24/05/28 17:38:53.47 emA0iedJ.net
「鬼滅の刃」のおもちゃ79%OFF、「SPY×FAMILY」のぬいぐるみ67%OFF、「【推しの子】」のキャンディ半額……。これは、筆者が近場のディスカウントストアで目にした光景である。数年前、いや、場合によっては昨年放送されたばかりのアニメグッズが、投げ売り状態になっているのだ。こうした光景は、ディスカウントストアでいまや日常的に見られるようになった。
「【推しの子】」のキャンディに至っては、まだコンビニエンスストアやスーパーマーケットの店頭で販売中の商品である。ちょうど、高齢者が「【推しの子】」のキャンディを手にしたので、なぜこの商品を選んだのか聞いた。「安いから」という答えが返ってきた。アニメについては「知らない」と言い、「飴玉は好きだからね」と語ってくれた。
いわゆる「推し活」がブームになり、空前のアニメブームが起こっているという。最近、コンビニでもアニメショップ並みにグッズが置かれるようになり、さぞや売れ筋だろうと思いきや、あるコンビニの店主は「アニメグッズは売れるものもあるけれど、売れないものの方が多い。作品のブームが過ぎ去るのが早い印象を受けます」と話す。
SNSで話題になり、トレンド入りしていたアニメが、数ヶ月経つと話題にも上らなくなるケースは多い。いったいなぜ、こんなことが起きてしまうのか。そこにはアニメ業界の構造的な問題がある。現在、ほとんどのアニメは1クールあたり12~13話程度しか製作されない。放送中に人気に火が付くと、数ヶ月経ってから第2期の制作が発表されるパターンがほとんどだ。
しかし、2期の放送が始まるまでに1年前後のブランクがある。その間に、大半のファンは離れていってしまうのだ。そして、2期、3期とアニメが続くほど、人気は落ちていく。残酷な話であるが、2期で1期を上回る人気を獲得できたアニメは数えるほどしかないのが現実である。
商品を開発する企業側も大変だ。「プリキュア」などのシリーズものや「週刊少年ジャンプ」原作の一部のビッグタイトルを除けば、人気に火がついてから慌ててグッズが企画されることが多い。イラストをプリントしただけの商品を作る場合でも、版権元の許可を得てから商品化するまでは、どんなに早くても3ヶ月以上はかかってしまう。
人気があるうちはグッズが少ないため、ファンのニーズが高く、転売屋まで出現するアニメもある。ネットでは「転売屋許すまじ!」という論調で批判が巻き起こり、ファンからも「本当のファンが買えないのは問題です」との声が上がって、対応が不十分な企業側がバッシングにさらされることもある。
しかし、半年もすれば、嵐のようなブームが過ぎ去って転売屋すら見向きもしなくなる。この頃には、転売屋を叩いていた人々の関心は、既に他のアニメに移っている。すると、人気を見越して作りすぎた商品が余り、ディスカウントストアに流れてしまう……という構造なのだろう。熱心なファンには反論されるかもしれないが、少なくとも大半のファンは飽きるものなのだ。
中略
かつて、アニメといえば、ゴールデンタイムに家族で視聴する文化があった。「ドラゴンボール」』や「ドラえもん」のように人気があれば放送は続き、100話を超える作品も珍しくなかった。ところが、2000年以降、深夜アニメが台頭してくると、12~13話程度で一区切りを迎えるアニメが増加した。
こうしたアニメは、話題になると一時的にバッと人気が出る。しかし、短期間で放送が終わってしまうため、じっくりとファンを育てることができない。そのため、人気が落ちるのも早いのだ。アニメが放送されない間が空くため、企業側もグッズを長いスパンで売る戦略が立てられなくなった。人気があるうちに売り切らなければ、在庫を抱えてしまうリスクもある。
ファンが飽きやすくなった要因のひとつに、SNSの普及のほかに、アニメの制作本数が多すぎることも挙げられる。日本動画協会の「『アニメ制作市場』動向調査2023」によれば、2021年に制作されたテレビアニメは310本にも及ぶという。2000年の109本と比べると、実に3倍近い数字だ。アニメーターの人員不足が叫ばれているにもかかわらず、アニメを作りすぎなのである。
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