23/07/17 08:23:12.16 BIgjg3Q/0.net
綸言(りんげん)汗の如(ごと)し、という格言がある。高位にある人物が発した言葉は、取り消すことができない、という意味だが、川勝平太静岡県知事は、この言葉を知らなかったらしい。自らの失言によって辞職勧告決議案が県議会で採択されたため、反省を示すためにボーナスなどを返上すると格好をつけたものの、実行に移さなかった。
▼初当選のとき返上を公約とした退職金も2期目からは、しれっと受け取っていた。半世紀ぶりに不信任決議案が上程され、わずか1票の差で否決されたのもむべなるかな。学者出身であるにもかかわらず、言葉があまりにも軽いのである。
▼ただ、まれに前言を撤回しても褒められる人がいる。御年82歳の宮崎駿監督も数少ない一人。彼は、ゼロ戦の設計者を主人公とし、賛否両論を巻き起こしたアニメ映画「風立ちぬ」を公開した直後、長編映画の製作から引退すると発表した。
▼あれから10年ぶりに公開された「君たちはどう生きるか」は、評判を呼び、都心の映画館では満員札止めが相次いだ。かくいう小欄もむせ返るような暑さの中、足を運んだ。
▼といっても長編アニメの金字塔である「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」など大ヒット作を連発した彼の熱狂的なファンというわけではない。何しろ公開まで徹底的な緘口(かんこう)令が敷かれ、封切りまで内容はむろん、出演者から主題歌に至るまでわからないとあっては、新聞記者の端くれとしては見物せざるを得ない。
▼74歳になってから制作会社の社長に復帰し、宮崎監督とタッグを組む鈴木敏夫プロデューサーの術中に、まんまとはまってしまったが、はまってよかった。映画で久々に泣かせてもらった。合計156歳の老コンビにしてやられたのは、なんとも悔しいが。