14/01/14 09:31:27.77 .net
かけ蕎麦二杯を囲んで、楽しそうな笑い声が聞こえてきました。三人の会話は弾んでいるのでしょう。女将は夫と視線を交わすとニコッとしました。店主は、相変わらずの無愛想な顔で頷（うなず）きました。
「あのね、私、二人にお礼が言いたいの。」
「・・・お礼？・・・何のこと？」弟が尋ねました。
「実はね、死んだお父さんが起こした交通事故で八人もの人が怪我したでしょう。・・・保険だけでは足りなくて、お母さんは毎月五万円ずつ返していたの。」
「知ってるよ。」兄が答えました。店主と女将は、身動きもせずにじっと聴いていました。
「支払い期限は来年の三月だけど、今日全部払い終えたの。」
「わー、本当？お母さん。」兄が言いました。
「本当よ。淳は毎日買い物をして、夕ご飯を作ってくれてたわね。お兄ちゃんは朝刊と夕刊の新聞配達をしてくれてた。二人のおかげで、お母さんは何の心配もなく働くことができたのよ。ボーナスが出て、借金を全部返せたの。」
「お母さん、すごい！よかったね。でもこれからも僕が夕ご飯作るよ。」弟は言いました。
「僕も新聞配達続けるよ。淳、頑張ろうな！」
「ありがとう、ありがとね。本当に！」