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3月20日 産経抄
赤城の山も今夜を限り、生まれ故郷の国定の村や縄張りを捨て、国を捨て、かわいい子分のてめえたちとも別れ別れになる首途(かどで)だ。ご存じ国定忠治の名台詞(ぜりふ)だが、ご存じと書いても若い読者にはピンとこないだろう。わが論説委員室では、長老が宴席の締めに必ず実演付きで披露するので知らぬ者はいないが。
▼忠治は幕末、上州を根城とした博徒だったが、関所破りなどで兇状(きょうじょう)持ちとなり、最後には捕らえられて磔(はりつけ)の刑に処せられた。明治になってから飢饉(ききん)に苦しむ農民を救い、幕府に抗(あらが)った義俠(ぎきょう)として講談、浪曲、果ては映画の主人公になるほど偶像化された。
▼国会議員の身から一夜にして兇状持ちの身になり果てたガーシー容疑者も後の世に「令和の忠治」と称(たた)えられるのだろうか。いくらフェイクニュースが蔓延(まんえん)する世になったとはいえ、無理筋である。磔にされる心配はないのだから、とっととお帰りになったらいかがか。
▼ガーシー容疑者は国に戻ればお縄になるが、国を出ればお縄になりかねないのが、ロシアのプーチン大統領である。ウクライナからの子供連れ去りを戦争犯罪と認定した国際刑事裁判所(ICC)は、いい仕事をした。
▼ロシアはむろん、米国と中国もICCに入っていないので、逮捕される可能性はごく小さいが、日本を含む123カ国・地域が加盟している重みは大きい。兇状持ちがトップに居座る国が、世界の首脳とまともなつきあいができるわけがない。
▼いや、一人だけいた。中国の習近平国家主席である。クリミアくらいしか行けなくなった盟友を慮(おもんばか)ってモスクワまで出向き、「戦略的協力の発展」を確認する。なんと黒くおぞましい友情だろう。悪漢(ピカレスク)小説の結末は、必ず正義が勝って終わらねばならぬ。