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産経抄 5月29日
父親を殺した少年が警察に追われて、投身自殺を図る。警察は少年を裁判にかけるために、高名な外科医に手術を依頼した。もっとも実際に少年の命を救ったのは、天才外科医、ブラック・ジャックである。
▼少年は裁判で死刑を宣告される。「死刑にするため助けたんじゃない!」。傍聴席にいたブラック・ジャックは叫んだ。医師免許を持っていた手塚治虫さんの傑作漫画、『ブラック・ジャック』のなかの「二度死んだ少年」である。
▼昨年7月、京都アニメーション第1スタジオに放火して、36人の命を奪った青葉真司容疑者は自らも重度のやけどを負った。
治療のためやけどを専門とする病院に移送された、との記事を受けて、インターネット上ではこの作品が話題になっていた。
▼事件から10カ月、皮膚の移植手術など最先端の医療のおかげで、青葉容疑者はある程度の会話ができるまで回復した。ただし、「二度死んだ少年」とは、まったく事情が違うようだ。
▼27日に殺人などの容疑で逮捕された青葉容疑者は、自分の仕出かした事件の重大さをまったく理解していなかった。
逮捕時に警察から犠牲者の数を知らされると、「2人ぐらいと思っていた」と述べたという。「こんなにやさしくされたことはない」。医療スタッフには感謝の言葉を述べている。それでも、放火事件の被害者への謝罪の気持ちは一切伝わってこない。
▼手塚さんは、日本のテレビアニメの創始者でもあった。京アニの創業者の八田陽子さんは、かつて手塚さんのプロダクションに所属していた。
スタッフの多くも、手塚アニメにあこがれてこの道に入った。青葉容疑者は裁判で、夢を絶たれた犠牲者の怒りと無念に、正面から向かい合わなければならない。