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6月30日 産経抄
還暦を超えた世代の映画ファンなら共有できるはずだ。昭和48年の暮れに封切られたカンフー映画「燃えよドラゴン」を見たときの衝撃である。小柄ながら鋼のような筋肉を持つ主人公がとにかくかっこよかった。「アチョー」と雄たけびを上げながら、素手であるいはヌンチャクを振り回して群がる敵をなぎ倒していく。
▼主演したブルース・リー(中国名・李小龍)は当時日本ではほとんど知られていなかった。香港で少年時代を送り18歳のときに米国に渡った。独自の流派を創始した武道家でもあった。実は封切り5カ月前に32歳の若さで病死していた。来月で没後50年を迎える。
▼「Be water(水になれ)」。香港で行われた民主化要求デモを支えてきたスローガンである。明確なリーダーを立てず、複数のグループがSNSを通じて集まる。つまり警官の取り締まりに対して、柔軟に対応しようという意味で使われた。米ワシントン大学で哲学を学んだブルース・リーの言葉だった。
▼もっともそんなデモを弾圧するために習近平政権によって導入されたのが、香港国家安全維持法(国安法)である。施行されてから本日で3年となった。高度な自治を認めた「一国二制度」は完全に骨抜きにされた。
▼現在の香港に言論と表現の自由は一切存在しない。映画の世界でも検閲が強化され、「中国化」が急速に進んできた。後継者のアクションスター、ジャッキー・チェンは「親中」の立場を明確にしている。
▼「燃えよドラゴン」の前作「ドラゴン怒りの鉄拳」では、20世紀初頭の上海を支配する日本人が悪役だった。ブルース・リーが健在なら、ドラゴンの怒りの矛先を、香港映画の自由を奪った中国共産党に向けるのではないか