産経抄ファンクラブ第296集at MASS
産経抄ファンクラブ第296集 - 暇つぶし2ch8:文責・名無しさん
23/01/19 08:14:27.95 dQVnKbQH0.net
1月19日 コラム 産経抄

東京・池袋にある超高層ビル「サンシャイン60」が建設されるまでは、東京拘置所があった。東大医学部で精神医学を学んだ加賀乙彦(おとひこ)さんが卒業後、医官として勤めていた。以来、犯罪者と死刑囚との交流は20年以上にわたった。

▼なかでも親しくなったのが、昭和28年に新橋のバーで強盗殺人事件を起こした正田昭である。加賀さんと同年同月生まれの正田は、礼儀正しく、獄中で小説を執筆する知識人だった。敬虔(けいけん)なクリスチャンでもあり、後に加賀さん自身が洗礼を受けるきっかけとなった人物でもある。手紙のやりとりは処刑の直前まで続いた。

▼終戦は当時のエリート集団、名古屋陸軍幼年学校の生徒として迎えた。16歳だった。軍国主義を鼓吹していた大人たちは、一夜にして平和主義者に変身していた。激しい憤りと飢えを紛らわせるために、ひたすら本を読む毎日だった。

▼フランス留学中の出来事を題材にした『フランドルの冬』を出版して、38歳で作家としてデビューする。医師、大学教授と合わせて「三足のワラジ」を履いていた加賀さんが、満を持して取り組んだのが『宣告』だった。正田をモデルに死刑囚が処刑されるまでの数日間を描いた。50万部を超えるベストセラーとなり50歳にして文筆に専念することになる。

▼その後も『錨(いかり)のない船』『湿原』など長編の刊行が相次いだ。自伝的大河小説『永遠の都』『雲の都』のシリーズにいたっては、二・二六事件の前年から平成13年までを時代背景とする。原稿用紙にして9千枚に及ぶ。作品社から長編小説全集を刊行中の加賀さんの訃報が届いた。93歳だった。

▼70歳までの25年間、奥さんといっしょにスケートを続けていた。膨大な仕事をこなせた秘訣(ひけつ)の一つだろう。


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