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2月28日 コラム 産経抄
職員が小学3年以下の子供や孫を連れて出勤し、自分で面倒を見ながら働く。愛知県豊明(とよあけ)市が来月から試験的に導入する取り組みを昨日の小紙の記事で知った。あらためて「昭和は遠くなりにけり」の思いを強くする。
▼「アグネス論争」の記憶がよみがえったからだ。昭和62(1987)年、人気歌手だったアグネス・チャンさんは長男を出産後、3カ月で仕事に復帰した。テレビ局に赤ちゃんを伴い、楽屋で授乳しおむつを替えた。
▼アグネスさんの「子連れ出勤」が話題になると、激しい非難の声が上がり、海外メディアまで取り上げた。出産した女性がフルタイムで働くことがまだ珍しかった、時代ならではの騒動である。
▼女性の社会進出が進んだ現在では、保育所や託児所を用意する企業が増えつつある。授乳服メーカーのモーハウス(茨城県つくば市)では、20年以上前から母親が赤ちゃんをそばに置いたまま仕事ができる勤務システムを整えてきた。4年前、当時の宮腰光寛少子化担当相がこの会社を視察に訪れ、政府として子連れ出勤を後押しする意向を表明している。
▼もちろん、子連れ出勤だけが子育て支援ではない。大手商社の伊藤忠商事では、大胆な時差出勤を認めて保育園を利用しやすくなっている。やはり昨日、伊藤元重・東大名誉教授が小紙に寄稿するコラムに教えられた。1人の女性が一生の間に産む子供の平均数である合計特殊出生率は、令和3年時点で、1・30にとどまっている。ところが、伊藤忠のビルで働いている女性に限ると、なんと1・97となる。
▼自治体としては初めてとなる豊明市の取り組みが、出生率の引き上げにつながるのか興味深い。出生率が職場の魅力を測る尺度の一つになるかもしれない。