16/08/28 10:23:06.24 CAP_USER.net
副業の存在が統計の誤差を大きくした?
それにしても、内閣府の公表値と日銀の推計値には、なぜこれほどの違いが生じているのだろうか。日銀も明確な理由は不明としてるが、
ある程度の推測は行っている。差分が生じている原因のひとつとして考えられているのが副業の存在である。
内閣府の公表値と日銀による推定値の差分は、1990年代の前半はあまり大きくないものの、90年代の後半から乖離がひどくなっている。
つまり両社の違いは最近発生してきた可能性が高いということになる。
現行のGDP統計では、雇用者報酬を算出するにあたり、事業所における1人あたりの給与と雇用者総数のデータを用いている。
しかし1人あたりいくらの給料を払ったのかという数値は、副業をしている人をどう扱うのかで大きく変わってくる。
場合によっては、副業をしている人の分がうまく取り込めていない可能性があると日銀は指摘している。
一方、税務データには、どこから給料をもらったにせよ、自分の懐に入った金額がすべて反映される。日本は90年代の後半から
不景気が本格化し、国民の働き方も大きく変わってきた。この頃を境に副業が増えた可能性は高く、日銀の話には説得力があるようにも思える。
ただ、もしそうなのだとすると、GDP支出面の数字が増えていないというのは少々引っかかる。どのような経路であれ、収入が増えているのであれば、
よほど余裕のある人でない限り、一定金額を消費に回す可能性が高い。仮に貯蓄されたとしてもマクロ経済的には投資となり、
最終的には設備投資などに反映されているはずだ。
支出面の統計は、企業が生産した製品やサービスのデータや、小売店の販売動向などから得られた数字であり、精度の高いものである。
仮に税務から推定したGDPが正しいのだとすると、その分の消費はどうなってしまったのか、はっきりしないことになる。
今のところどちらの主張が正しいのかは分からないが、今回、日銀がこうした問題提起をしたことには大きな意味がある。
GDPは経済活動の基礎となる統計であり、政府の経済政策はすべてGDPの結果をもとに決定されている。
だが、これほど重要な統計であるGDPがどのようなプロセスで算出されているのか、国民はあまり知らされていない。
GDPの算出プロセスについてオープンな議論が行われれば、最終的には統計の信頼性強化につなってくるはずである。
また最近は全世界的に経済の基本構造が変化している可能性が高く、GDPの考え方そのものについても見直しが必要な時期に来ている。
これからの社会においてどのようなGDPが望ましいのが、幅広い形で議論を進めるのがよいだろう。
ちなみに、米国では税務データを用いた分配面のGDPが算出されており、支出面との乖離は1%程度に収まっている。