21/02/22 13:34:01.06 LIhbmYCI0.net
五郎「なるほど…相手の読みを逆手に取ったわけか」
眼鏡の男のアジトで、真っ黒になったモニターの前で五郎が呟く。
ゲンが左腕を振り上げた瞬間、滝山は柔道着を投げ、屈んでゲンの左腕をかわしていた。
右腕でフェイントを入れてから左腕で攻撃…では、ただ振り抜くよりも攻撃動作は遅くなる。
左腕が本命の攻撃とわかっていれば、滝山ならかわすことも容易だろう。
かわした後は、ゲンの視界を司っているであろう左腕の目玉に一撃…。
これが、五郎がモニターで見た一部始終だった。
五郎「右腕がそのまま来たらどうするつもりだったのかね、あいつ…ま、死にはしないだろうけど」
そう呟いた後、五郎は眼鏡の男を一瞥する。
五郎「一思いに殺されれば、あんたは楽かもしれないけど…今回はそうもいかない」
五郎は、顔面蒼白となった眼鏡の男に、自らがどうなるのかを説明する。
① まず、逃げられないように手足を関節技で破壊する。
② 証拠が残らないよう、五郎が持ち込んだ強酸で生きたまま骨まで溶かす。
③ 普段なら殺害してからだが、今回は⑤、⑥の理由により悪いが諦めてほしい。
④ その後、浮浪者の火災に見せかけこの廃工場を跡形もなく爆破する。
⑤ その際、捜査次第ではこの設備の跡が見つかり、怪しむやつが出るかもしれない。
⑥ その時のために、少なくとも俺の痕跡は一切残さない。刃物や銃弾を使うなんてもってのほか。
その話を聞き、涙を流しながら、まだ負けていない、ゲンはまだ死んでいないと喚く眼鏡の男に対し
五郎「うん、そうだね。まだ死んでいない。でも、もう続きは確認できないし…。
それに、あんたとの約束を守って、俺に何か得なことってある?」
五郎は自分が持ち込んだ黒い箱から何かの液体を取り出し、そう呟いた。
その後しばらくして、眼鏡の男の断末魔が響く。それは十数分ほど続いた。
ゲン「ガアアアッ!!タキヤマァッ!」
視力を失ったゲンが、やたらめたらに両腕を振り回す。
五郎と滝山の読み通り、ゲンの左腕の目玉はゲンの視界の全てを司っていた。
ゲンは理解していた。数分もすれば、自らに備わる回復能力により、視界が回復することを。
そして、滝山がそれまで待つことは、決してないことを。
来る。すぐに滝山が来る。ゲンの獣の本能が、己にそれを告げていた。
ゲンは滝山に近づかれないように、己の両腕という武器を振り回す。