【復活の日】つぶれかけのクリニック【歯科篇】351at HOSP
【復活の日】つぶれかけのクリニック【歯科篇】351 - 暇つぶし2ch174:象牙質の巨頭
19/05/20 20:59:58.79 NXb4JKaR.net
浪速歯科大学・歯内療法科准教授・財前五浪は大いなる野望に燃えていた。
財前の目の前には、目下鋭意建築中の浪速歯科大学新病棟が、大きな槌音を立てながらもその雄姿を現しつつある。
この巨大な新病棟が竣工する来年、歯内療法科の主任教授・吾妻貞三が定年退官するのである。
浪速歯科大学、いや日本の歯科医学会の栄光そのものであるこの新病棟で、吾妻に替わって教授の椅子に座るのは、当然この俺だ
という強い自負が財前にはある。
事実、近年の財前の活躍には目を見張るものがある。
抜髄・感染根幹治療において、どんな難症例でも奇跡のように治癒に導くその臨床手技は「神の手」とも呼ばれ、
名声は近畿地方内を越えて東京まで伝わり、在京マスコミの取材を受けるまでになっていた。
そして財前の堂々たる体躯、頼もしい態度は、多くの患者、教職員、学生を魅了し、
もはや浪速歯科大学一の寵児と言っても過言ではない。
来年の今ごろは俺が教授となり、歯内療法科の陣頭指揮をとっているのだ。
財前はそう信じて疑わない、と言いたいが、懸念材料がないわけではなかった。
それは現主任教授・吾妻貞三の財前に対する態度である。
どちらかと言えば地味で内向的、臨床はそこまで得意ではなくむしろ学究肌で生きてきた吾妻にとって、
己の権勢をも凌ぐような勢いで派手に活躍し、賞賛の的となる財前を快く思わない、
そんな嫉妬に似た感情を近年は隠すことができなくなった。(つづく)


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