方ない奴は知らんが

176:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:10:58.37 .net
ああ丁度終わったところだったのか

177:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:11:10.06 .net
ちょこは登録増えてるのにスパチャ増えないのがかわいそう

178:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:12:16.70 .net
>>166
今後はフブキのように後から公開とかなんとか

179:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:13:01.88 .net
限定になってるだけだから履歴から見れるぞ

180:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:13:34.18 .net
あくあはフブキの相撲ネタを唯一配信で使える猛者

181:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:13:47.37 .net
8377d

182:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:13:54.46 .net
親方の合いの手は裏番思い出すから笑える

183:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:14:03.62 .net
>>798
るだけそれだけ時雄は責任を重く感じた。その身の不当の嫉妬、不正の恋情の為めに、その愛する女の熱烈な
る恋を犠牲にするには忍びぬと共に、自ら言った「温情なる保護者」として、道徳家の如く身を処するにも堪
えなかった。また一方にはこの事が国に知れて芳子が父母の為めに伴われて帰国するようになるのを恐れた。
 芳子が時雄の書斎に来て、頭を垂れ、声を低うして、その希望を述べたのはその翌日の夜であった。如何に
説いても男は帰らぬ。さりとて国へ報知すれば、父母の許さぬのは知れたこと、時宜に由れば忽ち迎いに来ぬ
とも限らぬ。男も折角ああして出て来たことでもあり二人の間も世の中の男女の恋のように浅く思い浅く恋し
た訳でもないから、決して汚れた行為などはなく、惑溺するようなことは誓って為ない。文学は難かしい道、
小説を書いて一家を成そうとするのは田中のようなものには出来ぬかも知れねど、同じく将来を進むなら、共
に好む道に携わりたい。どうか暫くこのままにして東京に置いてくれとの頼み。時雄はこの余儀なき頼みをす
げなく却けることは出来なかった。時雄は京都嵯峨に於ける女の行為にその節操を疑ってはいるが、一方には
又その弁解をも信じて、この若い二人の間にはまだそんなことはあるまいと思っていた。自分の青年の経験に
照らしてみても、神聖なる霊の恋は成立っても肉の恋は決してそう容易に実行されるものではない。で、時雄
は惑溺せぬものならば、暫くこのままにしておいて好いと言って、そして縷々として霊の恋愛、肉の恋愛、恋
愛と人生との関係、教育ある新しい女の当に守るべきことなどに就いて、切実にかつ真摯に教訓した。古人が
女子の節操を誡めたのは社会道徳の制裁よりは、寧ろ女子の独立を保護する為であるということ、一度肉を男
子に許せば女子の自由が全く破れるということ、西洋の女子はよくこの間の消息を解しているから、男女交際
をして不都合がないということ、日本の新しい婦人も是非ともそうならなければならぬということなど主なる
教訓の題目であったが、殊に新派の女子ということに就いて痛切に語った。 芳子は低頭いてきいていた。 
時雄は興に乗じて、「そして一体、どうして生活しようというのです?」「少しは準備もして来たんでしょう
33a7c9b656
何アに、其処でちょっと転んだものだから」「だッて、肩まで粘いているじゃありませんか。また、酔ッぱら
ったんでしょう」「何アに……」 と時雄は強いて笑ってまぎらした。 さて時を移さず、「芳さん、何処に
行ったんです」「今朝、ちょっと中野の方にお友達と散歩に行って来ると行って出たきりですがね、もう帰っ
て来るでしょう。何か用?」「え、少し……」と言って、「昨日は帰りは遅かったですか」「いいえ、お友達
を新橋に迎えに行くんだって、四時過に出かけて、八時頃に帰って来ましたよ」 時雄の顔を見て、「どうか
したのですの?」「何アに……けれどねえ姉さん」と時雄の声は改まった。「実は姉さんにおまかせしておい
ても、この間の京都のようなことが又あると困るですから、芳子を私の家において、十分監督しようと思うん
ですがね」「そう、それは好いですよ。本当に芳子さんはああいうしっかり者だから、私みたいな無教育のも
のでは……」「いや、そういう訳でも無いですがね。余り自由にさせ過ぎても、却って当人の為にならんです
から、一つ家に置いて、十分監督してみようと思うんです」「それが好いですよ。本当に、芳子さんにもね…
…何処と悪いことのない、発明な、利口な、今の世には珍らしい方ですけれど、一つ悪いことがあってね、男
の友達と平気で夜歩いたりなんかするんですからね。それさえ止すと好いんだけれどとよく言うのですの。す
ると芳子さんはまた小母さんの旧弊が始まったって、笑っているんだもの。いつかなぞも余り男と一緒に歩い
たり何かするものだから、角の交番でね、不審にしてね、角袖巡査が家の前に立っていたことがあったと云い
ますよ。それはそんなことは無いんだから、構いはしませんけどもね……」「それはいつのことです?」「昨
年の暮でしたかね」「どうもハイカラ過ぎて困る」と時雄は言ったが、時計の針の既に十時半の処を指すのを
見て、「それにしてもどうしたんだろう。若い身空で、こう遅くまで一人で出て歩くと言うのは?」「もう帰
って来ますよ」「こんなことは幾度もあるんですか」「いいえ、滅多にありはしませんよ。夏の夜だから、ま
だ宵の口位に思って歩いているんですよ」 姉は話しながら裁縫の針を止めぬのである。前に鴨脚の大きい裁
物板が据えられて、彩絹の裁片や糸や鋏やが順序なく四面に乱れている。女物の美しい色に、洋燈の光が明か

184:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:14:19.93 .net
>>929
前、旅館の下女が置いて行った芳子の筆である。先生、まことに、申訳が御座いません。先生の同情ある御恩
は決して一生経っても忘るることでなく、今もそのお心を思うと、涙が滴るるのです。父母はあの通りです。
先生があのように仰しゃって下すっても、旧風の頑固で、私共の心を汲んでくれようとも致しませず、泣いて
訴えましたけれど、許してくれません。母の手紙を見れば泣かずにはおられませんけれど、少しは私の心も汲
んでくれても好いと思います。恋とはこう苦しいものかと今つくづく思い当りました。先生、私は決心致しま
した。聖書にも女は親に離れて夫に従うと御座います通り、私は田中に従おうと存じます。田中は未だに生活
のたつきを得ませず、準備した金は既に尽き、昨年の暮れは、うらぶれの悲しい生活を送ったので御座います
。私はもう見ているに忍びません。国からの補助を受けませんでも、私等は私等二人で出来るまでこの世に生
きてみようと思います。先生に御心配を懸けるのは、まことに済みません。監督上、御心配なさるのも御尤も
です。けれど折角先生があのように私等の為めに国の父母をお説き下すったにも係らず、父母は唯無意味に怒
ってばかりいて、取合ってくれませんのは、余りと申せば無慈悲です、勘当されても為方が御座いません。堕
落々々と申して、殆ど歯せぬばかりに申しておりますが、私達の恋はそんなに不真面目なもので御座いましょ
うか。それに、家の門地々々と申しますが、私は恋を父母の都合によって致すような旧式の女でないことは先
生もお許し下さるでしょう。先生、私は決心致しました。昨日上野図書館で女の見習生が入用だという広告が
ありましたから、応じてみようと思います。二人して一生懸命に働きましたら、まさかに餓えるようなことも
御座いますまい。先生のお家にこうして居ますればこそ、先生にも奥様にも御心配を懸けて済まぬので御座い
ます。どうか先生、私の決心をお許し下さい。芳子先生 おんもとへ 恋の力は遂に二人を深い惑溺の淵に沈
めたのである。時雄はもうこうしてはおかれぬと思った。時雄が芳子の歓心を得る為めに取った「温情の保護
者」としての態度を考えた。備中の父親に寄せた手紙、その手紙には、極力二人の恋を庇保して、どうしても
084c634901
、長い石階、社殿、俳句の懸行燈、この常夜燈の三字にはよく見入って物を思ったものだ。その下には依然た
る家屋、電車の轟こそおりおり寂寞を破って通るが、その妻の実家の窓には昔と同じように、明かに燈の光が
輝いていた。何たる節操なき心ぞ、僅かに八年の年月を閲したばかりであるのに、こうも変ろうとは誰が思お
う。その桃割姿を丸髷姿にして、楽しく暮したその生活がどうしてこういう荒涼たる生活に変って、どうして
こういう新しい恋を感ずるようになったか。時雄は我ながら時の力の恐ろしいのを痛切に胸に覚えた。けれど
その胸にある現在の事実は不思議にも何等の動揺をも受けなかった。「矛盾でもなんでも為方がない、その矛
盾、その無節操、これが事実だから為方がない、事実! 事実!」 と時雄は胸の中に繰返した。 時雄は堪
え難い自然の力の圧迫に圧せられたもののように、再び傍のロハ台に長い身を横えた。ふと見ると、赤銅のよ
うな色をした光芒の無い大きな月が、お濠の松の上に音も無く昇っていた。その色、その状、その姿がいかに
も侘しい。その侘しさがその身の今の侘しさによく適っていると時雄は思って、また堪え難い哀愁がその胸に
漲り渡った。 酔は既に醒めた。夜露は置始めた。 土手三番町の家の前に来た。 覗いてみたが、芳子の室
に燈火の光が見えぬ。まだ帰って来ぬとみえる。時雄の胸はまた燃えた。この夜、この暗い夜に恋しい男と二
人! 何をしているか解らぬ。こういう常識を欠いた行為を敢てして、神聖なる恋とは何事? 汚れたる行為
の無いのを弁明するとは何事? すぐ家に入ろうとしたが、まだ当人が帰っておらぬのに上っても為方が無い
と思って、その前を真直に通り抜けた。女と摩違う度に、芳子ではないかと顔を覗きつつ歩いた。土手の上、
松の木蔭、街道の曲り角、往来の人に怪まるるまで彼方此方を徘徊した。もう九時、十時に近い。いかに夏の
夜であるからと言って、そう遅くまで出歩いている筈が無い。もう帰ったに相違ないと思って、引返して姉の
家に行ったが、矢張りまだ帰っていない。 時雄は家に入った。 奥の六畳に通るや否、「芳さんはどうしま
した?」 その答より何より、姉は時雄の着物に夥しく泥の着いているのに驚いて、「まア、どうしたんです
、時雄さん」 明かな洋燈の光で見ると、なるほど、白地の浴衣に、肩、膝、腰の嫌いなく、夥しい泥痕!「

185:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:14:20.56 .net
あくあのはふつうに終わった瞬間だったからライブでもなければアーカイブになる前のわずかな間だったわ

186:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:14:21.50 .net
結局ちょこはこれ
URLリンク(virtual-youtuber.userlocal.jp)

187:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:14:36.28 .net
>>31
暑いが、空には既に清涼の秋気が充ち渡って、深い碧の色が際立って人の感情を動かした。肴屋、酒屋、雑貨
店、その向うに寺の門やら裏店の長屋やらが連って、久堅町の低い地には数多の工場の煙筒が黒い煙を漲らし
ていた。 その数多い工場の一つ、西洋風の二階の一室、それが渠の毎日正午から通う処で、十畳敷ほどの広
さの室の中央には、大きい一脚の卓が据えてあって、傍に高い西洋風の本箱、この中には総て種々の地理書が
一杯入れられてある。渠はある書籍会社の嘱託を受けて地理書の編輯の手伝に従っているのである。文学者に
地理書の編輯! 渠は自分が地理の趣味を有っているからと称して進んでこれに従事しているが、内心これに
甘じておらぬことは言うまでもない。後れ勝なる文学上の閲歴、断篇のみを作って未だに全力の試みをする機
会に遭遇せぬ煩悶、青年雑誌から月毎に受ける罵評の苦痛、渠自らはその他日成すあるべきを意識してはいる
ものの、中心これを苦に病まぬ訳には行かなかった。社会は日増に進歩する。電車は東京市の交通を一変させ
た。女学生は勢力になって、もう自分が恋をした頃のような旧式の娘は見たくも見られなくなった。青年はま
た青年で、恋を説くにも、文学を談ずるにも、政治を語るにも、その態度が総て一変して、自分等とは永久に
相触れることが出来ないように感じられた。 で、毎日機械のように同じ道を通って、同じ大きい門を入って
、輪転機関の屋を撼す音と職工の臭い汗との交った細い間を通って、事務室の人々に軽く挨拶して、こつこつ
と長い狭い階梯を登って、さてその室に入るのだが、東と南に明いたこの室は、午後の烈しい日影を受けて、
実に堪え難く暑い。それに小僧が無精で掃除をせぬので、卓の上には白い埃がざらざらと心地悪い。渠は椅子
に腰を掛けて、煙草を一�


188:梛zって、立上って、厚い統計書と地図と案内記と地理書とを本箱から出して、さて 静かに昨日の続きの筆を執り始めた。けれど二三日来、頭脳がむしゃくしゃしているので、筆が容易に進まな い。一行書いては筆を留めてその事を思う。また一行書く、また留める、又書いてはまた留めるという風。そ してその間に頭脳に浮んで来る考は総て断片的で、猛烈で、急激で、絶望的の分子が多い。ふとどういう聯想 c1175a1afe すぐに夫の手に移るような意気地なしでは為方が無い。日本の新しい婦人としては、自ら考えて自ら行うよう にしなければいかん」こう言っては、イブセンのノラの話や、ツルゲネーフのエレネの話や、露西亜、独逸あ たりの婦人の意志と感情と共に富んでいることを話し、さて、「けれど自覚と云うのは、自省ということをも 含んでおるですからな、無闇に意志や自我を振廻しては困るですよ。自分の遣ったことには自分が全責任を帯 びる覚悟がなくては」 芳子にはこの時雄の教訓が何より意味があるように聞えて、渇仰の念が愈※(二の字 点、1-2-22)加わった。基督教の教訓より自由でそして権威があるように考えられた。 芳子は女学生 としては身装が派手過ぎた。黄金の指環をはめて、流行を趁った美しい帯をしめて、すっきりとした立姿は、 路傍の人目を惹くに十分であった。美しい顔と云うよりは表情のある顔、非常に美しい時もあれば何だか醜い 時もあった。眼に光りがあってそれが非常によく働いた。四五年前までの女は感情を顕わすのに極めて単純で 、怒った容とか笑った容とか、三種、四種位しかその感情を表わすことが出来なかったが、今では情を巧に顔 に表わす女が多くなった。芳子もその一人であると時雄は常に思った。 芳子と時雄との関係は単に師弟の間 柄としては余りに親密であった。この二人の様子を観察したある第三者の女の一人が妻に向って、「芳子さん が来てから時雄さんの様子はまるで変りましたよ。二人で話しているところを見ると、魂は二人ともあくがれ 渡っているようで、それは本当に油断がなりませんよ」と言った。他から見れば、無論そう見えたに相違なか った。けれど二人は果してそう親密であったか、どうか。 若い女のうかれ勝な心、うかれるかと思えばすぐ 沈む。些細なことにも胸を動かし、つまらぬことにも心を痛める。恋でもない、恋でなくも無いというような やさしい態度、時雄は絶えず思い惑った。道義の力、習俗の力、機会一度至ればこれを破るのは帛を裂くより も容易だ。唯、容易に来らぬはこれを破るに至る機会である。 この機会がこの一年の間に尠くとも二度近寄 ったと時雄は自分だけで思った。一度は芳子が厚い封書を寄せて、自分の不束なこと、先生の高恩に報ゆるこ とが出来ぬから自分は故郷に帰って農夫の妻になって田舎に埋れて了おうということを涙交りに書いた時、一



189:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:14:53.04 .net
>>138
え難い自然の力の圧迫に圧せられたもののように、再び傍のロハ台に長い身を横えた。ふと見ると、赤銅のよ
うな色をした光芒の無い大きな月が、お濠の松の上に音も無く昇っていた。その色、その状、その姿がいかに
も侘しい。その侘しさがその身の今の侘しさによく適っていると時雄は思って、また堪え難い哀愁がその胸に
漲り渡った。 酔は既に醒めた。夜露は置始めた。 土手三番町の家の前に来た。 覗いてみたが、芳子の室
に燈火の光が見えぬ。まだ帰って来ぬとみえる。時雄の胸はまた燃えた。この夜、この暗い夜に恋しい男と二
人! 何をしているか解らぬ。こういう常識を欠いた行為を敢てして、神聖なる恋とは何事? 汚れたる行為
の無いのを弁明するとは何事? すぐ家に入ろうとしたが、まだ当人が帰っておらぬのに上っても為方が無い
と思って、その前を真直に通り抜けた。女と摩違う度に、芳子ではないかと顔を覗きつつ歩いた。土手の上、
松の木蔭、街道の曲り角、往来の人に怪まるるまで彼方此方を徘徊した。もう九時、十時に近い。いかに夏の
夜であるからと言って、そう遅くまで出歩いている筈が無い。もう帰ったに相違ないと思って、引返して姉の
家に行ったが、矢張りまだ帰っていない。 時雄は家に入った。 奥の六畳に通るや否、「芳さんはどうしま
した?」 その答より何より、姉は時雄の着物に夥しく泥の着いているのに驚いて、「まア、どうしたんです
、時雄さん」 明かな洋燈の光で見ると、なるほど、白地の浴衣に、肩、膝、腰の嫌いなく、夥しい泥痕!「
何アに、其処でちょっと転んだものだから」「だッて、肩まで粘いているじゃありませんか。また、酔ッぱら
ったんでしょう」「何アに……」 と時雄は強いて笑ってまぎらした。 さて時を移さず、「芳さん、何処に
行ったんです」「今朝、ちょっと中野の方にお友達と散歩に行って来ると行って出たきりですがね、もう帰っ
て来るでしょう。何か用?」「え、少し……」と言って、「昨日は帰りは遅かったですか」「いいえ、お友達
を新橋に迎えに行くんだって、四時過に出かけて、八時頃に帰って来ましたよ」 時雄の顔を見て、「どうか
したのですの?」「何アに……けれどねえ姉さん」と時雄の声は改まった。「実は姉さんにおまかせしておい
009876eb91
轟かした。平和は一時にして破れた。 晩餐後、芳子はその事を問われたのである。 芳子は困ったという風
で、「先生、本当に困って了ったんですの。田中が東京に出て来ると云うのですもの、私は二度、三度まで止
めて遣ったんですけれど、何だか、宗教に従事して、虚偽に生活してることが、今度の動機で、すっかり厭に
なって了ったとか何とかで、どうしても東京に出て来るッて言うんですよ」「東京に来て、何をするつもりな
んだ?」「文学を遣りたいと―」「文学? 文学ッて、何だ。小説を書こうと言うのか」「え、そうでしょ
う……」「馬鹿な!」 と時雄は一喝した。「本当に困って了うんですの」「貴嬢はそんなことを勧めたんじ
ゃないか」「いいえ」と烈しく首を振って、「私はそんなこと……私は今の場合困るから、せめて同志社だけ
でも卒業してくれッて、この間初めに申して来た時に達って止めて遣ったんですけれど……もうすっかり独断
でそうして了ったんですッて。今更取かえしがつかぬようになって了ったんですッて」「どうして?」「神戸
の信者で、神戸の教会の為めに、田中に学資を出してくれている神津という人があるのですの。その人に、田
中が宗教は自分には出来ぬから、将来文学で立とうと思う。どうか東京に出してくれと言って遣ったんですの
。すると大層怒って、それならもう構わぬ、勝手にしろと言われて、すっかり支度をしてしまったんですって
、本当に困って了いますの」「馬鹿な!」 と言ったが、「今一度留めて遣んなさい。小説で立とうなんて思
ったッて、とても駄目だ、全く空想だ、空想の極端だ。それに、田中が此方に出て来ていては、貴嬢の監督上
、私が非常に困る。貴嬢の世話も出来んようになるから、厳しく止めて遣んなさい!」 芳子は愈※(二の字
点、1-2-22)困ったという風で、「止めてはやりますけれど、手紙が行違いになるかも知れませんから
」「行違い? それじゃもう来るのか」 時雄は眼を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)った。「今
来た手紙に、もう手紙をよこしてくれても行違いになるからと言ってよこしたんですから」「今来た手紙ッて
、さっきの端書の又後に来たのか」 芳子は点頭いた。「困ったね。だから若い空想家は駄目だと言うんだ」
 平和は再び攪乱さるることとなった。 一日置いて今夜の六時に新橋に着くという電報があった。電報を持

190:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:15:05.65 .net
あくあ信者スレは荒らしていいぞ

191:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:15:10.21 .net
>>617
うです、此処も居心は悪くないでしょう」時雄は得意そうに笑って、「此処に居て、まア緩くり勉強するです
。本当に実際問題に触れてつまらなく苦労したって為方がないですからねえ」「え……」と芳子は頭を垂れた
。「後で詳しく聞きましょうが、今の中は二人共じっとして勉強していなくては、為方がないですからね」「
え……」と言って、芳子は顔を挙げて、「それで先生、私達もそう思って、今はお互に勉強して、将来に希望
を持って、親の許諾をも得たいと存じておりますの!」「それが好いです。今、余り騒ぐと、人にも親にも誤
解されて了って、折角の真面目な希望も遂げられなくなりますから」「ですから、ね、先生、私は一心になっ
て勉強しようと思いますの。田中もそう申しておりました。それから、先生に是非お目にかかってお礼を申上
げなければ済まないと申しておりましたけれど……よく申上げてくれッて……」「いや……」 時雄は芳子の
言葉の中に、「私共」と複数を遣うのと、もう公然許嫁の約束でもしたかのように言うのとを不快に思った。
まだ、十九か二十の妙齢の処女が、こうした言葉を口にするのを怪しんだ。時雄は時代の推移ったのを今更の
ように感じた。当世の女学生気質のいかに自分等の恋した時代の処女気質と異っているかを思った。勿論、こ
の女学生気質を時雄は主義の上、趣味の上から喜んで見ていたのは事実である。昔のような教育を受けては、
到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬ
とはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実
行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。 男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着
いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食
事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編ん
でくれる。美しい笑顔を絶えず見せる。時雄は芳子を全く占領して、とにかく安心もし満足もした。細君も芳
子に恋人があるのを知ってから、危険の念、不安の念を全く去った。 芳子は恋人に別れるのが辛かった。成
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又その弁解をも信じて、この若い二人の間にはまだそんなことはあるまいと思っていた。自分の青年の経験に
照らしてみても、神聖なる霊の恋は成立っても肉の恋は決してそう容易に実行されるものではない。で、時雄
は惑溺せぬものならば、暫くこのままにしておいて好いと言って、そして縷々として霊の恋愛、肉の恋愛、恋
愛と人生との関係、教育ある新しい女の当に守るべきことなどに就いて、切実にかつ真摯に教訓した。古人が
女子の節操を誡めたのは社会道徳の制裁よりは、寧ろ女子の独立を保護する為であるということ、一度肉を男
子に許せば女子の自由が全く破れるということ、西洋の女子はよくこの間の消息を解しているから、男女交際
をして不都合がないということ、日本の新しい婦人も是非ともそうならなければならぬということなど主なる
教訓の題目であったが、殊に新派の女子ということに就いて痛切に語った。 芳子は低頭いてきいていた。 
時雄は興に乗じて、「そして一体、どうして生活しようというのです?」「少しは準備もして来たんでしょう
、一月位は好いでしょうけれど……」「何か旨い口でもあると好いけれど」と時雄は言った。「実は先生に御
縋り申して、誰も知ってるものがないのに出て参りましたのですから、大層失望しましたのですけれど」「だ
ッて余り突飛だ。一昨日逢ってもそう思ったが、どうもあれでも困るね」 と時雄は笑った。「どうか又御心
配下さるように……この上御心配かけては申訳がありませんけれど」と芳子は縋るようにして顔を赧めた。「
心配せん方が好い、どうかなるよ」 芳子が出て行った後、時雄は急に険しい難かしい顔に成った。「自分に
……自分に、この恋の世話が出来るだろうか」と独りで胸に反問した。「若い鳥は若い鳥でなくては駄目だ。
自分等はもうこの若い鳥を引く美しい羽を持っていない」こう思うと、言うに言われぬ寂しさがひしと胸を襲
った。「妻と子―家庭の快楽だと人は言うが、それに何の意味がある。子供の為めに生存している妻は生存
の意味があろうが、妻を子に奪われ、子を妻に奪われた夫はどうして寂寞たらざるを得るか」時雄はじっと洋
燈を見た。 机の上にはモウパッサンの「死よりも強し」が開かれてあった。 二三日経って後、時雄は例刻
に社から帰って火鉢の前に坐ると、細君が小声で、「今日来てよ」「誰が」「二階の……そら芳子さんの好い

192:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:15:27.30 .net
>>245
渡っているようで、それは本当に油断がなりませんよ」と言った。他から見れば、無論そう見えたに相違なか
った。けれど二人は果してそう親密であったか、どうか。 若い女のうかれ勝な心、うかれるかと思えばすぐ
沈む。些細なことにも胸を動かし、つまらぬことにも心を痛める。恋でもない、恋でなくも無いというような
やさしい態度、時雄は絶えず思い惑った。道義の力、習俗の力、機会一度至ればこれを破るのは帛を裂くより
も容易だ。唯、容易に来らぬはこれを破るに至る機会である。 この機会がこの一年の間に尠くとも二度近寄
ったと時雄は自分だけで思った。一度は芳子が厚い封書を寄せて、自分の不束なこと、先生の高恩に報ゆるこ
とが出来ぬから自分は故郷に帰って農夫の妻になって田舎に埋れて了おうということを涙交りに書いた時、一
度は或る夜芳子が一人で留守番をしているところへゆくりなく時雄が行って訪問した時、この二度だ。初めの
時は時雄はその手紙の意味を明かに了解した。その返事をいかに書くべきかに就いて一夜眠らずに懊悩した。
穏かに眠れる妻の顔、それを幾度か窺って自己の良心のいかに麻痺せるかを自ら責めた。そしてあくる朝贈っ
た手紙は、厳乎たる師としての態度であった。二度目はそれから二月ほど経った春の夜、ゆくりなく時雄が訪
問すると、芳子は白粉をつけて、美しい顔をして、火鉢の前にぽつねんとしていた。「どうしたの」と訊くと
、「お留守番ですの」「姉は何処へ行った?」「四谷へ買物に」 と言って、じっと時雄の顔を見る。いかに
も艶かしい。時雄はこの力ある一瞥に意気地なく胸を躍らした。二語三語、普通のことを語り合ったが、その
平凡なる物語が更に平凡でないことを互に思い知ったらしかった。この時、今十五分も一緒に話し合ったなら
ば、どうなったであろうか。女の表情の眼は輝き、言葉は艶めき、態度がいかにも尋常でなかった。「今夜は
大変綺麗にしてますね?」 男は態と軽く出た。「え、先程、湯に入りましたのよ」「大変に白粉が白いから
」「あらまア先生!」と言って、笑って体を斜に嬌態を呈した。 時雄はすぐ帰った。まア好いでしょうと芳
子はたって留めたが、どうしても帰ると言うので、名残惜しげに月の夜を其処まで送って来た。その白い顔に
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、芳子を家に連れて来る。二階を掃除しておけ」「家に置くんですか、また……」「勿論」 細君は容易に帯
と着物とを出そうともせぬので、「よし、よし、着物を出さんのなら、これで好い」と、白地の単衣に唐縮緬
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
の紳士が庇髪の若い細君を伴れて、神楽坂に散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅した。時雄は激昂した心と泥酔
した身体とに烈しく漂わされて、四辺に見ゆるものが皆な別の世界のもののように思われた。両側の家も動く
よう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に蔽い冠さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、無闇
にぐいぐいと呷ったので、一時に酔が発したのであろう。ふと露西亜の賤民の酒に酔って路傍に倒れて寝てい
るのを思い出した。そしてある友人と露西亜の人間はこれだから豪い、惑溺するなら飽まで惑溺せんければ駄
目だと言ったことを思いだした。馬鹿な! 恋に師弟の別があって堪るものかと口へ出して言った。 中根坂
を上って、士官学校の裏門から佐内坂の上まで来た頃は、日はもうとっぷりと暮れた。白地の浴衣がぞろぞろ
と通る。煙草屋の前に若い細君が出ている。氷屋の暖簾が涼しそうに夕風に靡く。時雄はこの夏の夜景を朧げ
に眼には見ながら、電信柱に突当って倒れそうにしたり、浅い溝に落ちて膝頭をついたり、職工体の男に、「
酔漢奴! しっかり歩け!」と罵られたりした。急に自ら思いついたらしく、坂の上から右に折れて、市ヶ谷
八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞としていた。大きい古い欅の樹と松の樹とが蔽い冠さって
、左の隅に珊瑚樹の大きいのが繁っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。時雄はいかにしても苦
しいので、突如その珊瑚樹の蔭に身を躱して、その根本の地上に身を横えた。興奮した心の状態、奔放な情と
悲哀の快感とは、極端までその力を発展して、一方痛切に嫉妬の念に駆られながら、一方冷淡に自己の状態を
客観した。 初めて恋するような熱烈な情は無論なかった。盲目にその運命に従うと謂うよりは、寧ろ冷かに

193:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:15:44.52 .net
>>112
ぬ理由、処女にして文学者たるの危険などを縷々として説いて、幾らか罵倒的の文辞をも陳べて、これならも
う愛想をつかして断念めて了うであろうと時雄は思って微笑した。そして本箱の中から岡山県の地図を捜して
、阿哲郡新見町の所在を研究した。山陽線から高梁川の谷を遡って奥十数里、こんな山の中にもこんなハイカ
ラの女があるかと思うと、それでも何となくなつかしく、時雄はその附近の地形やら山やら川やらを仔細に見
た。 で、これで返辞をよこすまいと思ったら、それどころか、四日目には更に厚い封書が届いて、紫インキ
で、青い罫の入った西洋紙に横に細字で三枚、どうか将来見捨てずに弟子にしてくれという意味が返す返すも
書いてあって、父母に願って許可を得たならば、東京に出て、然るべき学校に入って、完全に忠実に文学を学
んでみたいとのことであった。時雄は女の志に感ぜずにはいられなかった。東京でさえ―女学校を卒業した
ものでさえ、文学の価値などは解らぬものなのに、何もかもよく知っているらしい手紙の文句、早速返事を出
して師弟の関係を結んだ。 それから度々の手紙と文章、文章はまだ幼稚な点はあるが、癖の無い、すらすら
した、将来発達の見込は十分にあると時雄は思った。で一度は一度より段々互の気質が知れて、時雄はその手
紙の来るのを待つようになった。ある時などは写真を送れと言って遣ろうと思って、手紙の隅に小さく書いて
、そしてまたこれを黒々と塗って了った。女性には容色と謂うものが是非必要である。容色のわるい女はいく
ら才があっても男が相手に為ない。時雄も内々胸の中で、どうせ文学を遣ろうというような女だから、不容色
に相違ないと思った。けれどなるべくは見られる位の女であって欲しいと思った。 芳子が父母に許可を得て
、父に伴れられて、時雄の門を訪うたのは翌年の二月で、丁度時雄の三番目の男の児の生れた七夜の日であっ
た。座敷の隣の室は細君の産褥で、細君は手伝に来ている姉から若い女門下生の美しい容色であることを聞い
て少なからず懊悩した。姉もああいう若い美しい女を弟子にしてどうする気だろうと心配した。時雄は芳子と
父とを並べて、縷々として文学者の境遇と目的とを語り、女の結婚問題に就いて予め父親の説を叩いた。芳子
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小説の解釈、芳子は師のかがやく眼の下に、机に斜に坐って、「オン、ゼ、イブ」の長い長い物語に耳を傾け
た。エレネの感情に烈しく意志の強い性格と、その悲しい悲壮なる末路とは如何にかの女を動かしたか。芳子
はエレネの恋物語を自分に引くらべて、その身を小説の中に置いた。恋の運命、恋すべき人に恋する機会がな
く、思いも懸けぬ人にその一生を任した運命、実際芳子の当時の心情そのままであった。須磨の浜で、ゆくり
なく受取った百合の花の一葉の端書、それがこうした運命になろうとは夢にも思い知らなかったのである。 
雨の森、闇の森、月の森に向って、芳子はさまざまにその事を思った。京都の夜汽車、嵯峨の月、膳所に遊ん
だ時には湖水に夕日が美しく射渡って、旅館の中庭に、萩が絵のように咲乱れていた。その二日の遊は実に夢
のようであったと思った。続いてまだその人を恋せぬ前のこと、須磨の海水浴、故郷の山の中の月、病気にな
らぬ以前、殊にその時の煩悶を考えると、頬がおのずから赧くなった。 空想から空想、その空想はいつか長
い手紙となって京都に行った。京都からも殆ど隔日のように厚い厚い封書が届いた。書いても書いても尽くさ
れぬ二人の情―余りその文通の頻繁なのに時雄は芳子の不在を窺って、監督という口実の下にその良心を抑
えて、こっそり机の抽出やら文箱やらをさがした。捜し出した二三通の男の手紙を走り読みに読んだ。 恋人
のするような甘ったるい言葉は到る処に満ちていた。けれど時雄はそれ以上にある秘密を捜し出そうと苦心し
た。接吻の痕、性慾の痕が何処かに顕われておりはせぬか。神聖なる恋以上に二人の間は進歩しておりはせぬ
か、けれど手紙にも解らぬのは恋のまことの消息であった。 一カ月は過ぎた。 ところが、ある日、時雄は
芳子に宛てた一通の端書を受取った。英語で書いてある端書であった。何気なく読むと、一月ほどの生活費は
準備して行く、あとは東京で衣食の職業が見附かるかどうかという意味、京都田中としてあった。時雄は胸を
轟かした。平和は一時にして破れた。 晩餐後、芳子はその事を問われたのである。 芳子は困ったという風
で、「先生、本当に困って了ったんですの。田中が東京に出て来ると云うのですもの、私は二度、三度まで止
めて遣ったんですけれど、何だか、宗教に従事して、虚偽に生活してることが、今度の動機で、すっかり厭に

194:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:16:00.90 .net
>>331
芳子に宛てた一通の端書を受取った。英語で書いてある端書であった。何気なく読むと、一月ほどの生活費は
準備して行く、あとは東京で衣食の職業が見附かるかどうかという意味、京都田中としてあった。時雄は胸を
轟かした。平和は一時にして破れた。 晩餐後、芳子はその事を問われたのである。 芳子は困ったという風
で、「先生、本当に困って了ったんですの。田中が東京に出て来ると云うのですもの、私は二度、三度まで止
めて遣ったんですけれど、何だか、宗教に従事して、虚偽に生活してることが、今度の動機で、すっかり厭に
なって了ったとか何とかで、どうしても東京に出て来るッて言うんですよ」「東京に来て、何をするつもりな
んだ?」「文学を遣りたいと―」「文学? 文学ッて、何だ。小説を書こうと言うのか」「え、そうでしょ
う……」「馬鹿な!」 と時雄は一喝した。「本当に困って了うんですの」「貴嬢はそんなことを勧めたんじ
ゃないか」「いいえ」と烈しく首を振って、「私はそんなこと……私は今の場合困るから、せめて同志社だけ
でも卒業してくれッて、この間初めに申して来た時に達って止めて遣ったんですけれど……もうすっかり独断
でそうして了ったんですッて。今更取かえしがつかぬようになって了ったんですッて」「どうして?」「神戸
の信者で、神戸の教会の為めに、田中に学資を出してくれている神津という人があるのですの。その人に、田
中が宗教は自分には出来ぬから、将来文学で立とうと思う。どうか東京に出してくれと言って遣ったんですの
。すると大層怒って、それならもう構わぬ、勝手にしろと言われて、すっかり支度をしてしまったんですって
、本当に困って了いますの」「馬鹿な!」 と言ったが、「今一度留めて遣んなさい。小説で立とうなんて思
ったッて、とても駄目だ、全く空想だ、空想の極端だ。それに、田中が此方に出て来ていては、貴嬢の監督上
、私が非常に困る。貴嬢の世話も出来んようになるから、厳しく止めて遣んなさい!」 芳子は愈※(二の字
点、1-2-22)困ったという風で、「止めてはやりますけれど、手紙が行違いになるかも知れませんから
」「行違い? それじゃもう来るのか」 時雄は眼を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)った。「今
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てこの嬌態に対していた。胸の騒ぐのは無論である。不快の情はひしと押し寄せて来た。芳子はちらと時雄の
顔を覗ったが、その不機嫌なのが一目で解った。で、すぐ態度を改めて、「先生、今日田中が参りましてね」
「そうだってね」「お目にかかってお礼を申上げなければならんのですけれども、又改めて上がりますからッ
て……よろしく申上げて……」「そうか」 と言ったが、そのままふいと立って書斎に入って了った。 その
恋人が東京に居ては、仮令自分が芳子をその二階に置いて監督しても、時雄は心を安んずる暇はなかった。二
人の相逢うことを妨げることは絶対に不可能である。手紙は無論差留めることは出来ぬし、「今日ちょっと田
中に寄って参りますから、一時間遅くなります」と公然と断って行くのをどうこう言う訳には行かなかった。
またその男が訪問して来るのを非常に不快に思うけれど、今更それを謝絶することも出来なかった。時雄はい
つの間にか、この二人からその恋に対しての「温情の保護者」として認められて了った。 時雄は常に苛々し
ていた。書かなければならぬ原稿が幾種もある。書肆からも催促される。金も欲しい。けれどどうしても筆を
執って文を綴るような沈着いた心の状態にはなれなかった。強いて試みてみることがあっても、考が纒らない
。本を読んでも二頁も続けて読む気になれない。二人の恋の温かさを見る度に、胸を燃して、罪もない細君に
当り散らして酒を飲んだ。晩餐の菜が気に入らぬと云って、御膳を蹴飛した。夜は十二時過に酔って帰って来
ることもあった。芳子はこの乱暴な不調子な時雄の行為に尠なからず心を痛めて、「私がいろいろ御心配を懸
けるもんですからね、私が悪いんですよ」と詫びるように細君に言った。芳子はなるたけ手紙の往復を人に見
せぬようにし、訪問も三度に一度は学校を休んでこっそり行くようにした。時雄はそれに気が附いて一層懊悩
の度を増した。 野は秋も暮れて木枯の風が立った。裏の森の銀杏樹も黄葉して夕の空を美しく彩った。垣根
道には反かえった落葉ががさがさと転がって行く。鵙の鳴音がけたたましく聞える。若い二人の恋が愈※(二
の字点、1-2-22)人目に余るようになったのはこの頃であった。時雄は監督上見るに見かねて、芳子を
説勧めて、この一伍一什を故郷の父母に報ぜしめた。そして時雄もこの恋に関しての長い手紙を芳子の父に寄

195:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:16:15.31 .net
めあ信者にホロライブ荒らされるな

196:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:16:18.62 .net
>>563
め、今度も恋しさに堪え兼ねて女の後を追って上京したのかも知れん。手を握ったろう。胸と胸とが相触れた
ろう。人が見ていぬ旅籠屋の二階、何を為ているか解らぬ。汚れる汚れぬのも刹那の間だ。こう思うと時雄は
堪らなくなった。「監督者の責任にも関する!」と腹の中で絶叫した。こうしてはおかれぬ、こういう自由を
精神の定まらぬ女に与えておくことは出来ん。監督せんければならん、保護せんけりゃならん。私共は熱情も
あるが理性がある! 私共とは何だ! 何故私とは書かぬ、何故複数を用いた? 時雄の胸は嵐のように乱れ
た。着いたのは昨日の六時、姉の家に行って聞き糺せば昨夜何時頃に帰ったか解るが、今日はどうした、今は
どうしている? 細君の心を尽した晩餐の膳には、鮪の新鮮な刺身に、青紫蘇の薬味を添えた冷豆腐、それを
味う余裕もないが、一盃は一盃と盞を重ねた。 細君は末の児を寝かして、火鉢の前に来て坐ったが、芳子の
手紙の夫の傍にあるのに眼を附けて、「芳子さん、何て言って来たのです?」 時雄は黙って手紙を投げて遣
った、細君はそれを受取りながら、夫の顔をじろりと見て、暴風の前に来る雲行の甚だ急なのを知った。 細
君は手紙を読終って巻きかえしながら、「出て来たのですね」「うむ」「ずっと東京に居るんでしょうか」「
手紙に書いてあるじゃないか、すぐ帰すッて……」「帰るでしょうか」「そんなこと誰が知るものか」 夫の
語気が烈しいので、細君は口を噤んで了った。少時経ってから、「だから、本当に厭さ、若い娘の身で、小説
家になるなんぞッて、望む本人も本人なら、よこす親達も親達ですからね」「でも、お前は安心したろう」と
言おうとしたが、それは止して、「まア、そんなことはどうでも好いさ、どうせお前達には解らんのだから…
…それよりも酌でもしたらどうだ」 温順な細君は徳利を取上げて、京焼の盃に波々と注ぐ。 時雄は頻りに
酒を呷った。酒でなければこの鬱を遣るに堪えぬといわぬばかりに。三本目に、妻は心配して、「この頃はど
うか為ましたね」「何故?」「酔ってばかりいるじゃありませんか」「酔うということがどうかしたのか」「
そうでしょう、何か気に懸ることがあるからでしょう。芳子さんのことなどはどうでも好いじゃありませんか
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た。 で、これで返辞をよこすまいと思ったら、それどころか、四日目には更に厚い封書が届いて、紫インキ
で、青い罫の入った西洋紙に横に細字で三枚、どうか将来見捨てずに弟子にしてくれという意味が返す返すも
書いてあって、父母に願って許可を得たならば、東京に出て、然るべき学校に入って、完全に忠実に文学を学
んでみたいとのことであった。時雄は女の志に感ぜずにはいられなかった。東京でさえ―女学校を卒業した
ものでさえ、文学の価値などは解らぬものなのに、何もかもよく知っているらしい手紙の文句、早速返事を出
して師弟の関係を結んだ。 それから度々の手紙と文章、文章はまだ幼稚な点はあるが、癖の無い、すらすら
した、将来発達の見込は十分にあると時雄は思った。で一度は一度より段々互の気質が知れて、時雄はその手
紙の来るのを待つようになった。ある時などは写真を送れと言って遣ろうと思って、手紙の隅に小さく書いて
、そしてまたこれを黒々と塗って了った。女性には容色と謂うものが是非必要である。容色のわるい女はいく
ら才があっても男が相手に為ない。時雄も内々胸の中で、どうせ文学を遣ろうというような女だから、不容色
に相違ないと思った。けれどなるべくは見られる位の女であって欲しいと思った。 芳子が父母に許可を得て
、父に伴れられて、時雄の門を訪うたのは翌年の二月で、丁度時雄の三番目の男の児の生れた七夜の日であっ
た。座敷の隣の室は細君の産褥で、細君は手伝に来ている姉から若い女門下生の美しい容色であることを聞い
て少なからず懊悩した。姉もああいう若い美しい女を弟子にしてどうする気だろうと心配した。時雄は芳子と
父とを並べて、縷々として文学者の境遇と目的とを語り、女の結婚問題に就いて予め父親の説を叩いた。芳子
の家は新見町でも第三とは下らぬ豪家で、父も母も厳格なる基督教信者、母は殊にすぐれた信者で、曽ては同
志社女学校に学んだこともあるという。総領の兄は英国へ洋行して、帰朝後は某官立学校の教授となっている
。芳子は町の小学校を卒業するとすぐ、神戸に出て神戸の女学院に入り、其処でハイカラな女学校生活を送っ
た。基督教の女学校は他の女学校に比して、文学に対して総て自由だ。その頃こそ「魔風恋風」や「金色夜叉
」などを読んではならんとの規定も出ていたが、文部省で干渉しない以前は、教場でさえなくば何を読んでも

197:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:16:34.87 .net
>>437
夫だ、人の娘を預って監督せずに投遣にしてはおかれん。男がこの東京に来て一緒に歩いたり何かしているの
を見ぬ振をしてはおかれん。田川(姉の家の姓)に預けておいても不安心だから、今日、行って、早かったら
、芳子を家に連れて来る。二階を掃除しておけ」「家に置くんですか、また……」「勿論」 細君は容易に帯
と着物とを出そうともせぬので、「よし、よし、着物を出さんのなら、これで好い」と、白地の単衣に唐縮緬
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
の紳士が庇髪の若い細君を伴れて、神楽坂に散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅した。時雄は激昂した心と泥酔
した身体とに烈しく漂わされて、四辺に見ゆるものが皆な別の世界のもののように思われた。両側の家も動く
よう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に蔽い冠さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、無闇
にぐいぐいと呷ったので、一時に酔が発したのであろう。ふと露西亜の賤民の酒に酔って路傍に倒れて寝てい
るのを思い出した。そしてある友人と露西亜の人間はこれだから豪い、惑溺するなら飽まで惑溺せんければ駄
目だと言ったことを思いだした。馬鹿な! 恋に師弟の別があって堪るものかと口へ出して言った。 中根坂
を上って、士官学校の裏門から佐内坂の上まで来た頃は、日はもうとっぷりと暮れた。白地の浴衣がぞろぞろ
と通る。煙草屋の前に若い細君が出ている。氷屋の暖簾が涼しそうに夕風に靡く。時雄はこの夏の夜景を朧げ
に眼には見ながら、電信柱に突当って倒れそうにしたり、浅い溝に落ちて膝頭をついたり、職工体の男に、「
酔漢奴! しっかり歩け!」と罵られたりした。急に自ら思いついたらしく、坂の上から右に折れて、市ヶ谷
八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞としていた。大きい古い欅の樹と松の樹とが蔽い冠さって
、左の隅に珊瑚樹の大きいのが繁っていた。処々の常夜燈はそろそろ光を放ち始めた。時雄はいかにしても苦
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ように感じた。当世の女学生気質のいかに自分等の恋した時代の処女気質と異っているかを思った。勿論、こ
の女学生気質を時雄は主義の上、趣味の上から喜んで見ていたのは事実である。昔のような教育を受けては、
到底今の明治の男子の妻としては立って行かれぬ。女子も立たねばならぬ、意志の力を十分に養わねばならぬ
とはかれの持論である。この持論をかれは芳子に向っても尠からず鼓吹した。けれどこの新派のハイカラの実
行を見てはさすがに眉を顰めずにはいられなかった。 男からは国府津の消印で帰途に就いたという端書が着
いて翌日三番町の姉の家から届けて来た。居間の二階には芳子が居て、呼べば直ぐ返事をして下りて来る。食
事には三度三度膳を並べて団欒して食う。夜は明るい洋燈を取巻いて、賑わしく面白く語り合う。靴下は編ん
でくれる。美しい笑顔を絶えず見せる。時雄は芳子を全く占領して、とにかく安心もし満足もした。細君も芳
子に恋人があるのを知ってから、危険の念、不安の念を全く去った。 芳子は恋人に別れるのが辛かった。成
ろうことなら一緒に東京に居て、時々顔をも見、言葉をも交えたかった。けれど今の際それは出来難いことを
知っていた。二年、三年、男が同志社を卒業するまでは、たまさかの雁の音信をたよりに、一心不乱に勉強し
なければならぬと思った。で、午後からは、以前の如く麹町の某英学塾に通い、時雄も小石川の社に通った。
 時雄は夜などおりおり芳子を自分の書斎に呼んで、文学の話、小説の話、それから恋の話をすることがある
。そして芳子の為めにその将来の注意を与えた。その時の態度は公平で、率直で、同情に富んでいて、決して
泥酔して厠に寝たり、地上に横たわったりした人とは思われない。さればと言って、時雄はわざとそういう態
度にするのではない、女に対っている刹那―その愛した女の歓心を得るには、いかなる犠牲も甚だ高価に過
ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する
ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ
た。さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く碧く、日の光は透通った空気に射渡って、夕の影が濃くあ
たりを隈どるようになった。取り残した芋の葉に雨は終日降頻って、八百屋の店には松茸が並べられた。垣の

198:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:16:51.57 .net
>>655
度にするのではない、女に対っている刹那�


199:\―その愛した女の歓心を得るには、いかなる犠牲も甚だ高価に過 ぎなかった。 で、芳子は師を信頼した。時期が来て、父母にこの恋を告ぐる時、旧思想と新思想と衝突する ようなことがあっても、この恵深い師の承認を得さえすればそれで沢山だとまで思った。 九月は十月になっ た。さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く碧く、日の光は透通った空気に射渡って、夕の影が濃くあ たりを隈どるようになった。取り残した芋の葉に雨は終日降頻って、八百屋の店には松茸が並べられた。垣の 虫の声は露に衰えて、庭の桐の葉も脆くも落ちた。午前の中の一時間、九時より十時までを、ツルゲネーフの 小説の解釈、芳子は師のかがやく眼の下に、机に斜に坐って、「オン、ゼ、イブ」の長い長い物語に耳を傾け た。エレネの感情に烈しく意志の強い性格と、その悲しい悲壮なる末路とは如何にかの女を動かしたか。芳子 はエレネの恋物語を自分に引くらべて、その身を小説の中に置いた。恋の運命、恋すべき人に恋する機会がな く、思いも懸けぬ人にその一生を任した運命、実際芳子の当時の心情そのままであった。須磨の浜で、ゆくり なく受取った百合の花の一葉の端書、それがこうした運命になろうとは夢にも思い知らなかったのである。  雨の森、闇の森、月の森に向って、芳子はさまざまにその事を思った。京都の夜汽車、嵯峨の月、膳所に遊ん だ時には湖水に夕日が美しく射渡って、旅館の中庭に、萩が絵のように咲乱れていた。その二日の遊は実に夢 のようであったと思った。続いてまだその人を恋せぬ前のこと、須磨の海水浴、故郷の山の中の月、病気にな らぬ以前、殊にその時の煩悶を考えると、頬がおのずから赧くなった。 空想から空想、その空想はいつか長 い手紙となって京都に行った。京都からも殆ど隔日のように厚い厚い封書が届いた。書いても書いても尽くさ れぬ二人の情――余りその文通の頻繁なのに時雄は芳子の不在を窺って、監督という口実の下にその良心を抑 えて、こっそり机の抽出やら文箱やらをさがした。捜し出した二三通の男の手紙を走り読みに読んだ。 恋人 のするような甘ったるい言葉は到る処に満ちていた。けれど時雄はそれ以上にある秘密を捜し出そうと苦心し aa21afc0de ラなのが沢山居ない。それに、市ヶ谷見附の彼方には時雄の妻君の里の家があるのだが、この附近は殊に昔風 の商家の娘が多い。で、尠くとも芳子の神戸仕込のハイカラはあたりの人の目を聳たしめた。時雄は姉の言葉 として、妻から常に次のようなことを聞される。「芳子さんにも困ったものですねと姉が今日も言っていまし たよ、男の友達が来るのは好いけれど、夜など一緒に二七(不動)に出かけて、遅くまで帰って来ないことが あるんですって。そりゃ芳子さんはそんなことは無いのに決っているけれど、世間の口が喧しくって為方が無 いと云っていました」 これを聞くと時雄は定って芳子の肩を持つので、「お前達のような旧式の人間には芳 子の遣ることなどは判りやせんよ。男女が二人で歩いたり話したりさえすれば、すぐあやしいとか変だとか思 うのだが、一体、そんなことを思ったり、言ったりするのが旧式だ、今では女も自覚しているから、為ようと 思うことは勝手にするさ」 この議論を時雄はまた得意になって芳子にも説法した。「女子ももう自覚せんけ ればいかん。昔の女のように依頼心を持っていては駄目だ。ズウデルマンのマグダの言った通り、父の手から すぐに夫の手に移るような意気地なしでは為方が無い。日本の新しい婦人としては、自ら考えて自ら行うよう にしなければいかん」こう言っては、イブセンのノラの話や、ツルゲネーフのエレネの話や、露西亜、独逸あ たりの婦人の意志と感情と共に富んでいることを話し、さて、「けれど自覚と云うのは、自省ということをも 含んでおるですからな、無闇に意志や自我を振廻しては困るですよ。自分の遣ったことには自分が全責任を帯 びる覚悟がなくては」 芳子にはこの時雄の教訓が何より意味があるように聞えて、渇仰の念が愈※(二の字 点、1-2-22)加わった。基督教の教訓より自由でそして権威があるように考えられた。 芳子は女学生 としては身装が派手過ぎた。黄金の指環をはめて、流行を趁った美しい帯をしめて、すっきりとした立姿は、 路傍の人目を惹くに十分であった。美しい顔と云うよりは表情のある顔、非常に美しい時もあれば何だか醜い 時もあった。眼に光りがあってそれが非常によく働いた。四五年前までの女は感情を顕わすのに極めて単純で 、怒った容とか笑った容とか、三種、四種位しかその感情を表わすことが出来なかったが、今では情を巧に顔



200:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:17:07.79 .net
>>425
うか為ましたね」「何故?」「酔ってばかりいるじゃありませんか」「酔うということがどうかしたのか」「
そうでしょう、何か気に懸ることがあるからでしょう。芳子さんのことなどはどうでも好いじゃありませんか
」「馬鹿!」 と時雄は一喝した。 細君はそれにも懲りずに、「だって、余り飲んでは毒ですよ、もう好い
加減になさい、また手水場にでも入って寝ると、貴郎は大きいから、私と、お鶴(下女)の手ぐらいではどう
にもなりやしませんからさ」「まア、好いからもう一本」 で、もう一本を半分位飲んだ。もう酔は余程廻っ
たらしい。顔の色は赤銅色に染って眼が少しく据っていた。急に立上って、「おい、帯を出せ!」「何処へい
らっしゃる」「三番町まで行って来る」「姉の処?」「うむ」「およしなさいよ、危ないから」「何アに大丈
夫だ、人の娘を預って監督せずに投遣にしてはおかれん。男がこの東京に来て一緒に歩いたり何かしているの
を見ぬ振をしてはおかれん。田川(姉の家の姓)に預けておいても不安心だから、今日、行って、早かったら
、芳子を家に連れて来る。二階を掃除しておけ」「家に置くんですか、また……」「勿論」 細君は容易に帯
と着物とを出そうともせぬので、「よし、よし、着物を出さんのなら、これで好い」と、白地の単衣に唐縮緬
の汚れたへこ帯、帽子も被らずに、そのままに急いで戸外へ出た。「今出しますから……本当に困って了う」
という細君の声が後に聞えた。 夏の日はもう暮れ懸っていた。矢来の酒井の森には烏の声が喧しく聞える。
どの家でも夕飯が済んで、門口に若い娘の白い顔も見える。ボールを投げている少年もある。官吏らしい鰌髭
の紳士が庇髪の若い細君を伴れて、神楽坂に散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅した。時雄は激昂した心と泥酔
した身体とに烈しく漂わされて、四辺に見ゆるものが皆な別の世界のもののように思われた。両側の家も動く
よう、地も脚の下に陥るよう、天も頭の上に蔽い冠さるように感じた。元からさ程強い酒量でないのに、無闇
にぐいぐいと呷ったので、一時に酔が発したのであろう。ふと露西亜の賤民の酒に酔って路傍に倒れて寝てい
るのを思い出した。そしてある友人と露西亜の人間はこれだから豪い、惑溺するなら飽まで惑溺せんければ駄
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と云うではなく、座敷の隅に置かれた小さい旅鞄や憐れにもしおたれた白地の浴衣などを見ると、青年空想の
昔が思い出されて、こうした恋の為め、煩悶もし、懊悩もしているかと思って、憐憫の情も起らぬではなかっ
た。 この暑い一室に相対して、趺坐をもかかず、二人は尠くとも一時間以上語った。話は遂に要領を得なか
った。「先ず今一度考え直して見給え」くらいが最後で、時雄は別れて帰途に就いた。 何だか馬鹿らしいよ
うな気がした。愚なる行為をしたように感じられて、自らその身を嘲笑した。心にもないお世辞をも言い、自
分の胸の底の秘密を蔽う為めには、二人の恋の温情なる保護者となろうとまで言ったことを思い出した。安飜
訳の仕事を周旋して貰う為め、某氏に紹介の労を執ろうと言ったことをも思い出した。そして自分ながら自分
の意気地なく好人物なのを罵った。 時雄は幾度か考えた。寧ろ国に報知して遣ろうか、と。けれどそれを報
知するに、どういう態度を以てしようかというのが大問題であった。二人の恋の関鍵を自ら握っていると信ず
るだけそれだけ時雄は責任を重く感じた。その身の不当の嫉妬、不正の恋情の為めに、その愛する女の熱烈な
る恋を犠牲にするには忍びぬと共に、自ら言った「温情なる保護者」として、道徳家の如く身を処するにも堪
えなかった。また一方にはこの事が国に知れて芳子が父母の為めに伴われて帰国するようになるのを恐れた。
 芳子が時雄の書斎に来て、頭を垂れ、声を低うして、その希望を述べたのはその翌日の夜であった。如何に
説いても男は帰らぬ。さりとて国へ報知すれば、父母の許さぬのは知れたこと、時宜に由れば忽ち迎いに来ぬ
とも限らぬ。男も折角ああして出て来たことでもあり二人の間も世の中の男女の恋のように浅く思い浅く恋し
た訳でもないから、決して汚れた行為などはなく、惑溺するようなことは誓って為ない。文学は難かしい道、
小説を書いて一家を成そうとするのは田中のようなものには出来ぬかも知れねど、同じく将来を進むなら、共
に好む道に携わりたい。どうか暫くこのままにして東京に置いてくれとの頼み。時雄はこの余儀なき頼みをす
げなく却けることは出来なかった。時雄は京都嵯峨に於ける女の行為にその節操を疑ってはいるが、一方には
又その弁解をも信じて、この若い二人の間にはまだそんなことはあるまいと思っていた。自分の青年の経験に

201:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:17:24.65 .net
>>59
してその間に頭脳に浮んで来る考は総て断片的で、猛烈で、急激で、絶望的の分子が多い。ふとどういう聯想
か、ハウプトマンの「寂しき人々」を思い出した。こうならぬ前に、この戯曲をかの女の日課として教えて遣
ろうかと思ったことがあった。ヨハンネス・フォケラートの心事と悲哀とを教えて遣りたかった。この戯曲を
渠が読んだのは今から三年以前、まだかの女のこの世にあることをも夢にも知らなかった頃であったが、その
頃から渠は淋しい人であった。敢てヨハンネスにその身を比そうとは為なかったが、アンナのような女がもし
あったなら、そういう悲劇に陥るのは当然だとしみじみ同情した。今はそのヨハンネスにさえなれぬ身だと思
って長嘆した。 さすがに「寂しき人々」をかの女に教えなかったが、ツルゲネーフの「ファースト」という
短篇を教えたことがあった。洋燈の光明かなる四畳半の書斎、かの女の若々しい心は色彩ある恋物語に憧れ渡
って、表情ある眼は更に深い深い意味を以て輝きわたった。ハイカラな庇髪、櫛、リボン、洋燈の光線がその
半身を照して、一巻の書籍に顔を近く寄せると、言うに言われぬ香水のかおり、肉のかおり、女のかおり―
書中の主人公が昔の恋人に「ファースト」を読んで聞かせる段を講釈する時には男の声も烈しく戦えた。「け
れど、もう駄目だ!」 と、渠は再び頭髪をむしった。 渠は名を竹中時雄と謂った。 今より三年前、三人
目の子が細君の腹に出来て、新婚の快楽などはとうに覚め尽した頃であった。世の中の忙しい事業も意味がな
く、一生作に力を尽す勇気もなく、日常の生活―朝起きて、出勤して、午後四時に帰って来て、同じように
細君の顔を見て、飯を食って眠るという単調なる生活につくづく倦き果てて了った。家を引越歩いても面白く
ない、友人と語り合っても面白くない、外国小説を読み渉猟っても満足が出来ぬ。いや、庭樹の繁り、雨の点
滴、花の開落などいう自然の状態さえ、平凡なる生活をして更に平凡ならしめるような気がして、身を置くに
処は無いほど淋しかった。道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った
。 三十四五、実際この頃には誰にでもある煩悶で、この年頃に賤しい女に戯るるものの多いのも、畢竟その
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暑い室に初めて相対した時、先ずかれの身に迫ったのは、基督教に養われた、いやに取澄ました、年に似合わ
ぬ老成な、厭な不愉快な態度であった。京都訛の言葉、色の白い顔、やさしいところはいくらかはあるが、多
い青年の中からこうした男を特に選んだ芳子の気が知れなかった。殊に時雄が最も厭に感じたのは、天真流露
という率直なところが微塵もなく、自己の罪悪にも弱点にも種々の理由を強いてつけて、これを弁解しようと
する形式的態度であった。とは言え、実を言えば、時雄の激しい頭脳には、それがすぐ直覚的に明かに映った
と云うではなく、座敷の隅に置かれた小さい旅鞄や憐れにもしおたれた白地の浴衣などを見ると、青年空想の
昔が思い出されて、こうした恋の為め、煩悶もし、懊悩もしているかと思って、憐憫の情も起らぬではなかっ
た。 この暑い一室に相対して、趺坐をもかかず、二人は尠くとも一時間以上語った。話は遂に要領を得なか
った。「先ず今一度考え直して見給え」くらいが最後で、時雄は別れて帰途に就いた。 何だか馬鹿らしいよ
うな気がした。愚なる行為をしたように感じられて、自らその身を嘲笑した。心にもないお世辞をも言い、自
分の胸の底の秘密を蔽う為めには、二人の恋の温情なる保護者となろうとまで言ったことを思い出した。安飜
訳の仕事を周旋して貰う為め、某氏に紹介の労を執ろうと言ったことをも思い出した。そして自分ながら自分
の意気地なく好人物なのを罵った。 時雄は幾度か考えた。寧ろ国に報知して遣ろうか、と。けれどそれを報
知するに、どういう態度を以てしようかというのが大問題であった。二人の恋の関鍵を自ら握っていると信ず
るだけそれだけ時雄は責任を重く感じた。その身の不当の嫉妬、不正の恋情の為めに、その愛する女の熱烈な
る恋を犠牲にするには忍びぬと共に、自ら言った「温情なる保護者」として、道徳家の如く身を処するにも堪
えなかった。また一方にはこの事が国に知れて芳子が父母の為めに伴われて帰国するようになるのを恐れた。
 芳子が時雄の書斎に来て、頭を垂れ、声を低うして、その希望を述べたのはその翌日の夜であった。如何に
説いても男は帰らぬ。さりとて国へ報知すれば、父母の許さぬのは知れたこと、時宜に由れば忽ち迎いに来ぬ
とも限らぬ。男も折角ああして出て来たことでもあり二人の間も世の中の男女の恋のように浅く思い浅く恋し

202:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:17:57.96 .net
>>666
た。エレネの感情に烈しく意志の強い性格と、その悲しい悲壮なる末路とは如何にかの女を動かしたか。芳子
はエレネの恋物語を自分に引くらべて、その身を小説の中に置いた。恋の運命、恋すべき人に恋する機会がな
く、思いも懸けぬ人にその一生を任した運命、実際芳子の当時の心情そのままであった。須磨の浜で、ゆくり
なく受取った百合の花の一葉の端書、それがこうした運命になろうとは夢にも思い知らなかったのである。 
雨の森、闇の森、月の森に向って、芳子はさまざまにその事を思った。京都の夜汽車、嵯峨の月、膳所に遊ん
だ時には湖水に夕日が美しく射渡って、旅館の中庭に、萩が絵のように咲乱れていた。その二日の遊は実に夢
のようであったと思った。続いてまだその人を恋せぬ前のこと、須磨の海水浴、故郷の山の中の月、病気にな
らぬ以前、殊にその時の煩悶を考えると、頬がおのずから赧くなった。 空想から空想、その空想はいつか長
い手紙となって京都に行った。京都からも殆ど隔日のように厚い厚い封書が届いた。書いても書いても尽くさ
れぬ二人の情―余りその文通の頻繁なのに時雄は芳子の不在を窺って、監督という口実の下にその良心を抑
えて、こっそり机の抽出やら文箱やらをさがした。捜し出した二三通の男の手紙を走り読みに読んだ。 恋人
のするような甘ったるい言葉は到る処に満ちていた。けれど時雄はそれ以上にある秘密を捜し出そうと苦心し
た。接吻の痕、性慾の痕が何処かに顕われておりはせぬか。神聖なる恋以上に二人の間は進歩しておりはせぬ
か、けれど手紙にも解らぬのは恋のまことの消息であった。 一カ月は過ぎた。 ところが、ある日、時雄は
芳子に宛てた一通の端書を受取った。英語で書いてある端書であった。何気なく読むと、一月ほどの生活費は
準備して行く、あとは東京で衣食の職業が見附かるかどうかという意味、京都田中としてあった。時雄は胸を
轟かした。平和は一時にして破れた。 晩餐後、芳子はその事を問われたのである。 芳子は困ったという風
で、「先生、本当に困って了ったんですの。田中が東京に出て来ると云うのですもの、私は二度、三度まで止
めて遣ったんですけれど、何だか、宗教に従事して、虚偽に生活してることが、今度の動機で、すっかり厭に
8a309cdd61
うけれど、何だか変ですよ」「そんなことはどうでも好い。それでどうした?」「お鶴(下女)が行って上げ
ると言うのに、好いと言って、御自分で出かけて、餅菓子と焼芋を買って来て、御馳走してよ。……お鶴も笑
っていましたよ。お湯をさしに上ると、二人でお旨しそうにおさつを食べているところでしたッて……」 時
雄も笑わざるを得なかった。 細君は猶語り続いだ。「そして随分長く高い声で話していましたよ。議論みた
いなことも言って、芳子さんもなかなか負けない様子でした」「そしていつ帰った?」「もう少し以前」「芳
子は居るか」「いいえ、路が分からないから、一緒に其処まで送って行って来るッて出懸けて行ったんですよ
」 時雄は顔を曇らせた。 夕飯を食っていると、裏口から芳子が帰って来た。急いで走って来たと覚しく、
せいせい息を切っている。「何処まで行らしった?」 と細君が問うと、「神楽坂まで」と答えたが、いつも
する「おかえりなさいまし」を時雄に向って言って、そのままばたばたと二階へ上った。すぐ下りて来るかと
思うに、なかなか下りて来ない。「芳子さん、芳子さん」と三度ほど細君が呼ぶと、「はアーい」という長い
返事が聞えて、矢張下りて来ない。お鶴が迎いに行って漸く二階を下りて来たが、準備した夕飯の膳を他所に
、柱に近く、斜に坐った。「御飯は?」「もう食べたくないの、腹が一杯で」「余りおさつを召上った故でし
ょう」「あら、まア、酷い奥さん。いいわ、奥さん」 と睨む真似をする。 細君は笑って、「芳子さん、何
だか変ね」「何故?」と長く引張る。「何故も無いわ」「いいことよ、奥さん」 と又睨んだ。 時雄は黙っ
てこの嬌態に対していた。胸の騒ぐのは無論である。不快の情はひしと押し寄せて来た。芳子はちらと時雄の
顔を覗ったが、その不機嫌なのが一目で解った。で、すぐ態度を改めて、「先生、今日田中が参りましてね」
「そうだってね」「お目にかかってお礼を申上げなければならんのですけれども、又改めて上がりますからッ
て……よろしく申上げて……」「そうか」 と言ったが、そのままふいと立って書斎に入って了った。 その
恋人が東京に居ては、仮令自分が芳子をその二階に置いて監督しても、時雄は心を安んずる暇はなかった。二
人の相逢うことを妨げることは絶対に不可能である。手紙は無論差留めることは出来ぬし、「今日ちょっと田

203:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:18:14.16 .net
>>853
悪そうでしたよ。私がお茶を持って行って上げると、芳子さんは机の前に坐っている。その前にその人が居て
、今まで何か話していたのを急に止して黙ってしまった。私は変だからすぐ下りて来たですがね、……何だか
変ね、……今の若い人はよくああいうことが出来てね、私のその頃には男に見られるのすら恥かしくって恥か
しくって為方がなかったものですのに……」「時代が違うからナ」「いくら時代が違っても、余り新派過ぎる
と思いましたよ。堕落書生と同じですからね。それゃうわべが似ているだけで、心はそんなことはないでしょ
うけれど、何だか変ですよ」「そんなことはどうでも好い。それでどうした?」「お鶴(下女)が行って上げ
ると言うのに、好いと言って、御自分で出かけて、餅菓子と焼芋を買って来て、御馳走してよ。……お鶴も笑
っていましたよ。お湯をさしに上ると、二人でお旨しそうにおさつを食べているところでしたッて……」 時
雄も笑わざるを得なかった。 細君は猶語り続いだ。「そして随分長く高い声で話していましたよ。議論みた
いなことも言って、芳子さんもなかなか負けない様子でした」「そしていつ帰った?」「もう少し以前」「芳
子は居るか」「いいえ、路が分からないから、一緒に其処まで送って行って来るッて出懸けて行ったんですよ
」 時雄は顔を曇らせた。 夕飯を食っていると、裏口から芳子が帰って来た。急いで走って来たと覚しく、
せいせい息を切っている。「何処まで行らしった?」 と細君が問うと、「神楽坂まで」と答えたが、いつも
する「おかえりなさいまし」を時雄に向って言って、そのままばたばたと二階へ上った。すぐ下りて来るかと
思うに、なかなか下りて来ない。「芳子さん、芳子さん」と三度ほど細君が呼ぶと、「はアーい」という長い
返事が聞えて、矢張下りて来ない。お鶴が迎いに行って漸く二階を下りて来たが、準備した夕飯の膳を他所に
、柱に近く、斜に坐った。「御飯は?」「もう食べたくないの、腹が一杯で」「余りおさつを召上った故でし
ょう」「あら、まア、酷い奥さん。いいわ、奥さん」 と睨む真似をする。 細君は笑って、「芳子さん、何
だか変ね」「何故?」と長く引張る。「何故も無いわ」「いいことよ、奥さん」 と又睨んだ。 時雄は黙っ
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準備して行く、あとは東京で衣食の職業が見附かるかどうかという意味、京都田中としてあった。時雄は胸を
轟かした。平和は一時にして破れた。 晩餐後、芳子はその事を問われたのである。 芳子は困ったという風
で、「先生、本当に困って了ったんですの。田中が東京に出て来ると云うのですもの、私は二度、三度まで止
めて遣ったんですけれど、何だか、宗教に従事して、虚偽に生活してることが、今度の動機で、すっかり厭に
なって了ったとか何とかで、どうしても東京に出て来るッて言うんですよ」「東京に来て、何をするつもりな
んだ?」「文学を遣りたいと―」「文学? 文学ッて、何だ。小説を書こうと言うのか」「え、そうでしょ
う……」「馬鹿な!」 と時雄は一喝した。「本当に困って了うんですの」「貴嬢はそんなことを勧めたんじ
ゃないか」「いいえ」と烈しく首を振って、「私はそんなこと……私は今の場合困るから、せめて同志社だけ
でも卒業してくれッて、この間初めに申して来た時に達って止めて遣ったんですけれど……もうすっかり独断
でそうして了ったんですッて。今更取かえしがつかぬようになって了ったんですッて」「どうして?」「神戸
の信者で、神戸の教会の為めに、田中に学資を出してくれている神津という人があるのですの。その人に、田
中が宗教は自分には出来ぬから、将来文学で立とうと思う。どうか東京に出してくれと言って遣ったんですの
。すると大層怒って、それならもう構わぬ、勝手にしろと言われて、すっかり支度をしてしまったんですって
、本当に困って了いますの」「馬鹿な!」 と言ったが、「今一度留めて遣んなさい。小説で立とうなんて思
ったッて、とても駄目だ、全く空想だ、空想の極端だ。それに、田中が此方に出て来ていては、貴嬢の監督上
、私が非常に困る。貴嬢の世話も出来んようになるから、厳しく止めて遣んなさい!」 芳子は愈※(二の字
点、1-2-22)困ったという風で、「止めてはやりますけれど、手紙が行違いになるかも知れませんから
」「行違い? それじゃもう来るのか」 時雄は眼を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)った。「今
来た手紙に、もう手紙をよこしてくれても行違いになるからと言ってよこしたんですから」「今来た手紙ッて
、さっきの端書の又後に来たのか」 芳子は点頭いた。「困ったね。だから若い空想家は駄目だと言うんだ」

204:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:18:16.71 .net
ホロ鯖はサバイバル用に別のを立てたほうがいいんじゃないの

205:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:18:31.09 .net
>>324
ももう言わなくなった。徳利に酒が無くなると、只、酒、酒と言うばかりだ。そしてこれをぐいぐいと呷る。
気の弱い下女はどうしたことかと呆れて見ておった。男の児の五歳になるのを始めは頻りに可愛がって抱いた
り撫でたり接吻したりしていたが、どうしたはずみでか泣出したのに腹を立てて、ピシャピシャとその尻を乱
打したので、三人の子供は怖がって、遠巻にして、平生に似もやらぬ父親の赤く酔った顔を不思議そうに見て
いた。一升近く飲んでそのまま其処に酔倒れて、お膳の筋斗がえりを打つのにも頓着しなかったが、やがて不
思議なだらだらした節で、十年も前にはやった幼稚な新体詩を歌い出した。君が門辺をさまよふは巷の塵を吹
き立つる嵐のみとやおぼすらん。その嵐よりいやあれにその塵よりも乱れたる恋のかばねを暁の 歌を半ばに
して、細君の被けた蒲団を着たまま、すっくと立上って、座敷の方へ小山の如く動いて行った。何処へ? 何
処へいらっしゃるんです? と細君は気が気でなくその後を追って行ったが、それにも関わず、蒲団を着たま
ま、厠の中に入ろうとした。細君は慌てて、「貴郎、貴郎、酔っぱらってはいやですよ。そこは手水場ですよ
」 突如蒲団を後から引いたので、蒲団は厠の入口で細君の手に残った。時雄はふらふらと危く小便をしてい
たが、それがすむと、突如※(「革+堂」、第3水準1-93-80)


206:と厠の中に横に寝てしまった。細君が 汚がって頻りに揺ったり何かしたが、時雄は動こうとも立とうとも為ない。そうかと云って眠ったのではなく 、赤土のような顔に大きい鋭い目を明いて、戸外に降り頻る雨をじっと見ていた。 時雄は例刻をてくてくと 牛込矢来町の自宅に帰って来た。 渠は三日間、その苦悶と戦った。渠は性として惑溺することが出来ぬ或る 一種の力を有っている。この力の為めに支配されるのを常に口惜しく思っているのではあるが、それでもいつ か負けて了う。征服されて了う。これが為め渠はいつも運命の圏外に立って苦しい味を嘗めさせられるが、世 間からは正しい人、信頼するに足る人と信じられている。三日間の苦しい煩悶、これでとにかく渠はその前途 を見た。二人の間の関係は一段落を告げた。これからは、師としての責任を尽して、わが愛する女の幸福の為 8d2b3dbd9e 行ったんです」「今朝、ちょっと中野の方にお友達と散歩に行って来ると行って出たきりですがね、もう帰っ て来るでしょう。何か用?」「え、少し……」と言って、「昨日は帰りは遅かったですか」「いいえ、お友達 を新橋に迎えに行くんだって、四時過に出かけて、八時頃に帰って来ましたよ」 時雄の顔を見て、「どうか したのですの?」「何アに……けれどねえ姉さん」と時雄の声は改まった。「実は姉さんにおまかせしておい ても、この間の京都のようなことが又あると困るですから、芳子を私の家において、十分監督しようと思うん ですがね」「そう、それは好いですよ。本当に芳子さんはああいうしっかり者だから、私みたいな無教育のも のでは……」「いや、そういう訳でも無いですがね。余り自由にさせ過ぎても、却って当人の為にならんです から、一つ家に置いて、十分監督してみようと思うんです」「それが好いですよ。本当に、芳子さんにもね… …何処と悪いことのない、発明な、利口な、今の世には珍らしい方ですけれど、一つ悪いことがあってね、男 の友達と平気で夜歩いたりなんかするんですからね。それさえ止すと好いんだけれどとよく言うのですの。す ると芳子さんはまた小母さんの旧弊が始まったって、笑っているんだもの。いつかなぞも余り男と一緒に歩い たり何かするものだから、角の交番でね、不審にしてね、角袖巡査が家の前に立っていたことがあったと云い ますよ。それはそんなことは無いんだから、構いはしませんけどもね……」「それはいつのことです?」「昨 年の暮でしたかね」「どうもハイカラ過ぎて困る」と時雄は言ったが、時計の針の既に十時半の処を指すのを 見て、「それにしてもどうしたんだろう。若い身空で、こう遅くまで一人で出て歩くと言うのは?」「もう帰 って来ますよ」「こんなことは幾度もあるんですか」「いいえ、滅多にありはしませんよ。夏の夜だから、ま だ宵の口位に思って歩いているんですよ」 姉は話しながら裁縫の針を止めぬのである。前に鴨脚の大きい裁 物板が据えられて、彩絹の裁片や糸や鋏やが順序なく四面に乱れている。女物の美しい色に、洋燈の光が明か に照り渡った。九月中旬の夜は更けて、稍々肌寒く、裏の土手下を甲武の貨物汽車がすさまじい地響を立てて 通る。 下駄の音がする度に、今度こそは! 今度こそは! と待渡ったが、十一時が打って間もなく、小き



207:名無しさん@お腹いっぱい。
19/01/13 16:18:47.49 .net
>>3
係は一段落を告げた。三十六にもなって、子供も三人あって、あんなことを考えたかと思うと、馬鹿々々しく
なる。けれど……けれど……本当にこれが事実だろうか。あれだけの愛情を自身に注いだのは単に愛情として
のみで、恋ではなかったろうか」 数多い感情ずくめの手紙―二人の関係はどうしても尋常ではなかった。
妻があり、子があり、世間があり、師弟の関係があればこそ敢て烈しい恋に落ちなかったが、語り合う胸の轟
、相見る眼の光、その底には確かに凄じい暴風が潜んでいたのである。機会に遭遇しさえすれば、その底の底
の暴風は忽ち勢を得て、妻子も世間も道徳も師弟の関係も一挙にして破れて了うであろうと思われた。少くと
も男はそう信じていた。それであるのに、二三日来のこの出来事、これから考えると、女は確かにその感情を
偽り売ったのだ。自分を欺いたのだと男は幾度も思った。けれど文学者だけに、この男は自ら自分の心理を客
観するだけの余裕を有っていた。年若い女の心理は容易に判断し得られるものではない、かの温い嬉しい愛情
は、単に女性特有の自然の発展で、美しく見えた眼の表情も、やさしく感じられた態度も都て無意識で、無意
味で、自然の花が見る人に一種の慰藉を与えたようなものかも知れない。一歩を譲って女は自分を愛して恋し
ていたとしても、自分は師、かの女は門弟、自分は妻あり子ある身、かの女は妙齢の美しい花、そこに互に意
識の加わるのを如何ともすることは出来まい。いや、更に一歩を進めて、あの熱烈なる一封の手紙、陰に陽に
その胸の悶を訴えて、丁度自然の力がこの身を圧迫するかのように、最後の情を伝えて来た時、その謎をこの
身が解いて遣らなかった。女性のつつましやかな性として、その上に猶露わに迫って来ることがどうして出来
よう。そういう心理からかの女は失望して、今回のような事を起したのかも知れぬ。「とにかく時機は過ぎ去
った。かの女は既に他人の所有だ!」 歩きながら渠はこう絶叫して頭髪をむしった。 縞セルの背広に、麦
稈帽、藤蔓の杖をついて、やや前のめりにだらだらと坂を下りて行く。時は九月の中旬、残暑はまだ堪え難く
暑いが、空には既に清涼の秋気が充ち渡って、深い碧の色が際立って人の感情を動かした。肴屋、酒屋、雑貨
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処に来て、半ば坐って、ちらりと電光のように時雄の顔色を窺ったが、すぐ紫の袱紗に何か包んだものを出し
て、黙って姉の方に押遣った。「何ですか……お土産? いつもお気の毒ね?」「いいえ、私も召上るんです
もの」 と芳子は快活に言った。そして次の間へ行こうとしたのを、無理に洋燈の明るい眩しい居間の一隅に
坐らせた。美しい姿、当世流の庇髪、派手なネルにオリイヴ色の夏帯を形よく緊めて、少し斜に坐った艶やか
さ。時雄はその姿と相対して、一種状すべからざる満足を胸に感じ、今までの煩悶と苦痛とを半ば忘れて了っ
た。有力な敵があっても、その恋人をだに占領すれば、それで心の安まるのは恋する者の常態である。「大変
に遅くなって了って……」 いかにも遣瀬ないというように微かに弁解した。「中野へ散歩に行ったッて?」
 時雄は突如として問うた。「ええ……」芳子は時雄の顔色をまたちらりと見た。 姉は茶を淹れる。土産の
包を開くと、姉の好きな好きなシュウクリーム。これはマアお旨しいと姉の声。で、暫く一座はそれに気を取
られた。 少時してから、芳子が、「先生、私の帰るのを待っていて下さったの?」「ええ、ええ、一時間半
位待ったのよ」 と姉が傍から言った。 で、その話が出て、都合さえよくば今夜からでも―荷物は後から
でも好いから―一緒に伴れて行く積りで来たということを話した。芳子は下を向いて、点頭いて聞いていた
。無論、その胸には一種の圧迫を感じたに相違ないけれど、芳子の心にしては、絶対に信頼して―今回の恋
のことにも全心を挙げて同情してくれた師の家に行って住むことは別に甚しい苦痛でも無かった。寧ろ以前か
らこの昔風の家に同居しているのを不快に思って、出来るならば、初めのように先生の家にと願っていたので
あるから、今の場合でなければ、かえって大に喜んだのであろうに…… 時雄は一刻も早くその恋人のことを
聞糺したかった。今、その男は何処にいる? 何時京都に帰るか? これは時雄に取っては実に重大な問題で
あった。けれど何も知らぬ姉の前で、打明けて問う訳にも行かぬので、この夜は露ほどもそのことを口に出さ
なかった。一座は平凡な物語に更けた。 今夜にもと時雄の言出したのを、だって、もう十二時だ、明日にし
た方が宜かろうとの姉の注意。で、時雄は一人で牛込に帰ろうとしたが、どうも不安心で為方がないような気


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