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新型肺炎を世界に拡散させた中国の情報隠蔽
.政策提言委員・元公安調査庁金沢公安調査事務所長 藤谷昌敏
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中国政府の発表によれば、新型肺炎の最初の患者は2019年12月8日に38度以上の発熱を訴えて病院にかかり、肺炎の症状が明らかになって、「ウイルス性肺炎」と診断されたとされる。
その日から同様の発熱と症状を見せる患者が続々と27人も出現し、それらは武漢市内にある海鮮市場の関係者もしくは接触者であったことが分かっている。
その時点で「感染は海鮮市場内で起こった」と認識されたにもかかわらず、この海鮮市場が正式に閉鎖されたのはずっと後の12月31日午前のことであった。
その日の午後、武漢市衛生健康委員会は、一連のウイルス性肺炎の大量発生について初めて公開通知を発表したのである。
そして1月11日に至って、武漢市当局は新型コロナウイルスが検出されたことを発表したが、その後も「ヒトからヒトへの感染はない」と繰り返し、武漢市内の病院で治療に当たる医者たちには緘口令を敷いたという。
また、武漢市当局は当初、「3日以降は新たな発症者が出ていない」と説明し、21日には湖北省政府が著名人を招いて春節の祝賀会を開くなど、事態は一見解決したかのようだった。
しかし、その後の中国メディアによれば、市内の病院は患者が殺到して完全にパンク状態に陥り、発熱や疑似症状を訴える人や不安を訴える人たちすべてを診察することができていない状態だとされる。
診察を受けられた患者もその多くが単純に「ウイルス性肺炎」と診断されて自宅待機を余儀なくされており、死亡したとしても新型肺炎による死亡者とは認定されていない。
そのため、感染者数、死亡者数は、中国政府の発表よりも数倍から数十倍の規模となっている可能性がある。
1月31日に至り、やっと武漢市トップの馬国強・市党委員会書記が「もっと早く決定し、今のように厳格な統制措置をとっていたなら、結果は今よりもましであっただろう」とし
「そうしていたら、全国的な影響も今より少なかっただろうし、共産党中央委員会と国務院の憂慮も少なかったであろう」と中国メディアに語った。
患者発生のかなり早い段階で感染源とルート、その重大性を疑うべき十分な情報が集まっていたにもかかわらず、なぜ、武漢市内の海鮮市場が閉鎖されなかったのだろうか。
また武漢市当局は感染者数が急増しているのに、なぜ、感染者は増加していないと虚偽の発表をしたのだろうか。
筆者は、今回の新型肺炎に対する一連の中国政府の対応を見て、2002年11月に広東省や香港を中心に発生して世界的に拡散したSARSの教訓がまったく生かされていないことに驚かされた。
習近平政権による監視社会・管理社会化が強力に推し進められている現状を考えると、現在の中国が民主主義や自由・平等を重んじるような社会の実現には程遠い状況にあることは明らかである。
中国が目指すべき真の強国とは、自国の国民の自由・平等を守り、弾圧や差別をなくし、国際的な責務を全うして世界秩序の維持に貢献し、世界中の国が共感できる文化を持つ国でなければならない。
今回、パンデミックの発生源でありながら、あろうことか政権維持のために情報の隠蔽を優先した習近平政権の責任は極めて重く、中国政府に国際社会のリーダーになる資格はないと断言する。