21/02/21 23:46:27.02 z/mQ/fsc0.net
体育館でストレッチをしていた五郎を違和感が襲った
今はコロナ対策で冬でも窓が全開にされて寒いはず。しかしここは窓が閉まっている
いや、来た時は開いていた。誰かが閉めたのだ。それも全部の窓を
そこに鉄の引き戸がガシャンと閉まる音が響いた。これは妙だ。わざわざ密室が作られた
人の騒ぎ声が室内に拡がっていく。新鮮な空気を求め走る者、咳き込む者、倒れる者もいた
五郎にもその異変が襲い掛かった。放置したごみ袋と中国の川と養豚場を合わせたような刺激臭と腐臭だ
少し嗅いだだけで脳が警報を出した。五郎は息を止め、用具室へ走る
その小窓から上半身をねじり出し、片足ずつ引き抜いて下の地面に落ちた
鼻水と涙が溢れる。必死に走って体育館から離れ、300メートルほど離れたコンビニの駐車場で座り込んだ
体育館の方を見ると、建物の周りで座り込んだり四つん這いで吐いたりうつ伏せに倒れる人々の姿があった
五郎は数分間セルフチェックを行い、視野や脈拍に異常が無いのを確認した
深くゆっくりと呼吸を繰り返す。致死性はほぼ無いだろう。騒ぎを起こす事だけが目的のかなり悪質なガスだ
異常に手の込んだ愉快犯だ。救急車が何台も五郎の前を通り過ぎていく
しかし五郎は犯人に怒るわけでも、助かって安心するわけでもなく、ただ反省していた
本物の毒ガスなら今自分は死んでいた。ガス攻撃の予兆はあったのだ。もっと早く異変に気付かねばならなかったのだ