産経抄ファンクラブ第296集at MASS
産経抄ファンクラブ第296集 - 暇つぶし2ch664:文責・名無しさん
23/03/12 08:01:30.37 WnfvKALL0.net
3月12日 産経抄

小紙をはじめ、きのうの各紙朝刊(東京版)に載った一文に、目が留まった方は多いかもしれない。「今日の新聞は、万一の時のために取っておいてください」。災害時に役立つ新聞紙の使い方を、イラスト入りで紹介した日本財団の広告である

▼丸めて服の中に入れれば防寒の用をなし、巻いて棒状にすれば骨折時の添え木、折れば食器にもなる、と。東日本大震災の発生から間もない頃、春浅い東北地方は真冬並みに冷え込んだ。毛布が行き渡らぬ避難所で、寒烈に耐えた被災者の横顔はいまなお忘れ難い

▼新聞紙1枚の厚さは0・08ミリという。丸められ巻かれ折られ捨てられる。薄紙の悲しいさだめだが、デジタル媒体にない手触りと厚みは、新聞人にとって折れることのない矜持(きょうじ)のありかでもある。『産経抄』を35年にわたり執筆した石井英夫さんの昔話を思い出す

▼初任地の札幌支局時代、地元紙の先輩記者と縄のれんでコップ酒を重ねていると、酔顔の先輩が言った。「なあ、石井君よ、新聞記事はタンガラ(炭殻)みたいなものではないか」。まだ石炭ストーブで暖を取っていた時代という。タンガラは石炭の燃え殻である

▼「夜が明ければタンガラは道に捨てられる運命だが、一夜は人の体を暖めたんだ。わが新聞記事も、一晩は人の心をぬくめたと思えばもって瞑(めい)すべしじゃないか。そういう記事を書くべきじゃないか」。この言葉が、記者としての出発点になったと石井さんはいう

▼30年前の小紙に大先輩がつづった「タンガラの教え」を、折に触れ思い出しては自戒する。丸めて捨てられるさだめとしても、薄紙1枚に拠(よ)って立つ誇りはなくすまい。伝統ある紙面の一隅に恥をしのんで拙い筆を運ぶ身の、詮無い独り言である。


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