22/01/21 16:54:44.42 CAP_USER.net
なぜ日本の景気はいつまでも良くならないのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「岸田政権の『新しい資本主義』では日本人は貧乏になるだけだ。格差是正や分配よりもやるべきことがある」という―。
「新しい社会主義」に傾きつつある日本
岸田文雄首相は「新しい資本主義」を旗印に掲げている。政権発足から3カ月が経過したが、私はいまだにこの言葉に違和感を覚える。「新しい社会主義」の間違いではないか、と思うことがある。
この「新しい資本主義」という言葉を聞くたび、私は、JPモルガン勤務時代に部下の外国人たちが「日本は世界最大の社会主義国家だ」と言い残して帰国していったことを思い出す。それが彼らが数年間、日本で働き生活したうえでの実感だったのだ。
同じように「日本は世界で最も成功した社会主義の国」と揶揄やゆされることがある。護送船団方式や強固な官僚制、国民皆保険制度などとともに、高度成長を成し遂げた成功体験までもある。
長期低迷が続く今でも欧米に比べれば日本の格差は小さく、競争より結果平等の横並び意識も強い。これではイノベーションは起こらず、経済の新陳代謝は鈍る一方だ。
この、まるで社会主義国家のような経済運営が現在の日本経済の長期低迷をもたらし、40年間で世界ダントツのビリ成長しかできなかったと私は考えている。
「官製賃上げ」に象徴されるように、日本は真の資本主義国家ではない。
経済成長を実現できない現状のまま、分配だけが進めばどうなるだろか。これは中国が進める「共同富裕」ならぬ、「共同貧困」への道を突っ走ることになる。これは社会主義諸国が「不幸の分配」を行って隘路に入り、崩壊に至った過程と類似している。
私は、この長期低迷を乗り越えるためには「新しい資本主義」の構築ではなく、「社会主義的な経済運営」をやめ「真の資本主義国家」を作るのが重要だと思う。
不幸の分配と結果平等という社会主義の隘路
今の若い人は「社会主義」と聞いてピンと来ないかもしれない。
私が「社会主義ではだめだ」と最初に強く実感したのは「ベルリンの壁」が崩れた1989年末。JPモルガンの資金為替部の幹部会議に出席するために東ベルリンの最高級ホテルに泊まった時だった。
当時、東西ベルリンの境界線にでは、銃器を持ったいかめしい東側兵士がパスポート検査をしていた。彼らはなかなかパスポートを返してくれないので、バスの中で待つわれわれはえらく緊張したのを覚えている。
まだ観光客はほとんどおらず、東ベルリン一のホテルはガラガラだった。レストランでの夕食は夜8時から始まった。前菜、主食、デザートだけのコースだったが、真夜中の0時までかかった。最初は歓談していたわれわれも会話に飽き、あることがきっかけでウエートレスに文句をつけた。が、彼女に無言でにらみ返されただけで終わった。
この時、私は「社会主義とは何ぞや」について身をもって理解した。働いても働かなくても給料は変わらないので誰も熱心に働かない。国は衰退するだけだ、と。
東ベルリンを走る車は「段ボール製」と言われていた。本当かどうかは知らないが、性能が極めて悪かったということだろう。さらに西ドイツ経済からははるかに遅れていた。余談になるが、ある美術館に展示されている彫刻を現地の人たちが素手で触っていくのにはショックを受けた。
格差是正と分配を旗印にする疑問
世界では今、格差が問題となっている。富が富裕層に集中しすぎたからだ。
これは資本主義がうまくいった証拠でもあるし、その副作用でもある。格差是正が政府の仕事になるのはわかる。
しかし、日本の格差は中間層の没落によって生じたものだ(図表1)。「富裕層に富が集中したことにより拡大した」欧米とは異なる。それは専門家のほぼ統一された見解だ。その日本で格差是正を問題にし、さらなる分配を旗印にするのは疑問である。
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