16/02/26 12:30:12.85 CAP_USER.net
その結果として需要が減退し、普通の乗用車の100分の1しか市場規模がなくなったスポーツカーは、本来的に2倍の値段をつけなければ
商売にならなくなってしまった。自動車の研究開発費は売上の3~5%が標準的だが、100分の1しか売れなければ
1台あたりの研究開発費は100倍かかることになる。それゆえ日本の多くのスポーツカーはNSXも「フェアレディZ」も「GT-R」(日産)も
一度絶滅した後、2倍の値段で復活せざるをえなかったのだ。
GT-Rは同社のアイコンに仕立てようというゴーン社長のリーダーシップがあってこそ、トヨタの86やレクサスのスーパーカー「LFA」は、
スポーツカー好きの豊田章男社長が主導する体制と、それを利用するマーケティングの方針があってこそ生まれたものだ。
昨年登場の、新型ロードスター
昨年登場した新型マツダ・ロードスターは「1.5リッターエンジンなのに割高だ」という声も聞くけれども、事情を知っている者からすれば、
あの品質であの価格によく収めたな、という印象である。日本のスポーツカーは、欧米でも安定して売れるスケールメリットのある
ロードスターとの価格競争に勝てずにすべて駆逐されてしまったと言っても過言ではない。
一方で、よくよくロードスターのスタイリングのバランスを眺めれば、車格に比べてタイヤ外径が妙に小さいことに気づくだろう。
タイヤの幅や外径が小さければ、直進安定性やグリップレベルが犠牲になる一方で、起伏による車体への入力が小さいため
車体側のコストを抑えて軽く造ることが可能になる。車体を軽くすることにより、エンジンを小さくしても十分な加速力が得られる。
特に日本市場では、アクセラなどから流用できる1.5リッター自然吸気に割り切ったエンジン・ラインナップや、
16インチのみに絞ったタイヤサイズ、前輪駆動の量産車と一緒に流す生産ラインなど、涙ぐましい努力によってロードスターの低価格は実現されているのだ。
さて、この勢いで日本のスポーツカーは一時の低迷を脱し、メーカーのラインナップに定着することができるのだろうか。
各社の覚悟次第でそれは十分可能である。マーケットの動きとしては、これから世帯人口がますます減少していく中で、
一台の自動車がいわゆるピープルムーバーとして多くの人を運ぶ必要性は低下していくというのが理由のひとつ。
個人もしくはふたりの移動手段として、コンパクトでキビキビ走れるスポーツカーはむしろシンプルな選択肢になる。
販売台数が少なく希少価値が高いスポーツカーは、売却するときに残留価値が高いという傾向も一般化してきた。
国際的に人気の高いフェラーリやポルシェ911などは、欧米や中国の人々が海を渡って中古車を買いにくるため日本での
中古車在庫が激減した結果、販売価格が急騰している。日本車では日産のR32型スカイラインGT-R、ホンダ「ビート」、
トヨタの「レビン/トレノ」(AE86型)、ホンダのタイプR各車あたりがプレミア価格というべき水準で取引されている。
もっとも、そのような特別扱いを受けることができるのは、本当に性能に優れた、他にない特徴を備えるモデルに限られる。
「なんとなく若者が買いに来そうな、適当な価格のスポーティカー」には、今後も勝ち目は一切ない。
「失われない価値」を示し続けてきたホンダ
これからかつての2倍の約1800万円で蘇るホンダNSXは、25年間中古車価格を一定の水準に維持し続けてきた。
ついぞ下限が新車価格の3分の1を割ることがなく、最近は上昇基調にあるのだ。それを実現できたのは
、当時の日本車最高の280馬力エンジンをミドシップ・マウントし、軽量かつ錆びないアルミボディを全面採用、
故アイルトン・セナがイメージ作りを買って出たというずば抜けた個性に加えて、メーカー自身が生産終了後も
抜本的なレストレーション(復旧作業)を行う「リフレッシュプラン」を用意し、一旦世に出たNSXの価値は永遠に失われることがない、
という姿勢を示しているためにほかならない。
忘れてはいけないのは、スポーツカー専業メーカーであるポルシェやフェラーリ、ランボルギーニは別格として、
メルセデスもBMWもアウディもマセラティもジャガーもアルファ・ロメオも、ラインナップに純スポーツカーを持っていたのは限られた時期だけだったということだ。
ブランドとしての存在意義をモータースポーツに見出しているこれらのメーカーであっても、商業的に成り立たせるのは
至難の業だったのである。そういう意味で、いまスポーツカーを世に送り出しているメーカーの姿勢は、自動車ファンから喝采を浴びてもまったく違和感はない。
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