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孤独のグルメSS 「CLIMAX 滝山 TOGETHER」
『聖地』と称された、山奥には似つかわしくない巨大な施設。
その地下には武器庫や研究所、『修行部屋』と標記された洗脳室がある。
その一部、巨大な講堂の中では、優に100人を超えるであろう信者たちの熱気が満ちていた。
深夜0時を回ったこの時刻に、ある男が壇上に立ち、その信者たちに向け演説を始める。
「自然の頂点に立つのは、人間である。ではすなわち、自然とはなにか?」
『人間!人間!人間!』
壇上の男の不明瞭な問いに、信者が熱狂的に答える。
「よろしい。では、自然を愛し、人間を愛す…すなわち、なすべきことはなにか?」
『食う!自然を食う!人間を食う!』
「よろしい。自然すなわち人間を食うことこそ、我々がなすべきことである」
『自然食!自然食!自然食!』
完全に常軌を逸している信者たちの声援を受け、壇上の男は諸手を挙げた。
そこに、側近であろう細目の女性が近寄り男へ何かを耳打ちする。
報告を受けた男が怒りの表情を浮かべると、信者に向き返り、また演説を始めた。
「諸君!愚かな機械文明の腐った尖兵が、またしても我々の修行を妨害せんと暗躍している、との報告が入った!」
信者がざわざわと騒ぎ出すが、男は片手をあげそれを制止する。
「だが、諸君らは選ばれた光の戦士である!私は予言しよう、諸君らは必ずや敵を討ち果たすであろう!」
『教祖様!教祖様!教祖様!』
「そして、向かい来る哀れな尖兵に、我ら自然食の崇高さを伝導することであろう!」
盛大な声援を受け、教祖と呼ばれた男は壇上から降りた。
そして教祖が裏へ消えても、信者の声援はいつまでも止まなかった。
教祖「なんだよ、まだポアできてねーの?つーか突入されたってなんだよソレ」
壇上での威風はどこへやら、俗人そのものの様相で教祖が毒づく。
細目の女性は表情を変えず、申し訳ありませんと頭を下げ謝罪した。
教祖「ともかく、そういうの全部お前に任せっから。マジ今すぐさっさと潰して来いよ」
細目「はい、必ずや」
教祖「裏の人間とか邪魔だし、そもそも知らねーし。
つーか世界で一番偉いのは俺なんだよ。その辺わからしてこいや」
その言葉を受けた細目の女性は無表情のまま、仰せのままにと返事をし、教祖に深々と礼をした。