続きかけなかったからショートショートでいいat LOBBY
続きかけなかったからショートショートでいい - 暇つぶし2ch1:名無しさん
23/07/17 23:57:10.25 aYvC58Zl.net
流れ星に願い事を
「流れ星に、お願いごとをしましょう。」
暖かな手のぬくもりを感じながら、幼い私は母の言葉を耳にした。遠くに瞬く星々の中を、一人だけ走り抜けるやつがいる。お母さんは、あの星にお願いごとをするんだ。私は、母を真似て慌てん坊の星にお願いごとをした。
「お願いごと、叶うといいなぁ。」
自らの口から漏れたのは、聞き慣れない声だった。今のは、自分の言葉だったのだろうか……
突然、引っ張られるような感覚がして、夢が途切れた。ゆっくりと体を起こすと、知らぬ間に涙が頬を伝う。
柔らかい毛布の肌触りを感じながら、拳で涙を拭った。
枕元の置き時計を確認すると、時刻は夜中の2時45分。もうじき紐三つ時となる頃だ。
そうしているうちに、さっきまで見ていたはずの夢を、私は詳しく思い出せなくなっていた。一体私は、何故泣いているのだろう。
なんだか閉め切った部屋が息苦しく感じて、私はカーテンを開けた。今夜は満月だ。ぼーっと星空を眺めるうちに、頬の涙は乾いていた。
一瞬、流れ星が見えるような気がしたが、気のせいだった。
流れ星…そういえば小さい頃、夜な夜な家のベランダに座り込んでは流れ星を探していた時期があったな。願い事をするためにというよりは、単に好奇心から探していたように思うが。
今の私は、流れ星を見ても好奇心など持つことはないだろう。願い事も、思いつかない。
擦り切れそうな日々に、流れ星に祈りを捧げるような余裕は既に失くしている。残業代も出ないのに残業して、経営不振が続く会社の人柱としてこの短い人生を少しずつ溝に捨て続けている。会社では、誰も彼もに余裕がないので、パワハラや陰口が横行する。ここ最近の職場環境は悪化の一途を辿り、仕事の能率も下がった。必然的に、仕事量も増える。今日だって、疲弊しきった体に鞭打って夜中の0時近くまでサビ残をこなしてきたのだ。それから、お風呂になんか入る余裕もなく、カップ麺を食べて眠りについたのだった。
あまりの疲労に気絶するように寝入るので入眠までそう時間は掛かっていないはずだが、眠れたのは恐らく2時間程度だろうか。今の会社に入社して2年程経つが、未だにこんな生活を続けている。
さて…二度寝は得意ではないが、明日も仕事には行かなければならないし、やるだけやってみることにする。
予想に反し、その日はいつもより早く睡魔がやってきた。静かな微睡みを抱き寄せて、夜に溶け込むように私は微動だにしなくなった。


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